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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

MUSIC AWARDS JAPAN 2026でのBABYMETAL未ノミネートを踏まえた、音楽賞やメディア等への改善提案

エンタメビジネスウォッチャーとして活動する徳力基彦さんが、MUSIC AWARDS JAPAN 2026を踏まえた以下のコラムを本日公開。世界で活躍する日本人歌手としてBABYMETALを挙げた一方、そのBABYMETALがMUSIC AWARDS JAPAN 2026にノミネートされなかったことへの疑問を次のように記しています。

MUSIC AWARDS JAPANの「日本の音楽を世界へ」というコンセプトに対し、既に世界で成功しているBABYMETALがエントリー作品にも入らないというのは、矛盾しているのではないかという声が出てくるのは当然の反応とも言えるでしょう。

しかしながら、MUSIC AWARDS JAPAN 2026におけるルールにおいてはBABYMETALの未ノミネートは、厳しい物言いですが自然ではないかと考えます。というのも、ノミネートの前提となるエントリーは音楽チャートへのランクインや上位進出が前提であり、BABYMETALの作品はそのチャートにて上位に入っていなかったためです。

 

 

上記キャプチャは、MUSIC AWARDS JAPAN 2026におけるBABYMETAL作品および歌手自身のエントリー一覧となります(ENTRY | MUSIC AWARDS JAPANにて歌手名を検索すると確認可能です)。エントリーはノミネートの前段階となるものですが、6曲は最優秀クロスボーダー・コラボレーション楽曲賞、そしてBABYMETAL自身は最優秀ロックバンド/ソロアーティスト賞の対象となります。

Best Cross-Border Collaboration Song Nominees

Best Rock Band/Solo Artist Nominees

(上記キャプチャはNOMINEES | MUSIC AWARDS JAPANより。)

一方でBABYMETALはノミネートを逃しています。そして海外で活躍している歌手ながら、主要6部門のうちのひとつであるBest Global Hit from Japanではエントリーに至っていません。最優秀ロックバンド/ソロアーティスト賞のノミネート一覧をみれば、日本で活躍する歌手が候補入りする傾向が強いことが読み取れます。

そしてBest Global Hit from Japanのエントリー一覧(PDFはこちら)をみると、ビルボードジャパンによるGlobal Japan Songs Excl. Japanが基準といえることが解ります。同賞のエントリー規定には『ピリオド毎にルミネイトが集計するグローバルの視聴データ(ストリーミング、ダウンロード、MV)から日本の楽曲を抽出し、日本での視聴数を除いて作成したグローバルチャート上位100曲を抽出』とあり、言い換えればBABYMETALの楽曲は上位100曲に入っていなかったことが見て取れるのです。

 

画像

(米ビルボードチャート専用公式Xアカウントによるポスト(→こちら)より。)

一方で、BABYMETALのアルバム『METAL FORTH』は昨年8月23日付米ビルボードアルバムチャートで9位に初登場し、キャリア初、さらには日本人のみで構成される女性グループによる作品で過去最高位を更新しています。

ただ、上記エントリーで懸念したように、ロングヒットの要となるSEA(ストリーミングのアルバム換算分)が小さかった『METAL FORTH』は翌週200位未満へ急落しています。そしてビルボードジャパンアルバムチャートにおいては同作品が最高15位、100位以内登場3週、ストリーミングの300位以内登場(加点対象)は2週にとどまっています。

(上記CHART insightは6月10日公開分までを表示。こちらは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています。ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。)

 

 

MUSIC AWARDS JAPAN 2026は多くの部門でビルボードジャパンの各種チャートを基準としており、そしてそれらチャートではストリーミングの強さが上位進出の重要なポイントとなります。ゆえにBABYMETALのノミネートがなかったことは理解できなくはないというのが厳しくも私見です。

また米ビルボードアルバムチャートの上位初登場は立派な記録ではありますが、ストリーミング指標(SEA)が採り入れられている以上はこのSEAの上位安定がロングヒットの鍵となります。BABYMETAL『METAL FORTH』に限らず、たとえばジャンルではロックや(ベテラン歌手の)カントリー、またK-POPにおいても初動が大きいながら2週目に急落する傾向が強く、その点について持続力の重要性を上記エントリーにて説いています。

 

 

無論音楽チャートが全てではなく、海外音楽フェスの招聘基準も様々考えられますが、BABYMETALの音楽賞未ノミネートを訝しむ方にはまず、音楽チャートの成績を客観視することを願います。そしてMUSIC AWARDS JAPANのエントリーシステムでは"音楽チャートにランクインし、上位進出しなければエントリーにも入らない"という状況を考慮すべきです。その点に関し、『エントリーの条件について、音楽チャートだけでは拾いきれない作品や歌手があることを踏まえて再検討することも必要』と指摘しています。

 

MUSIC AWARDS JAPANが今後もエントリーを音楽チャートに沿う形を採るならば、そのチャートに登場することが必要です。Best Global Hit from Japanにおいてはアルバムのリード曲等を海外でヒットさせることが重要となるでしょうが、日本において海外で人気を得た日本人歌手の人気を高めさせんとするならば、その海外での活躍をきちんと、素早く伝え、そして購入やストリーミング聴取を促すことが大事でしょう。

しかしながら、BABYMETAL『METAL FORTH』の米ビルボードアルバムチャートトップ10入りは、日本ではその判明直後に伝わることはほぼなく、歌手側のプレスリリースを待ってメディアが用意した記事によってようやく広く流布したと捉えています(上記エントリー参照)。音楽チャートに長けた人がメディアに少ないとして、今後日本人歌手の海外での活躍が増えると考えるならば取材力や調査力を高めることは必須でしょう。

(なおMUSIC AWARDS JAPANを運営するCEIPA(一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会)にはOTOMOというメディアがあります(→こちら)。"世界とつながり、音楽の未来を灯す。"とMUSIC AWARDS JAPANがコンセプトに掲げるならば、そして既存メディアが音楽チャート情報に強くないならば、OTOMOがその点を一手に引き受け、いち早く情報をメディアや音楽ファンに届けてはどうでしょうか。)

そして音楽面において、BABYMETAL『METAL FORTH』はどのように伝わっているのかがみえてこないという印象です。この点において筆者は以前から、音楽雑誌も大事にしつつその雑誌内容をネットにも発信することで音楽ファンのみならず音楽のライト層と呼べる方々にも届ける必要があると感じています。音楽の質を紹介する媒体、もっといえば音楽評論全体が"閉じている"のではというのが、厳しくも現在の私見です。

 

 

BABYMETALのような歌手の海外活動がMUSIC AWARDS JAPANできちんと評価されるためには音楽賞側がエントリー等の基準を見直すことも大事ながら、歌手側が音楽チャートでヒットを輩出することも重要となります。そして海外動向や音楽面を広く流布できるようにするため、メディアや評論家の体制や意識変化もまた必要です。最後に、広く世間に対し、そのような背景をきちんと知った上で改善策を提案するよう願います。