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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンによる2025年度上半期チャートが本日発表…7つの注目ポイントとは

ビルボードジャパンは本日午前4時、2025年度上半期各種チャートを公開しました。集計期間は2023年12月4日公開分~2024年5月28日公開分(2024年11月25日~2025年5月25日)となります。

ビルボードジャパンによる各記事のリンク、および詳細なデータについては別エントリーにて掲載しています。またこのブログエントリーでも一部記事についてポストを貼付しています。

 

今回のエントリーにて貼付しているソングチャート、アルバムチャートおよび双方を合算したトップアーティストチャートのCHART insightはいずれも2024年5月28日公開分(上半期最終週)までの最大30週分となり、CHART insightにおける順位は同日公開分のそれを指します(ただし20位未満の場合は順位が表示されません)。

CHART insightにおける色の内訳は総合が黒、ソング/アルバムチャート共通指標ではフィジカルリリースが黄色、ダウンロードが紫で、ソングチャートのみの指標ではストリーミングが青、ラジオが黄緑、動画再生が赤、カラオケが緑で表示されます。

 

それでは、上半期チャートを振り返ります。

 

ビルボードジャパンによる2025年度上半期チャート 注目すべき項目>

 

Mrs. GREEN APPLE、ソング/アルバム/トップアーティストチャート全制覇

ビルボードジャパンによるソングチャート、アルバムチャート、そしてこれらふたつのチャートを合算したトップアーティストチャートのすべてでMrs. GREEN APPLEが首位を獲得。主要チャート全制覇は史上初となります。

とりわけトップアーティストチャートにおいては、フィジカルセールスを除く5指標すべてを制しているという状況です。

(※ソングチャート/アルバムチャート等まとめ記事より抜粋。)

Mrs. GREEN APPLEによるトップアーティストチャートを週間単位でみると、首位獲得を逃したのがSnow Man『THE BEST 2020 - 2025』初登場時における1週のみにとどまっています。

Mrs. GREEN APPLEの2024年度以降におけるトップアーティストチャート、総合および構成6指標の推移を示した表をみると、ストリーミングは2023年12月27日公開分以降常時首位を記録しているのみならず、動画再生は2024年11月20日公開分、カラオケは2025年1月8日公開分以降首位を続け、ダウンロードは今年度4位以上を常時キープ。接触のみならず所有、そしてこのブログでは活用と形容する指標でも強さを発揮しています。

ビルボードジャパンにおけるMrs. GREEN APPLEの強さの理由については幾度となく分析していますが、作品の質の高さ、新曲の相次ぐリリース、リリース時のコンテンツカレンダー用意等施策の徹底、記録達成時の発信の徹底、そして音楽番組以外のメディア露出の多さにより、【お茶の間の歌手に成った】ことが大きいと捉えています。

 

Mrs. GREEN APPLEライラック」、昨年末以降のブーストによる特大ヒット化

ソングチャートは「ライラック」を皮切りにMrs. GREEN APPLEがトップ10内、もっといえば6位までに5曲を送り込んでいます。

ライラック」は2位のロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」(142,492)の1.5倍近くにあたる213,325ポイントを獲得し、いわば圧勝状態に。指標構成はストリーミング、動画およびカラオケで首位、ダウンロード2位そしてラジオ23位となっており、接触のみならず所有そして活用のいずれも強いことが解ります。この「ライラック」においては昨年末以降いわばブーストがかかっていることも、圧勝の要因です。

昨年末以降の上昇要因は上記エントリーにて紹介。そしてそれに伴うブーストについては、下記エントリーで提示したグラフから読み取れます。

ストリーミング5億回突破までのスピードが速かった4曲のソングチャートにおける累計ポイント推移をみると、Mrs. GREEN APPLEライラック」が他の3曲ではみられなかった”逆くの字”を辿っていることが解ります。これは昨年末以降のブーストに伴う上昇であり、この状況から「ライラック」がヒットの第2段階に入ったと捉えていいでしょう。

(上記グラフにおいて、Mrs. GREEN APPLEライラック」は2025年上半期最終週である5月28日公開分までの59週分を表示しています。)

1つ目の項目でMrs. GREEN APPLEの強さの背景を紹介しましたが、「ライラック」の大ヒットも旧譜から新曲に至るまで影響を与えたと考えていいでしょう。そのことが特にストリーミングにおける人気に反映されていることは、Streaming Songsチャートでの記録そのもののみならず、ビルボードジャパンの記事から感じられる熱量の高さからも明らかです。

