昨年夏以降再開したこのエントリー、今年に入ってからタイトルを一部変更しています。前週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が極度に強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。
この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標がロングヒット曲では強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートの順位およびポイントのみで判断することは、現状では難しい状況です。
そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー再開の理由です。
<2025年4月30日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・ME:I「MUSE」
4月23日公開分 2位→4月30日公開分 39位
・King Gnu「TWILIGHT!!!」
4月23日公開分 7位→4月30日公開分 4位
当週におけるストリーミング表はこちら。
King Gnu「TWILIGHT!!!」は集計期間3日分にて前週7位に初登場し、当週は初の1週間フル加算に伴いポイント前週比162.6%、総合4位に上昇しています。上昇に大きく貢献したのはストリーミングであり、指標の基となる再生回数は前週比226.9%を記録。次週は集計期間初日に放送された『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)でのライブパフォーマンスの反響に伴い、過去曲共々伸びる可能性が考えられます。
#CDTVライブライブ
— 井口理 (@Satoru_191) 2025年4月28日
観てくれた方々ありがとう
何か感じたものがあれば
是非次回King GnuのLIVEに来て下さいね pic.twitter.com/hVRDakRor9
(『CDTVライブ!ライブ!』におけるKing Gnuのパフォーマンスについては、音楽ジャーナリストの柴那典さんによるnote(King Gnuと「CDTVライブ!ライブ!」が「音楽番組におけるロックバンドの魅せ方」を革新したんじゃないかという話|柴 那典(4月29日付)を是非ご参照ください。)
一方でME:I「MUSE」は2→39位、ポイント前週比は20.3%を記録。アイドルやダンスボーカルグループの作品はフィジカルセールス加算2週目にてセールスが急落し、総合でも上位をキープすることが難しい状況ですが、ME:Iのフィジカルシングル表題曲では「Click」が2位→11位(ポイント前週比40.4%)、「Hi-Five」が1→26位(同26.8%)と推移しており、「MUSE」は順位およびポイント前週比共に過去作よりも低くなっています。
またロングヒットに最も欠かせないストリーミング指標は、フィジカルセールス指標加算2週目までにおいて「Click」が31→23→25→17→18位、「Hi-Five」が68→49→80→97→79位→100位未満(300位圏内)と推移した一方、「MUSE」は96位に初登場後5週続けて100位未満(300位圏内)を記録。この指標の漸減は、ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートからも確認することができます。
(上記は最新4月30日公開分におけるトップアーティストのCHART insightであり、有料会員向けの情報となります。総合チャートおよび構成指標における20位未満の順位はCHART insight有料会員のみが確認可能ですが、ビルボードジャパンでは有料会員のみ知り得る情報の掲載を可能としています。)
トップアーティストチャートにおいては6週目が「Click」、25週目が「Hi-Five」、そして58週目が「MUSE」のフィジカルセールス指標初加算時を指しますが、ストリーミングはフィジカルシングル登場のたびに下降度合いが急となり、且つ頂上が低くなっています。ストリーミングと比例傾向にある動画再生指標においても同様であり、ストリーミングよりも頂上は高いものの、しかし下降度合いはやはり急になっています。
ME:IのトップアーティストチャートにおけるCHART insightではシングルのフィジカルセールス指標初加算時のほか、40週目にあたる2024年12月18日公開分でも同指標が14位に急上昇していますが、これは集計期間中に実施されたこちらの企画が影響しているものとみられます。過去作では「Click」が100位未満(300位圏内)から14位、「Hi-Five」は84→13位に、フィジカルセールス指標が再浮上しています。
しかし2024年12月18日公開分のトップアーティストチャートでは、フィジカルセールス以外の指標が加点対象となる300位以内に入っていません。この動向からは企画がコアファン向けのものであり、またコアファンの所有および接触行動における特性がみえてくるといえるかもしれません。
ソングチャートにおいてロングヒットや年間チャートの上位進出に最も欠かせないのがストリーミングであり、同指標はコアファン以上にライト層(曲は気になるが歌手のファンではない方)の支持が大きく反映されるのですが、しかしながらコアファンによる接触が重要でないわけではありません。ただコアファンは新曲登場の度に聴取先がその新曲へ移行する傾向にあることから、やはりライト層を獲得することが最重要といえます。
ゆえにコアファンは接触を続けつつ、ライト層を惹き付けるべくアイデアを出し合うことが必要と考えます。最近ではコアファンと積極的にやり取りを行う歌手の運営側も存在すると耳にするゆえ、運営側の柔軟な姿勢も鍵となるでしょう。