3月まで記載していたこちらのエントリーを、内容を少しリニューアルした上で先月復活しています。先週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする曲、年間チャートで上位に進出する曲と位置づけています。週間単位で上位に入ることも素晴らしいですが、他方で所有指標が強い曲は加算2週目、また所有指標的な接触指標をなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が急落し、総合でも大きくダウンすることが少なくありません。
急落傾向はここ最近、特に目立っています。ソングチャートのトップ10は週平均5曲程が毎週入れ替わり、ロングヒットする(その可能性を持ち合わせている)かそうでないかが極端に分かれる状況です。ロングヒット曲は主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標が強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しいといえます。
ゆえにこのブログエントリーでは上記提案をビルボードジャパンに対して行っていますが、すぐに叶うことはないかもしれません。ならば、あくまで自分なりであると前置きしつつ、チャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー復活の理由です。
<2024年7月31日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
最新週における指標毎のポイント構成
(CHART insight改定以降は累計ポイントにおける構成比に変更した、とビルボードジャパンは説明しています。)
・AKB48「恋 詰んじゃった」
7月24日公開分 3位→7月31日公開分 23位
・OCTPATH「FUN」
7月24日公開分 5位→7月31日公開分 100位未満(300位圏内)
・ONE OK ROCK「Delusion:All」
7月24日公開分 7位→7月31日公開分 19位
・こっちのけんと「はいよろこんで」
7月24日公開分 10位→7月31日公開分 8位
当週におけるストリーミング等動向を記した表はこちら。
今回紹介した4曲のうち唯一トップ10内をキープしたこっちのけんと「はいよろこんで」については、本日公開の別エントリーにて紹介しています。次週は英語詞版リリースに伴いさらにポイントが上昇する可能性があります。
今回注目したのは、AKB48「恋 詰んじゃった」。AKB48は昨年4月リリースのシングル「どうしても君が好きだ」にてユニバーサルミュージックに移籍していますが、この移籍以降の動きは注目に値します。
AKB48は「どうしても君が好きだ」がフィジカルセールス指標初加算週に3位を記録した翌週に100位未満(300位圏内)にダウン、次作「アイドルなんかじゃなかったら」も4位→100位未満(300位圏内)と急落しているのですが、その後「カラコンウインク」が2→23位(ポイント前週比38.6%)、そして今回の「恋 詰んじゃった」が3→23位(同42.1%)と推移しており、2024年リリース作品は好調に推移しているように映ります。
一方で、先述したCHART insightを踏まえ4作品のフィジカルセールスの初週および2週目の推移をみると、「どうしても君が好きだ」は473,635→8,200枚、「アイドルなんかじゃなかったら」は541,037→6,870枚、「カラコンウインク」は463,564→35,344枚、「恋 詰んじゃった」は411,100→37,400枚。「恋 詰んじゃった」は初週セールスが最も低い一方で2週目の売上が最も高く、それが総合チャートにも波及した形です。
ユニバーサルミュージック移籍以降のAKB48のシングルにおけるフィジカルセールス初加算週とその翌週の動向をみると、フィジカルセールス以外はほぼ加点されていないことが解ります。ラジオやダウンロードが300位以内に入ることもある一方、ロングヒットそして社会的ヒットの要といえるストリーミングおよび動画再生が未加算という状態は共通しています。
先程はAKB48のシングルについて『2024年リリース作品は好調に推移しているように映ります』と述べましたが、それはフィジカルセールスが2週目も好調ゆえということであり、他指標の動向を踏まえれば社会的ヒットに成るとは言い難いというのが私見です。とはいえAKB48はフィジカルリリース後も施策を続けることで総合でも上位に返り咲くことが、これもユニバーサルミュージック移籍以降目立つ印象です。
上記エントリー群ではフィジカルシングルにおけるリリース以降の施策およびそれに伴う上昇等を紹介した上で、ビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の変更を議論することを提案しています。そして同時に、今もフィジカルセールスがチャートの要と考えコアファン向けの施策を徹底する歌手側や音楽業界の上層にいらっしゃる方々に対しても、考え方をデジタル主体もしくは共存へとシフトすることを願います。