昨日早朝にビルボードジャパンが発表した上半期チャートについて、ソングチャートを主体に分析等を実施したエントリーを同日掲載しました。ビルボードジャパンによる記事等をまとめた別途エントリーのリンクも掲載していますので、是非ご活用ください。
今回の上半期チャートは昨年度と同様、総合ソングチャートおよびトップアーティストチャートが100位まで公開されています。今回は記事を踏まえ、ソングチャートの表を作成しています。
以下に掲載する表ではビルボードジャパン上半期ソングチャート50位まで、およびフィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミング各指標の基となるチャートの20位までの順位および数値、また上半期26週分におけるソングチャートの順位推移を記しています。この表では指標の基となるチャートで20位以内に入りながらも総合では50位以内に入らなかった曲も含めています。
総合ソングチャートと最も乖離の少ない指標はストリーミングであり、この指標の基となるStreaming Songsチャートと総合チャートとでは7位までの顔ぶれが、順位こそ違えど同じ状況です。そしてこれら作品は総合順位の推移においても上位で安定していることが解ります。とりわけ目立つのがMrs. GREEN APPLE「ライラック」であり、年末年始のメディア露出等を経て、期間内に通算5回の首位を獲得しています。
今年度上半期では19位までが集計期間内での1億回再生を突破。一方でStreaming Songsチャート以上に総合チャートの順位が高い曲は他指標が総合でのフックアップに貢献しているといえます。
際立つのが、米津玄師「Plazma」の動向。Streaming Songsチャートは20位未満ながら、Download Songsチャートにて上半期を制しています。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』で起用されたこの曲は劇場版公開後にテレビアニメが開始されると、総合ソングチャートでも再び上位進出を果たしています。
Download Songsチャートの上位曲には「Plazma」に代表されるアニメ関連曲、またフィジカルの強さが目立つアイドルのデジタルオンリーもしくは先行曲が挙げられます。Number_i「GOD_i」が3位に入ったことは後者の代表例ですが、その「Plazma」と「GOD_i」に挟まれMrs. GREEN APPLE「ライラック」が2位にランクイン。ストリーミングよりもロングヒットしにくいダウンロードでの上位進出は見事といえます。
フィジカルセールス指標の基となるTop Singles Salesチャートは、総合ソングチャートとの順位が大きく乖離します。フィジカルに強い歌手が総合で最上位に進出することやロングヒットすることは難しいというのがビルボードジャパンソングチャートの特徴ですが、他方デジタルに強い歌手がすべてのシングルを総合最上位に送り込めるわけでもありません。フィジカルに強い歌手がデジタルに積極的になることを願うばかりです。
今年度上半期の総合ソングチャート、週間首位曲の一覧を上記に。フィジカルとデジタルを組み合わせることで週間単位でのインパクトが大きくなることについては、BE:FIRST「Spacecraft」(フィジカル/デジタル同週リリース)が証明しています。他方、ロングヒットに重要なのは上位進出以降の安定であり、たとえばアイドルやダンスボーカルグループにおいてはHANA「ROSE」が優れているといえます。
さて、昨年度上半期の総合ソングチャート振り返り時に、このようなことを記しました。
しかし現在のチャートポリシーでは週間単位で一定枚数を上回ったフィジカルセールスに対し係数処理を行う一方、フィジカルリリースから数週後のフィジカル販売施策でセールスが急増した曲に対しては係数処理が施されません。この施策で上昇した曲は他指標が伴わず、ライト層やグレーゾーンとの乖離を生んでいる(コアファンの追加購入を施策の主体としている)以上、真の社会的ヒットとは呼び難いと考えます。
ただ、このようなフィジカルリリース後の販売施策を採る曲が、売上枚数の順位以上に指標化時の順位がより高くなっているのではということを、記事の「GOAT」に関する表記から感じています。この仮説が正しいならば、一定の売上枚数を超えた曲についてはその週以降、一定枚数を超えなくとも毎週の売上に係数処理を施すことが必要ではないかと考え、ビルボードジャパンにチャートポリシー(集計方法)の議論を希望します。
今回は、上記に関する今年度の状況を調査しました。
フィジカルセールス指標はTop Singles Salesチャート、ダウンロード指標はDownload Songsチャート、そしてストリーミング指標はStreaming Songsチャートが指標化時の基となります。今年度下半期からはリカレントルールが導入されることでストリーミング指標はStreaming Songsチャートと大きく異なる形となりますが、しかしフィジカルセールス指標においては既にTop Singles Salesチャートとの乖離が発生している状況です。
先ほど掲載した表に、指標化後の順位を加えたものを上記に。ダウンロードおよびストリーミングは指標化後も順位は変わりませんが、他方フィジカルセールスについてはTop Singles Salesチャートと指標化後とで、順位に違いがみられます。これは決して小さくはない問題だと捉えています。
(なお上記順位表での指標化後順位、および下記CHART insightのキャプチャについては、CHART insightの有料会員が確認できます。CHART insight有料会員は、表示週(単週)のみならず表示期間(2週以上)を選択することも可能となります。なおビルボードジャパンでは、有料会員が知り得る情報の公開を可能としています。)
この順位の乖離は、昨年度上半期振り返り時に推測した『フィジカルリリースから数週後のフィジカル販売施策でセールスが急増した曲に対しては係数処理が施されません』『フィジカルリリース後の販売施策を採る曲が、売上枚数の順位以上に指標化時の順位がより高くなっている』ということを証明したといえます。施策がすべての影響源とは言い切れないものの、しかし他指標との乖離からはほぼ断言可能だと捉えています。
累計売上枚数以上に指標化後の順位が高かったAKB48「まさかのConfession」(上半期Top Singles Salesチャート5位/フィジカルセールス指標3位)およびNMB48「チューストライク」(同15位/12位)は、共に下半期初週となる6月4日公開分で総合100位以内に復帰。特に「チューストライク」のフィジカルセールスが急増するも他指標との乖離が大きい点から、フィジカルを買うコアファン向け施策の影響と考えられます。
この動きはAKBグループにとどまりません。たとえばTop Singles Salesチャート、フィジカルセールス指標の双方で首位を獲得したSEVENTEEN「消費期限」についても同様です。
ビルボードジャパンによる最近のチャートポリシー(集計方法)変更では、突出した所有指標や所有的な動きをなぞる接触指標の是正が多く、またルックアップやTwitter指標の廃止は推し活の過熱を反映させにくくすることを目的としていました。ならば、フィジカル(追加)購入を促す施策に伴う再上昇を見越して、フィジカルセールス指標化時の集計方法を変更することも検討すべきと考えです。
ビルボードジャパンによる上半期チャートの記事からは様々な気付きを得ることができます。記事から今のヒットの形を知り、そして推す歌手がいればその方の作品がより高い位置に到達するにはどうすべきかをコアファン同士で議論するのが好いでしょう。昨日および本日付のブログエントリーが参考になるならば幸いです。
最後に、上半期ソングチャートにおける上位20曲のCHART insight(総合および構成指標の週間単位での推移)を貼付します。なお、こちらではCHART insight無料会員が確認可能なデータを掲載しています。
<2025年度上半期ビルボードジャパンソングチャート 上位20曲のCHART insight>
※ 1位から順に掲載。
※ 上半期最終週(5月28日公開分)までの最大30週分を表示。
※ 順位、チャートイン回数は5月28日公開分を指します(20位未満の際は未記載)。
※ 総合順位は黒、フィジカルセールスは黄色、ダウンロードは紫、ストリーミングは青、ラジオは黄緑、動画再生は赤、カラオケは緑で表示。