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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン年間トップアーティストチャートを分析、そこからみえてくるものとは

ビルボードジャパン12月6日に発表した2024年度年間チャートについて、ソングチャートを主体に分析等を実施したエントリーを同日午前に公開しました。ビルボードジャパンによる記事等をまとめたエントリーのリンクも掲載していますので、是非ご活用ください。

年間チャートはソング、アルバム、そしてふたつを合算したトップアーティストチャートのいずれも100位まで公開されています。そこで3日間に渡り、それぞれのチャートを深堀りしていきます。3回目はトップアーティストチャート編です。

 

 

ビルボードジャパンによる2024年度年間トップアーティストチャートの記事は後述しますが、各種チャートをまとめた記事にて構成6指標の順位を記した表が掲載されています。まずはその表を紹介します。

※ フィジカルセールスは黄色、ダウンロードは紫、ストリーミングは青、ラジオは黄緑、動画再生は赤、カラオケは緑で表示され、各指標100位までの順位が掲載。ソングチャートは6指標、そしてアルバムチャートはフィジカルセールスおよびダウンロードの所有2指標が加算対象となります。

 

構成指標で総合順位と最も比例するのはストリーミングであり、同指標上位10組が総合11位までに登場。また動画再生指標上位10組も総合16位までにランクインしています。カラオケは上位10組中9組、ダウンロードは上位10組中8組が総合20位以内に登場している一方、ラジオは上位10組中6組、フィジカルセールスは上位10組中5組にとどまります。

 

際立つのは年間チャートを制したMrs. GREEN APPLEの強さであり、フィジカルセールス以外の5指標を制しています。年間ソングチャートでは100位以内に17曲(うちトップ10には4曲)がランクインし、アルバムチャートでは昨夏リリースの『ANTENNA』が38位に。この強さについては冒頭で紹介したブログエントリーにて分析していますが、何よりストリーミングの強さが際立つ形です。

 

では、年間トップアーティストチャートにおける上位20組のCHART insight(総合および構成指標の週間単位での推移)をみてみましょう。

<2024年度ビルボードジャパン

 年間トップアーティストチャート 上位20組のCHART insight>

 ※ 1位から順に掲載

 ※ 年間最終週(11月27日公開分)までの最大60週分を表示

 ※ 順位、チャートイン回数は11月27日公開分を指します

  (順位は11月27日公開分において20位未満ならばCHART insight未記載、チャートイン回数は同日公開分において100位未満ならば同じく未記載となります)

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートやトップアーティストチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

 

上位20組の大半において、ストリーミングが累計ポイントの7割前後を占めていることが解ります。この指標がソングチャートでの上位進出やロングヒットにつながり、トップアーティストチャートにも大きく関わっていることは自明です。なお各指標は300位までが加算対象となっていますが、仮にストリーミングの範囲が500位までとなれば、わずかでも順位に変動があったものと考えます。

そのストリーミングと順位がリンクしているのが接触指標の動画再生、および所有指標のダウンロードであると、指標構成表から読み取ることができます。あいみょんさんにおける動画再生の強くなさは以前から目立つ欠測(カウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)が動画に付番されていないことが多い模様)が2024年度もみられた可能性が考えられますが、逆にこの指標でのSnow Manの強さは特筆すべきです。

Snow Manは第2四半期4週目からの13週分を除き、動画再生指標20位以内に毎週1曲以上送り込んでいます。年間トップアーティストチャートでは2024年度に一度としてトップ10圏外にならなかったことから、動画再生指標においては他の曲も強かったことが想起可能です。加えてSnow Manのデジタル解禁曲は「One」1曲のみですが、その1曲だけで年間トップアーティストチャートのダウンロード指標で71位を記録しています。

動画再生およびダウンロード指標の好調を踏まえるに、Snow Manがデジタルを全面解禁すればこの2指標と比例する傾向にあるストリーミングの安定も見込めるでしょう。今年も大晦日に生配信を行うSnow Manですが、配信中に話題になったりパフォーマンスが披露された曲があったとして、デジタルほぼ未解禁という状況では配信経由で所有や接触ができず、機会損失といえます。近日中の解禁なるか、注視していきます。

 

トップアーティストチャートの中で総合順位と最も比例しない傾向にあるフィジカルセールス指標については、SEVENTEENが首位を獲得しています。

SEVENTEENは年間アルバムチャートトップ20内に3作品を送り込んでいますが、フィジカルリリース以降のフィジカル向け施策が影響していると捉えています。この施策はダウンロード指標をほぼ刺激しないのですが、実際に年間トップアーティストチャートにおいてSEVENTEENはダウンロード64位であり、フィジカルセールス指標との乖離が目立つ状況です。コアファンの熱量とライト層の乖離を小さくすることが課題でしょう。

 

そのSnow ManおよびSEVENTEENに加えて、アイドルやダンスボーカルグループでトップアーティストチャートトップ20入りを果たしたのがNumber_i、NewJeansおよびLE SSERAFIMですが、Number_iはストリーミングが安定していると言い難い状況です。尤も今回の集計期間中にデビューした歌手であり曲数は考慮する必要がありますが、ライト層にも広く認知される(カラオケでも人気を得る)曲のヒットも必要かもしれません。

 

<2024年度ビルボードジャパン年間トップアーティストチャート

 21~50位にランクインしたアイドル/ダンスボーカルグループのCHART insight>

※ 掲載内容は上記トップ20に準じます

※ ソロ歌手ながらBTSのメンバーであるジョングクを含めています

トップアーティストチャート50位までに入ったアイドルやダンスボーカルグループのCHART insightをみると、K-POP女性歌手共々Da-iCE(年間23位)がストリーミングで強い状況です。「I wonder」のヒットに加え、同曲が過去曲を刺激し、トップアーティストチャート週間20位以内に複数週入っています。先程『ライト層にも広く認知される(カラオケでも人気を得る)曲のヒットも必要』と書きましたが、まさにその好例でしょう。

 

 

狙ってヒット曲を作るのは難しいとして、コンテンツカレンダーの用意、正式リリース前のティザーの公開等短尺動画の活用、テレビパフォーマンス直後のSNSでのデジタル遷移先リンクの掲載等、できることは多々あるはずです。無論曲の内容も重要ですが、リーチを広範囲にすること、そして常時エンゲージメントを高い状態にしていくことが重要と考えます。デジタルの充実は欠かせず、デジタル解禁は必須と断言します。

 

 

最後に。今回年間チャートでトップ10位入りした歌手のうち、YOASOBIやAdoさんは週間単位でみると順位が漸減している状態です。一方で、ヒット曲の登場がフックアップにつながることはCreepy NutsKing Gnuで証明されているといえます。

トップアーティストチャート週間単位でのダウンについては上記エントリーでも紹介しています。Adoさんは、YOASOBIのAyaseさんが手掛けた「Episode X」(映画『劇場版ドクターX FINAL』を先週リリースしており、この曲がヒットに至れば2組のトップアーティストチャートでの存在感が高まるかもしれません。