下記の当チャートトップ20を見て、「Mrs. GREEN APPLE」の文字のあまりの多さに驚きと納得を感じざるを得ないだろう。それほどまでに、2025年上半期はまさにミセスの“無双”状態であった。

首位を獲得した「ライラック」はTVアニメ『忘却バッテリー』のオープニング・テーマ、またMrs. GREEN APPLEとしては約5年ぶりのアニメタイアップ作として、アニメ初回放送後の4月12日にデジタル・リリース。金曜日リリースであった影響もあり、集計初週の4月17日公開チャートでは15位であったが、そこから翌週4月24日公開チャートで4位とトップ5圏内に浮上。5月8日公開チャートで3位へ上昇してからは、最新の6月4日公開チャートに至るまで、じつに57週にわたってトップ3圏内を守り続けているというモンスター曲だ。また、当チャートにおける連続首位獲得数は18週で歴代6位(DA PUMP「U.S.A.」と同率)、通算首位獲得数は32週で歴代2位の記録を打ち立てている。

連覇数という点では、昨年の当チャート上半期/年間を総なめしたCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」を思い出す人もいるだろう。この曲と「ライラック」の異なる点は、Mrs. GREEN APPLEが“アーティスト単位”として、新譜/旧譜の区別なく継続的にストリーミング再生され続けているという点にある。実際、今回の上半期チャートでミセスはトップ20に10曲、トップ100では22曲を送り込んでいるが、そのうち「ライラック」「ビターバカンス」「ダーリン」など2024年~2025年リリースの新曲が上位を占める一方、「青と夏」や「点描の唄」「僕のこと」など、数年前の代表曲も依然として高い再生数を保ち続けている。この「新旧問わず楽曲が同程度聴かれ続けている」という現象は、back numberやOfficial髭男dism、YOASOBIといった特にストリーミングに強いアーティストにたびたびみられる傾向ではある。ただ、特に2025年上半期のMrs. GREEN APPLEが特異なのは、「新曲が“毎度”チャート上位に登場している」という点にある。

とりわけ、2024年後半からのMrs. GREEN APPLEは確変状態といえるほどの快進撃をみせていた。「familie」は「ライラック」が到達するのにかかった6週の半分、チャートインから3週で当チャート2位を記録。次作「ビターバカンス」はさらに短い2週で2位に到達し勢いの兆しが見えていたが、2025年に入ってからリリースされた「ダーリン」「クスシキ」「天国」の3曲は、いずれも登場2週目で当チャート首位を獲得している。また、2025年1月8日公開分からの20週にわたっては、当チャートの首位楽曲がすべてMrs. GREEN APPLEの楽曲となっており、計4曲(「ライラック」「ダーリン」「クスシキ」「天国」)が入れ替わり立ち替わりでチャート1位を維持するという状態が続いている。これは単にファン層の厚さだけでは達成しえないもので、シンプルに「広く愛される楽曲を作り続ける」という、ごく限られたアーティストしか実現できない現象を彼らが達成したのだといえるだろう。

 

③ アルバムチャートの集計方法変更が大きく影響

ビルボードジャパンは昨年最終週、アルバムチャートにストリーミング指標を含めるチャートポリシー変更を実施。それにより週間チャート、そして上半期チャートの動向は大きく変わりました。

チャートポリシー変更前後におけるアルバムチャートトップ10は以下の通り。新設されたストリーミング指標は青で表示されます。

・2024年12月18日公開分 ビルボードジャパンアルバムチャート

・2024年12月25日公開分 ビルボードジャパンアルバムチャート

ビルボードジャパンアルバムチャートは、ルックアップ指標(パソコン等にCDを投入した際インターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を基とし、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やCDレンタルの数を推測可能とするもの)が廃止されて以降、所有2指標のみで構成。ただしダウンロードは徐々に減少し、フィジカルセールスの強さが大きく影響していました。それが大きく様変わりしています。

2024年12月26日よりGfK Japanが提供する国内主要ストリーミングサービス(Amazon MusicApple Music、Spotify他)の再生回数が合算されている。

(中略)

