昨年夏以降再開したこのエントリーですが、先週よりタイトルを”前週トップ10初登場曲の最新動向”に変更した上で、副題を新たに設けています。前週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が極度に強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。
この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミングがロングヒット曲では強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートの順位およびポイントのみで判断することは、現状では難しい状況です。
そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのが、エントリー掲載の理由です。
<2025年7月30日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・HANA「Blue Jeans」
7月23日公開分 1位→7月30日公開分 2位
・パンダドラゴン「マジ☆まじない」
7月23日公開分 3位→7月30日公開分 100位未満
・22/7「あなたでなくちゃ」
7月23日公開分 6位→7月30日公開分 100位未満
・BLACKPINK「JUMP」
7月23日公開分 8位→7月30日公開分 19位
当週のストリーミング表はこちら。



HANA「Blue Jeans」については、木曜付のエントリーにて分析しています。
当週は6曲がトップ10内に初登場を果たし、10位(Mrs. GREEN APPLE「クスシキ」)の獲得ポイントは今年度の10位記録曲で最多となっています。ゆえに上位に留まりにくいというのが当週の特徴ではあるものの、パンダドラゴン「マジ☆まじない」や22/7「あなたでなくちゃ」は当週100未満に大きく後退。フィジカルセールス以外の指標が未加算の状態では社会的ヒットとは呼び難いというのが私見です。

フィジカルリリースの強さに伴う上昇は、当週における&TEAM「Go in Blind (月狼)」(総合7位再登場)も同様です。4月30日公開分にてフィジカルセールス620,541枚を記録し総合2位に登場した同曲は、当週フィジカルセールス75,555枚を記録し同指標4位に急浮上。前週この指標は59位であり、同週の50位における売上枚数が477枚だったことを踏まえれば(50位未満の売上枚数は不明)、当週大幅に売上を伸ばしたことが解ります。
一方で&TEAM「Go in Blind (月狼)」において、当週はフィジカルセールス以外の指標が加点されておらず、もっといえば5月7日公開分を最後に加点が止まっているという状況です。この点から、「Go in Blind (月狼)」におけるフィジカルセールス指標のみの上昇はフィジカルリリース後のフィジカルセールス施策に伴うものと推測され、コアファンにはリーチしてもライト層へ浸透したとは言い難いというのが自分の見方です。
フィジカルリリース後のフィジカルセールス施策はここ最近目立っています。それを踏まえ、下記表を用意しています。
・リニューアル後の動向から考える、"ビルボードジャパンアルバムチャートでのヒットの8段階"(2月24日付)より
フィジカルリリース後のフィジカルセールス施策に伴う上昇はそのほとんどにおいてデジタル、特に接触指標群の上昇を伴わず、ゆえに社会的ヒットに至っているとは考えにくいというのが厳しくも私見です。真に評判を集めることでフィジカルセールスがロングヒットする曲については先日紹介したばかりですが(下記リンク先参照)、それでも週に数万枚単位で売れることはまずありません。
フィジカルセールスばかりが強い曲は、同指標加算2週目に総合チャートで急落することが一般的です。またビルボードジャパンは2010年代後半、週間フィジカルセールスの指標化の際に一定枚数を超える分の売上に減算処理を施すようになり、デジタル人気曲のヒットを可視化しています。チャート分析者としてはこの減算処理適用が、ビルボードジャパンソングチャートが社会的ヒットの鑑に成る大きなきっかけと捉えています。
一方でフィジカルリリース後のフィジカルセールス施策が目立つようになったことに加えて、ビルボードジャパンによるフィジカルセールス指標化時の減算処理があくまで週間単位であり累計売上に適用されているわけではないため、施策に伴い総合チャートに再浮上する曲が少なくなく、さらには累計セールスと指標化後の順位に比較的大きな乖離が発生するようになっています。今年度上半期の動向からも、その点は明らかです。
先ほど掲載した表に、指標化後の順位を加えたものを上記に。ダウンロードおよびストリーミングは指標化後も順位は変わりませんが、他方フィジカルセールスについてはTop Singles Salesチャートと指標化後とで、順位に違いがみられます。これは決して小さくはない問題だと捉えています。
(なお上記順位表での指標化後順位、および下記CHART insightのキャプチャについては、CHART insightの有料会員が確認できます。CHART insight有料会員は、表示週(単週)のみならず表示期間(2週以上)を選択することも可能となります。なおビルボードジャパンでは、有料会員が知り得る情報の公開を可能としています。)
この順位の乖離は、昨年度上半期振り返り時に推測した『フィジカルリリースから数週後のフィジカル販売施策でセールスが急増した曲に対しては係数処理が施されません』『フィジカルリリース後の販売施策を採る曲が、売上枚数の順位以上に指標化時の順位がより高くなっている』ということを証明したといえます。施策がすべての影響源とは言い切れないものの、しかし他指標との乖離からはほぼ断言可能だと捉えています。
(中略)
ビルボードジャパンによる最近のチャートポリシー(集計方法)変更では、突出した所有指標や所有的な動きをなぞる接触指標の是正が多く、またルックアップやTwitter指標の廃止は推し活の過熱を反映させにくくすることを目的としていました。ならば、フィジカル(追加)購入を促す施策に伴う再上昇を見越して、フィジカルセールス指標化時の集計方法を変更することも検討すべきと考えです。
以前記載した内容を再掲し、ビルボードジャパンに対し週間単位ではなく累計セールスを対象に(一定枚数を超えた場合は翌週以降も)減算処理を施す形にチャートポリシー(集計方法)を変更することを、今一度提案します。
この提案に対しアイドルやダンスボーカルグループのコアファンの方々から批判が寄せられるかもしれません。ただ、FRUITS ZIPPERやCUTIE STREET、=LOVE等によるストリーミングヒットの輩出、またHANAのストリーミング等での大ブレイクを踏まえれば、真の社会的ヒットとは何かが解るものと考えます。









