一昨日付のブログエントリーにて、ビルボードジャパンソングチャートにおけるモナキ「ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど」の動向を紹介しました。
動画再生が9→10位と好調をキープ、そしてストリーミングが100位未満→70位に上昇したことで、総合では12→24位と後退するも2週連続で総合100位以内に登場。演歌歌謡曲ジャンルにおける接触指標群の好調、そして総合2週連続ランクインは極めて異例です。

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。また、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)
この"異例"は、このジャンルにおける2025年度以降の作品群と比較するとよく解ります。それらのCHART insightを掲載した以下のエントリーで、次のように記しました。
そして、モナキ「ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど」のヒットについて、演歌歌謡曲界がどう考えるかを注視しています(尤も同曲の次週以降の動向も注視が必要ですが)。この曲のヒットを特殊と一蹴するならば、このジャンルでのデジタル重視姿勢は生まれないでしょう。演歌歌謡曲ジャンルを音楽ファンに広く浸透させ将来のコアファンに成り得るライト層を掴むためにも、デジタルに明るくなることは必須です。
日本の演歌歌謡曲界隈がデジタルに明るくなり、社会的ヒットの鑑たるビルボードジャパンソングチャートで存在感を高めるにはどうすべきか、今回のエントリーで提案します。なおビルボードジャパンによるチャートは、後述する『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下"紅白"と表記)における出場歌手の選考基準に大きな役割を果たしていると考えられています。
・モナキのSNS/デジタル施策を学ぶ
主にデビュー日におけるモナキの音楽チャート施策についてはTikTok等で話題のモナキ…フィジカルデビュー日のスケジュールからみえてくるチャートへの意識(4月4日付)で紹介しました。その後、SNS施策には専用スタッフの存在(起用)が大きいことが明らかになっています。
モナキの発信からは、学べることがたくさんあるはずです。これはSNSに限らず、SNSとも密接に結び付くデジタル施策でも同様。以下は直近の事例となりますが、これらは実はアイドルやダンスボーカルグループ界隈でよくみられる施策だともいえます。
\\ デジタルキャンペーンSTART! //
— モナキ (@monaki_official) 2026年4月8日
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デビュー曲「ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど」リリース記念✨
レコチョク、dヒッツでキャンペーン参加者全員に特典動画をプレゼント!
※それぞれ異なる動画となります… pic.twitter.com/J3rTXy5Dyh
モナキ( @monaki_official ) 「ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど」
— crown no oto | music & playlist (@crown_no_oto) 2026年4月20日
Spotify ではCanvasでMV撮影の裏側映像を公開中!今回はオレンジ担当じん編です🍊
Spotifyアプリから音源再生で是非チェックください👀https://t.co/fvFarjVurx https://t.co/dHU4PxXggS pic.twitter.com/adxcb3EMR8
「ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど」はSpotifyで100万回再生を、YouTubeの登録者数は10万ユーザーを突破。これは曲のヒット、デジタル施策徹底の賜物です。
・SNS/デジタルの向き合い方をレクチャーする
先程のポストにおけるSpotifyのCanvas機能は、再生中に短尺動画がリフレインで再生されるというもの。その映像を希少価値の高いものにして再生回数増加につなげるというのは面白い試みではないでしょうか。
モナカマのみなさん、知ってましたか?
— crown no oto | music & playlist (@crown_no_oto) 2026年4月21日
Spotify Canvasの動画はInstagramのストーリーズに投稿が…できます!😸
楽曲をSpotifyアプリからInstagramのストーリーズでシェア📱
↓
ストーリーズの背景でCanvas動画がループ再生📷
皆さんもシェアしてお楽しみください!🍊 https://t.co/WdjfIbzGX9 pic.twitter.com/WFluxe25lY
そしてそのCanvas機能に関するモナキ側の発信に注目。このようなレクチャー(アドバイス)は、SNSの活用に長けていないだろう方々にも有効といえるでしょう。
ここからは歌手への提案というより、演歌歌謡曲界全体に対するものとなります。
・高齢者へアプローチする
主に高齢者へのリーチについて、この曲の人気が好例になるのではないでしょうか。

大久保三郎さんの名義による「ラジオ指標第1」がカラオケ指標でヒットを続けています。最新4月22日公開分ビルボードジャパンソングチャートにてこの指標(CHART insightでは緑で表示)が61位につけた同曲は、カラオケが導入された2019年度初週以降に多くの週で同指標300位以内に登場。特に2020年夏からの2年間は上位進出を続け、2021年9月8日公開分にて最高位となる4位を記録しています。
