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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2024年度ビルボードジャパン年間ソングチャートの記事から表を作成、みえてくるものとは

昨日ビルボードジャパンが発表した2024年度年間チャートについて、ソングチャートを主体に分析等を実施したエントリーを同日午前に公開しました。ビルボードジャパンによる記事等をまとめた別途エントリーのリンクも掲載していますので、是非ご活用ください。

年間チャートはソング、アルバム、そしてソングとアルバムを合算したトップアーティストチャートのいずれも100位まで公開されています。そこで今回から3日間に渡り、それぞれのチャートを深堀りしていきます。本日はソングチャート編です。

 

 

下記表ではビルボードジャパン年間ソングチャート50位までにおいて、フィジカルセールス(PS)、ダウンロード(DL)およびストリーミング(ST)各指標の基となるチャートでの100位までの順位および20位までの数値、また52週分におけるソングチャートの順位推移を掲載しています。なお、この表では各指標(ダウンロード以外は指標化前の数値)で20位以内に入りながらも総合では100位以内に入らなかった曲も含めています。

(2023年度の掲載内容(→こちら)では総合100位までの指標構成および順位推移を掲載していましたが、2024年度においては総合51位以下に関して、3指標の基となるチャートで20位以内に入った曲に限り掲載しています。)

 

 

ソングチャートと最も乖離の少ない指標はストリーミングであり、この指標の基となるストリーミングソングチャートと総合チャートとでは、順位は異なれど9位までの顔ぶれが一致し、順位面でも上位で安定していることが解ります。それゆえ、ストリーミングソングチャートで48位のNumber_i「GOAT」が総合で16位に入っていることを興味深く感じています。この原動力については後述するCHART insightから読み取れます。

ストリーミングソングチャートの記事ではこのように紹介。ストリーミングで支持を獲得することの重要性を理解できるでしょう。

当年の総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”の指標別ポイントシェアをみると、現在と同じ6指標(CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生、カラオケ)での集計となった昨年2023年度と比較して、ストリーミング指標で稼いだポイントが全体の70%以上を超える楽曲は79曲→84曲と増加、80%以上に絞ると35曲→45曲とさらに増えており、音楽市場におけるストリーミングの存在感がいっそう増していることがわかる。

 

ダウンロードについてもNumber_i「GOAT」が強く、アイドルやダンスボーカルグループではTravis Japan「T.G.I. Friday Night」も16位にランクインしています(総合では100位未満)。加えて映像作品、特にアニメタイアップ曲の強さが際立つ結果となりました。

その一方で、昨年度の年間チャートと比較するとダウンロード数は緩やかながら減っていることが判ります。これはダウンロード全体がシュリンクしているゆえですが、しかしながらダウンロードは2024年度リリース曲が強いことから、ストリーミングの長期支持に伴いロングヒット曲が上位に進出する年間チャートにおいて2024年度リリース曲が存在感を示すためにはこの指標での人気が重要だといえるかもしれません。

 

フィジカルセールスにおいては、総合ソングチャートとの順位が大きく乖離する状況です。総合チャートではフィジカルセールス指標初加算時に最上位に到達する曲が少なくありませんが、デジタルが強くなければ翌週に急落し年間チャートで存在感を示しにくいというのがビルボードジャパンソングチャートの特徴です。この点は上記の順位推移表、また下記の週間1位および2位曲リストからも解ります。

フィジカルセールスはデジタルに比べてヒット規模が大きく変わらない傾向にあり、おそらくはそのことも理由にデジタルを好んで挑戦しない歌手や組織も存在するものと考えます。ただし、デジタルに強い歌手がすべてのシングル曲をヒットできるわけではないため、躊躇することなくデジタルに取り組むことを願うばかりです。

 

さて、CHART insight有料会員になると総合および各指標100位まで確認できるようになるのみならず(無料会員は各20位まで確認可能)、表示期間を1週分のみならず複数週で設定することも可能です。そこで2024年度の年間ソングチャートと同じ期間を表示設定しフィジカルセールス指標の順位をみると、指標化前のチャート(Top Singles Salesチャート)と順位が大きく異なることが判ります。

有料会員のみが知り得る情報ゆえ順位の詳細はお伝えすることができませんが、そこには以下の理由が想起されます。この点は2023年度の年間チャート、および2024年度上半期チャート紹介時(→こちら)でも指摘しており、ビルボードジャパンにはチャートポリシー(集計方法)見直しの議論を願うばかりです。

一定以上の週間セールスを記録した曲に対しビルボードジャパンがその超過分に減算処理を行うというチャートポリシー(集計方法)を適用した2017年以降、このチャートは社会的ヒット曲の鑑となりました。しかし一旦適用されるとその翌週以降は減算処理されないため、施策に伴うフィジカルセールス指標の再浮上がそのまま総合での再浮上にもつながります。そして中長期でみると、売上枚数と指標化後の順位が異なっています。

 

 

ビルボードジャパンによる年間チャートの記事からは様々な気付きを得ることができます。記事から今のヒットの形を知り、そして推す歌手がいるならばその方の作品についてチャート上で評価できる点のみならず課題も見つけ、特に後者についてはコアファン同士で(歌手側と話せる機会があれば歌手側と)議論するのが好いでしょう。その際、弊ブログエントリーが参考になるならば幸いです。

 

 

最後に、年間ソングチャートにおける上位20曲のCHART insight(総合および構成指標の週間単位での推移)を貼付します。

<2024年度ビルボードジャパン年間ソングチャート 上位20曲のCHART insight>

 ※ 1位から順に掲載

 ※ 年間最終週(11月27日公開分)までの最大60週分を表示

 ※ 順位、チャートイン回数は11月27日公開分を指します

  (順位は11月27日公開分において20位未満ならばCHART insight未記載、チャートイン回数は同日公開分において100位未満ならば同じく未記載となります)

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成