トップ100では、2025年発売のタイトルが18作品、2024年発売のタイトルが27作品、2023年以前に発売されたタイトルが55作品という内訳に。前述した通り、ストリーミング指標が加わったことで、アルバムとして評価されている作品がより鮮明に分かるようになった。またチャートの上位は、ストリーミング順位とほぼ相対的にもなっている。

チャートポリシー変更に伴い、旧譜でも聴かれ続ける作品が多いこと、一方でストリーミングで好調をキープする新譜が多くないだろうこともみえてきました。フィジカルセールスが一定水準に達すれば総合チャートを初登場で制する可能性は高いものの、接触指標が強くなければ翌週急落する形へと変化しています。そしてこのチャートで上半期を制したのが、2023年7月にリリースされたMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』です。

後述しますが、ビルボードジャパンは下半期以降、ソングチャートおよびアルバムチャートのストリーミング指標に対し一定週数以上ランクインした作品に対し減算処理を行うリカレントルールを採用しています。ゆえに、特に『ANTENNA』においては年間首位獲得が難しくなったといえるでしょう。しかしながら下半期はベストアルバム『10』のリリースが控えていることもあり、Mrs. GREEN APPLEの動向はやはり注目といえます。

 

④ STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品のアルバムチャート上位進出

上半期アルバムチャートでは、STARTO ENTERTAINMENT所属のSnow Man『THE BEST 2020 - 2025』が2位、timelesz『Hello! We're timelesz』が8位にランクインしています。これら作品において、デジタル解禁の影響が大きく反映されています。

(timelesz『Hello! We're timelesz』は収録曲のダイジェスト動画がないため、CHART insightのみ掲載しています。)

これまではデジタルに明るくなかったSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手ですが、timeleszはオーディションに伴う追加メンバー決定後に新曲共々過去曲のコンピレーションアルバムをデジタルリリース、またSnow Manにおいては初週ミリオンセールスを突破したベストアルバムを後日デジタル解禁したことでストリーミング指標が首位をキープし、上半期アルバムチャートのトップ10入りに影響した形です。

一方で気になるのは、ここで挙げた2組はすべての曲をデジタル解禁しているわけではなく、Snow Manは『THE BEST 2020 - 2025』のみ(先行配信した「One」も収録)、またtimeleszはデジタルコンピレーションアルバムおよび同時リリースしたシングル「Rock this Party」のみ。ゆえにデジタルで聴かれた場合はすべて、そのアルバムにストリーミングが集約されるという仕組もアルバムチャートの上位進出に影響したといえます。

Snow Manやtimeleszはアルバムチャートで成功を収めていますが、今後デジタルアーカイブを拡充するかが気になるところです。

 

⑤ timelesz、HANA…話題のオーディションがアーティストパワーを増大

ひとつ前の項目で記したtimeleszについては、デジタル解禁範囲が狭いとしてもその解禁自体が行われていなければ、(チャート上で)ここまでのアーティストパワー増大にはつながらなかったのではないでしょうか。

アイドルやダンスボーカルグループの曲は基本的にフィジカルリリースに伴い上位進出しながら、翌週以降はデジタルがヒットせず総合で急落する傾向が未だ多いのが現状です。この点については以前、このジャンルにおけるヒットの8段階表にて採り上げています。

その中にあって、timelesz「Rock this Party」はデジタルオンリーのリリースながら、このジャンルの作品としては12週連続、通算12週という長期エントリーを果たし、上半期チャートでは54位に登場しています。そもそも新メンバー決定(2月5日)からリリース(2月28日)までの日数を踏まえれば、早急なリリースはデジタルだからこそ可能だったといえます。

そしてオーディション発という点で共通しているのが、BMSGとちゃんみなさんによるオーディションから登場したHANA。デジタル先行でリリースし首位初登場、そしてフィジカルセールス指標初加算時に二度目の総合制覇を果たし、上半期チャートでは8週連続でトップ10内をキープした「ROSE」は上半期総合28位に。またプレデビュー曲の「Drop」は同46位にランクインしています。

オーディションの話題は、課題曲等に用いられたちゃんみなさんの作品群を押し上げ、ちゃんみなさん自身のアーティストパワーも増大させています(総合トップアーティストチャートでは10位にランクイン)。そしてHANAのメンバーのみならず最終選考まで残った方と共に披露したTHE FIRST TAKE版「SAD SONG」(および音源のデジタルリリース)にて、さらなる上昇も見込まれます。HANA、ちゃんみなさんの今後の動向に注目です。