2021年夏のブログエントリーにて「ラジオ体操 第1」のカラオケヒットを採り上げた際、同年春クールのドラマ『コントが始まる』(日本テレビ)での使用も影響したと記しつつ、高齢者向け施設での運動を促すための使用が大きく寄与したと紹介しています。高齢者(関連施設)の存在が、音楽チャートに影響を与えているのです。
「ラジオ体操 第1」のヒットは厳密には、高齢者というよりも高齢者向け施設管理者側の利用判断に伴うものです。ならば、そのような管理者側に音楽業界が営業をかけ、施設のBGM等で使ってもらうよう呼びかけるのがいいのではと考えます。またその際、デジタルの利用方法について利用者(高齢者)にレクチャーするのも好いかもしれません。
演歌歌謡曲界はフィジカルセールスを未だ強く重視し、カップリング曲やジャケットの異なる複数種を同時リリースする傾向にあります。これはアイドルやダンスボーカルグループでよくみられる施策ですが、演歌歌謡曲界ではさらにその後も1~2回程度、複数種を同時リリースするという施策を採りがちです。これでフィジカルセールスは増えるものの、ユニークユーザー(実際の購入者)とはどんどん乖離します。
グッズ的な側面が高まったフィジカルセールスの数字だけで真の社会的ヒットを図ることは極めて難しいというのが私見です。また今やCDショップが近くにない地域は少なくなく、その点でもフィジカルに頼ることは厳しいでしょう。だからこそ、デジタルでの所有や接触を今からでも、それに疎いとされる中高年層にきちんと訴求することが重要と考えます。
・アプローチしやすい場所に紅白等の映像を置き、訴求する
さて、『NHK紅白歌合戦』の出場歌手が発表される度に"つまらない" "今の歌手を知らない"等の言葉が散見されます。しかし今の紅白が音楽チャート(特にビルボードジャパン主要チャート)を参照していること、演歌歌謡曲がヒットから遠ざかっていること、そしてそれらを踏まえこのジャンルの復興を願い提案する行動が非難する者からはほぼ見当たりません。今の歌手を知ろうとする気配も感じ難いというのが、厳しくも私見です。
一方で、紅白側が演歌歌謡曲を重視していることは関連特番における同ジャンル発の映像の多さから見て取れます。尤もリアルタイム視聴者に中高年層が多いだろうことを考えてのセレクトかもしれませんが、ならばそのような紅白映像アーカイブをYouTubeでもチェックできる体制を築くことを提案します。
たとえば中森明菜さんが以前在籍していたワーナーミュージックでは、NHKのアーカイブ映像を定期的に公開しています(上記はおよそ1年前に公開された紅白パフォーマンス映像集)。貸与には予算が必要ですが、今の時代にあってはテレビでYouTubeを視聴できる環境が一般的ゆえ、検討は十分意味があるはずです。
(なお歌手側(レコード会社含む)の公式YouTubeチャンネルで公開された動画にISRC(国際標準レコーディングコード)が付番されていれば、ビルボードジャパンソングチャートにおける動画再生指標の加算対象となります。動画がヒットすることで総合チャートにも登場する可能性があることを踏まえれば、1本ずつ分けて公開するほうがより好いと考えます。)
この取組を業界全体が検討することを願います。これが進むことで過去の紅白を観ていた方(主に中高年層)のデジタルへの意識が高まることが考えられます。またメディアの映像貸与における低価格化や貸与システムの簡素化、さらにはNHK ONE開始に伴いNHKのネットとの親和性が悪化した状況へのカウンターにも成り得るかもしれません。
昨年初開催の音楽賞、MUSIC AWARDS JAPANでは演歌歌謡曲ジャンルに特化した授賞式が開催されています(上記は昨年の内容)。たとえばこのイベントの認知度を上昇させ、昨年の再生回数を伸ばすことで、予算を取り付けやすい体制が築けるかもしれません。
ただし個人的には、MUSIC AWARDS JAPANにおいて演歌歌謡曲部門を本編と分けることにはあまり賛成していません。今年も分けられていますが、ならば最優秀演歌・歌謡曲楽曲賞受賞作品をMUSIC AWARDS JAPAN本編(Grand Ceremony)でもきちんと採り上げ、披露させることが必要です。
・おわりに:業界内外が自身の価値観や考え方を省みるよう願う
モナキ「ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど」のヒットの理由を"若い歌手だから" "男性グループだから" "トンチキソングが流行っているから"等と捉える方はいらっしゃるでしょう。それも間違いではないとして、しかしデジタルへの明るさがヒットの下支えになっていることは明らかです。
演歌歌謡曲ジャンルの歌手やレコード会社、芸能事務所側においてはこの曲のヒットを分析し、施策を採り入れるよう願います。たとえば若手男性グループがこの施策を徹底するならば、彼らを中心に演歌歌謡曲ジャンル全体の認知度が、若年層主体に高まるはずです。そしてこれら施策は新曲にとどまらず、過去曲においても同様。現在はいつの時代、どのジャンルの曲に限らずヒットする可能性が高まっているゆえ尚の事です。
演歌歌謡曲界においてはこれまでの価値観が今の時代に沿っているか、きちんと省みることができるかどうかが音楽チャート面等での復興の足掛かりになると考えます。
一方でモナキ自体に対し、その価値観の点にて懸念する点が存在することは否めません。個人的にはファンネーム、またドキュメンタリー映像における純烈の酒井一圭さんやスタッフ等の言葉が持つ、いわば"キツさ"に強い違和感を抱いています。これらが今の演歌歌謡曲界で当たり前ならば、昭和体質とも呼べるこれら態度や価値観は拒否反応につながりかねないと危惧し、先日noteを記しています。
そして最後に。演歌歌謡曲については、ヒットが程遠くなっているという現状を広く音楽ファンが知ることも重要です。先程は紅白における人選への非難について紹介しましたが、ではその中でどれだけの方が本気で演歌歌謡曲界の現状を認識し、チャートヒットの必要性を考えているでしょう。今回の提案が絵空事等と言われればそれまでですが、非難だけでは解決には至らないということを厳しくも記させていただきます。