2020年からポッドキャスト【Billboard Top Hits (通称:ポッドチャート)】を発信し、現在は毎週木曜13時に最新エピソードを公開しています。最新回はこちら。
今回はポッドキャストでも紹介した最新のビルボードジャパントップアーティストチャートから、注目点を採り上げます。
ソングチャートとアルバムチャートを合算したビルボードジャパンによる最新6月25日公開分(集計期間:6月16~22日)のトップアーティストチャートでは、『Hollow』のアルバムチャート制覇に伴いStray Kidsが前週の37位から首位に到達しています。一方で、指標構成をみると他の歌手とは大きく異なる状況です。
6月25日公開分ビルボードジャパントップアーティスト、総合5位までにおける指標構成を示したCHART insightを上記に。こちらは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています。なお、ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。
※ リンク先ではリカレントルールについても紹介しています。
6月25日公開分ビルボードジャパントップアーティストチャートにおける総合首位および2位の指標構成は大きく異なります。Stray Kidsは所有指標ほど接触指標群は強くない一方で総合2位のMrs. GREEN APPLEはソングチャートで「breakfast」が首位に立ったこともあり、フィジカルセールス以外の5指標が首位を獲得しています。
Stray Kidsはアルバム『Hollow』がストリーミング指標300位以内に達しておらず、次週この指標が300位以内に入らなければアルバムチャート、そしてトップアーティストチャートでも急落する可能性が高いことが、前週ふたつのチャートを制したtimeleszの当週動向から想起できます。『FAM』はデジタル未解禁が影響しアルバムチャート1→48位、timeleszはトップアーティストチャートで1→30位に後退しています。
(上記は6月25日公開分における『FAM』のアルバムチャート、およびtimeleszのトップアーティストチャートでの有料会員が確認可能なCHART insightとなります。以下に掲載するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)
初週フィジカルセールスが大きいながらもデジタル未解禁に伴い総合アルバムチャートを制した翌週トップ10圏外へ後退した例として、今年度週間ミリオンセールスを唯一記録したSnow Man『THE BEST 2020 - 2025』が挙げられます。フィジカルセールスは2週目でも7万枚近くを売り上げながら、総合1→13位に後退しています(下記エントリー参照)。
timelesz『FAM』は当週18,689枚のフィジカルセールスを記録していますが、ストリーミングに強い作品等に押し出される形で順位を落としています。それでも、総合27週以上在籍する作品に対しストリーミングの指標化時に減算処理を施すというリカレントルールが下半期から採用され、新しい作品が上位に在籍しやすくなったことを踏まえれば、このルールがなかったならば『FAM』はもっと下がったはずです。
このブログでは『FAM』のデジタル未解禁について幾度となく採り上げていますが、未解禁をチャートの側面のみを踏まえて勿体無いと述べているわけではありません。
オーディションを経てコアファン数が急拡大したとして、しかしそのコアファンが数年後も全員コアファンのままでいることはありません(他の歌手に興味を移す方や退かざるを得なくなる方等が想起可能)。だからこそコアファンに昇華可能なライト層(歌手のファンではないが曲が気になる方)を増やすことが求められ、そしてそのライト層が曲に触れられる機会を増やす必要があると考えれば、解禁は必要だというのが私見です。
timeleszが所属するSTARTO ENTERTAINMENTではデジタルを解禁する歌手が増えた一方でフィジカルセールス優先、もしくはフィジカルリリース時にアルバムのリード曲やシングルの表題曲のみデジタル解禁するという状況が目立ちます。その中にあって、フィジカル/デジタル同時解禁した山田涼介さんによるアルバム『RED』(Ryosuke Yamada名義)が好調に推移しています。
その他、Ryosuke Yamada『RED』は前週42位から当週19位に上昇。全国6都市を巡るライブツアー【Ryosuke Yamada LIVE TOUR 2025 RED】のツアーファイナルが行われたこともあり、CDセールス数が前週比380%で前週39位から当週14位、ストリーミングが前週44位から当週22位にランクアップしている。
【ビルボード】Stray Kids『Hollow』CDセールス/DLの2冠で総合アルバム首位 https://t.co/KznZAJeI7K
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年6月26日
『RED』はフィジカルセールスに沿う形でストリーミングが上昇を続け、コンサートの盛り上がりが所有のみならず接触行動にも波及していることが解ります。この点から、サブスク解禁がフィジカルセールスを決して毀損しているわけではないといえるのではないでしょうか。なお『RED』は通常盤ボーナストラックを含む13曲をフィジカルリリースと同時、初回限定盤1および2のボーナストラックを後日デジタル解禁しています。
山田涼介さんが所属するHey! Say! JUMPの最新フィジカルシングル表題曲「encore」も、ソングチャートで4週続けて100位以内に登場。ダウンロード、ストリーミングおよび動画再生はいずれも100位未満ながら加点され続けており、ともすれば山田さんによるコンサートツアーがこちらにも影響したと捉えていいかもしれません。デジタルを味方にすることの重要性は、この曲の推移からも読み取れるでしょう。