 

⑥ アイドルやダンスボーカルグループにおける勢力図の変化

6月3日にZ総研が発表した『Z世代が選ぶ2025年上半期トレンドランキング』から、これまでの項目で採り上げたMrs. GREEN APPLE、HANAおよびtimeleszの若年層人気が読み取れます。

(上記画像はZ総研「Z世代が選ぶ2025年上半期トレンドランキング」発表、“流行った曲”1位はM!LK「イイじゃん」 | Musicman(6月3日付)より。以下同様。)

ひとつ前の項目で採り上げたHANAは流行ったアーティスト部門で2位となり、ちゃんみなさん共々トップ10にランクイン。そしてこのアンケートで首位を獲得したMrs. GREEN APPLEの得票数はHANAの4倍以上であり、如何に人気かがよく解ります。加えてtimeleszは流行ったアイドル部門で4位となり、Snow Manを上回ったことについて興味深く感じています。

その流行ったアイドル部門のトップ3をKAWAII LAB.所属歌手が独占。FRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」(上半期39位)、CUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」(上半期8位)そしてCANDY TUNE「倍倍FIGHT!」(上半期100位未満)はショート動画を機に、ストリーミングにも勢いが波及しロングヒット。ヒットの8段階表にてKAWAII LAB.所属歌手の強さを紹介していますが、アンケートからも人気が証明されています。

加えて最近では、=LOVE「とくべチュ、して」がストリーミングで火が付き、ロングヒットの可能性を高めています。それらの曲に比べると、流行った曲ランキングで首位に立ったM!LK「イイじゃん」は総合ソングチャートに波及しているとは言い難いのですが、しかしながら動画でのヒットを機にストリーミング人気に波及したアイドルソングが、若年層における流行曲の過半数を占めているのは興味深いところです。

ちなみに、M!LK「イイじゃん」は、モデルプレスによる上半期ベストエンタメアワードのベスト楽曲部門でトップに立っています(モデルプレス読者が選ぶ「ベストエンタメアワード2025上半期」トップ3発表 timelesz・M!LK「イイじゃん」などランクイン【全13部門】 - モデルプレス(6月5日付)参照。ベスト配信作品部門にはtimeleszやHANAを排出したオーディション番組がランクインし、彼らの人気の背景もみえてきます。

 

アイドルやダンスボーカルグループの曲がストリーミングでヒットすることは多くはないことから、勢力図の変化を感じずにはいられないというのが私見です。一方でフィジカルセールスに長けた坂道グループでは、特に櫻坂46においてLINE MUSIC再生キャンペーンの影響がストリーミングに波及するも、ロングヒットしているとは言い難い状況です。

男性アイドルやダンスボーカルグループではDa-iCE「I wonder」の強さが目立ちますが(上半期総合23位)、Number_iやBE:FIRSTはファンダムを主体に支持を集め週間チャート最上位の常連となりつつあります(その中にあってBE:FIRST「夢中」の動向はこれまでと異なります)。STARTO ENTERTAINMENT所属歌手がここにきてデジタルに明るくなりつつあり、音楽チャートや若年層支持等の勢力図は今後も変わっていく予感がします。

 

⑦ ソングチャートにおけるアニメタイアップの強さ

ストリーミングが獲得ポイントの過半数を占めるロングヒット曲では、そのストリーミングが急落しにくい性質であることからリリースからしばらく経過しても上位に残り、リリースから時間が経過しても長期間のチャートでは上位にとどまる傾向です。

その状況下、昨秋以降リリース曲で上半期チャート上位に進出したのはCreepy Nuts「オトノケ」(7位 『ダンダダン』オープニング)、サカナクション「怪獣」(12位 『チ。 ―地球の運動について―』オープニング)、米津玄師「Plazma」(17位 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』劇場版挿入歌等)、同「BOW AND ARROW」(22位 『メダリスト』オープニング)、そしてMrs. GREEN APPLE「クスシキ」(24位 『薬屋のひとりごと』オープニング)等、アニメ関連曲が目立ちます。これはダウンロードの影響力も大きいといえます。

一方、これらの作品の多くで接触を中心とした施策が行われているのを興味深く感じています。たとえばサカナクション「怪獣」では山口一郎さんによるYouTubeや山口さん等メンバーが参加するStationheadの配信がSpotifyでのロケットスタートにつながり、米津玄師「BOW AND ARROW」ではミュージックビデオで羽生結弦さんを起用したことが動画再生指標の上昇を招く等、施策がチャート面に反映された形です。

アニメソング以外のヒットも多いながら、やはりこのカテゴリーの作品はヒットの可能性が高いのかもしれません。そしてその勢いをさらに増幅させるために、歌手側の施策も欠かせないのではないでしょうか。

 

おわりに

さて、ビルボードジャパンは下半期初週初週よりソングチャートおよびアルバムチャートにリカレントルールを導入します。一定週数以上ランクインした作品についてストリーミングの指標化の際に減算処理を行うというもので、初適用された6月4日公開分チャートではその影響が大きく反映されています。

ソングチャートでは上半期では圧倒的な人気となったMrs. GREEN APPLEライラック」ですが、下半期初週においてはリカレントルール適用に伴い初登場時以来となるトップ10落ち且つ最低位を記録しています。このことは下記表やポイント推移グラフからも読み取ることができます。

(6月4日公開分ソングチャートにおいて、「ライラック」は登場60週目となります。)

ライラック」を年間チャートで上回るのはYOASOBI「アイドル」やCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」クラスの特大ヒットがこの数週以内に登場しない限りは至難の業といえますが、「ライラック」を追いかける曲が出てくるか、そして「ライラック」自体がどこまで勢いをキープしていくかも気になります。Mrs. GREEN APPLEは来月ベストアルバム『10』のリリースも控えており、下半期のアルバムチャートにも注目です。

 

アイドルやダンスボーカルグループの勢力図においては、デジタルに明るくなって来きたSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手の動向が気になります。しかしながら現時点で未だWEST.やAぇ! groupはデジタル解禁に至らず、また先述したSnow Manやtimeleszをはじめ、先月デジタル解禁したSixTONESも、デジタルアーカイブが完全ではありません。

それらの解禁なるかに注目すると共に、デジタル解禁後のフィジカルリリース作品におけるデジタル取扱について注視する必要があります。timeleszによる8人体制初のアルバム『FAM』は、現時点でデジタルリリースの予定がありません(前週のトップ10初登場曲が真のヒット曲に成るか、CHART insightから読む (2025年4月9日公開分)(4月12日付)参照)。デジタル解禁もアーティストパワー上昇に貢献したと考えれば、フィジカル優先の姿勢が歌手、そしてSTARTO ENTERTAINMENT全体に今後どう影響するか、注目です。

 

さて、アイドルやダンスボーカルグループによるリリース曲で今年上半期に最も浸透したと思しきM!LK「イイじゃん」は、ソングチャートのエントリーが4週、また最高位45位という状況であり、チャート面ではヒットしたと言い難い状況です。

「イイじゃん」については上記エントリーで紹介していますが、ストリーミングの強さはLINE MUSIC再生キャンペーンに因るところが大きく、企画終了以降ストリーミング指標が100位以内に再浮上することはありませんでした。

M!LK「イイじゃん」、そして先述したKAWAII LAB.所属歌手のチャート動向から、ショート動画の人気をストリーミングに波及させることの重要性が理解できます。その点にて、望月優夢さんのnoteで紹介されたKAWAII LAB.所属歌手のアプローチは、他の芸能事務所にとっても参考になるはずです。この数ヶ月の施策の徹底、そしてヒット規模の拡大が、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場に大きく関わってくると考えます。

 

最後に。洋楽においてはロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」が上半期ソングチャート2位にランクイン。同曲はBLACKPINKのメンバーによる曲ながら、K-POPを含まないビルボードジャパンの洋楽ソングチャート(Hot Overseas)に登場していることから、ビルボードジャパンでは「APT.」が(K-POPではなく)洋楽という括りとなっています。そしてこの洋楽ジャンルでの大ヒット曲輩出は久々となります。

他方、上半期の総合ソングチャート100位以内における洋楽のランクインは「APT.」のみ。またK-POPにおいては上半期50位以内に入ったのがaespa「Whiplash」(27位)およびBABYMONSTER「DRIP」(38位)の2曲となり、昨年度上半期より1曲少ない状況です。昨年度上半期における最上位がLE SSERAFIM「Perfect Night」の19位だったことを踏まえれば、K-POPのヒット規模が減少したと捉えていいかもしれません。

K-POPそして洋楽全体から今年新たなヒットが登場するか、注目です。