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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン年間ソングチャートの記事から表を作成、そこからみえてくるものとは

昨日早朝にビルボードジャパンが発表した2023年度年間チャートについては、ソングチャートを主体にこのブログで分析を実施しました。下記エントリーではビルボードジャパンによる記事のリンクも掲載していますので、是非ご活用ください。

今回の年間チャートについては、総合ソングチャートおよびトップアーティストチャートが100位まで公開され、上半期同様掲載範囲が拡がっています。そこでそれら記事を踏まえて新たな表を作成、今回は年間ソングチャートを紹介します。

 

 

ビルボードジャパンの年間ソングチャート100位まで、および総合100位以内には入らなかったものの、フィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミング指標の基となるチャート(Top Singles Sales、Download SongsおよびStreaming Songsチャート)で年間50位以内に入った曲の順位、ならびに総合ソングチャートにおける週間順位の推移を一覧化した表を下記に掲載します。

フィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミング指標の基となるチャートでの数値は20位まで判明していることから、こちらも合わせて掲載しています。なおフィジカルセールスおよびストリーミングは、指標化前の数値と指標の順位とが異なることがあります。

 

 


年間チャートから見えてくる傾向については、上半期振り返り時に述べた内容と大きく変わっていないといえます。上半期ソングチャートについては下記エントリーをご参照ください。

 

指標化の基となるチャートにおいて20位までの数値、および100位までの順位が可視化されたフィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミングですが、総合順位と最も大きく比例しているのがストリーミング。総合とストリーミングとでは11位までが、順位の前後はありながらも共通しています。このエントリーの最後に掲載したCHART insightからも、ストリーミングがロングヒットに欠かせないことがよく解るでしょう。

ダウンロードについては、アニメソングについて高くなる傾向があります。この指標でトップ10入りした7曲のうち、緑で表示している2022年度最終週以降リリースの作品についてはストリーミング以上にダウンロードの順位が高いことが解ります。

ロングヒット曲が上位に進出する傾向が強い年間チャートにおいては2023年度以降に初めて登場した曲は不利といえるのですが、それを補うのがダウンロードといえるでしょう。またアニメファンの方々の所有意識の強さもみえてきます。

 

そのアニメソングはフィジカルリリースされる傾向が高いのですが、他方フィジカルセールス指標の基となるTop Singles Salesチャートで50位以内に入った曲はデジタル、そして接触指標との乖離が生まれている状況です。その中にあって、昨日の振り返り時にも述べたようにTop Singles Salesチャート50位以内の曲で唯一総合100位以内に入ったKing & Prince「ツキヨミ」は、動画再生で2位を記録しています。

King & Princeについては他の多くの旧ジャニーズ事務所所属歌手同様、デジタル未解禁の状況が大きく響いています。一方でTop Singles Salesチャート50位以内に入った曲のは「ツキヨミ」を除き、総合100位以内ランクインが長くて3ヶ月弱となっており、如何にライト層に訴求しヒットを持続させるかが重要なことが解るでしょう。ライト層の訴求は社会的ヒットの創出、そして歌手活動の中長期化につながるものと考えます。

 

総合における週間順位の推移をみれば、週間にてトップ10入りしていないものの年間で上位に進出する曲が少なくありません。年間20位までにおいてはSaucy Dog「シンデレラボーイ」(12位)、back number「水平線」(13位)等、4曲が該当します。この表も踏まえ、昨日のエントリーにて提案したリカレントルールについて、まずは導入可否を議論することを願います。

 

そしてもうひとつ、フィジカルセールス指標のウエイトについても議論する必要があるでしょう。この点は以前記したのですが、昨日の記事にて興味深い文言がありました。

複数指標でポイントをバランスよく獲得し続けることが上半期や年間チャートで上位チャートインの条件となって久しく、今年もその傾向が続く結果となっている。例えば、King & Prince「ツキヨミ」は今期中の動画再生で75,134,872再生と、「Subtitle」を抑えて2位となったが、他指標がふるわず76位だった。CDポイント1位のAKB48「どうしても君が好きだ」も同じく総合100位圏外となった。

フィジカルセールス指標の基となるTop Singles SalesチャートにおいてはAKB48「どうしても君が好きだ」が7位であり、King & Prince「Life goes on」が1.6倍近い売上を記録し同チャートを制しています。しかし指標化後のポイントでは逆転した形です。

上記はKing & Prince「Life goes on」およびAKB48「どうしても君が好きだ」における、2023年度最終週までのCHART insight。総合順位は黒、フィジカルセールス指標は黄色で表示されるのですが、「どうしても君が好きだ」はフィジカルセールス指標が大きく上下し、それに沿う形で総合順位も大きく動いています。

フィジカルセールス指標は週間5万枚(推定)を超える分に係数処理が行われています。当初は30万枚といわれていますが、この係数処理を施した2017年以降、ビルボードジャパンソングチャートはデジタルヒットの週間単位での上位進出を可能とし、そしてストリーミングヒットが社会的ヒットに欠かせないことを示すようになりました。それにより、ビルボードジャパンソングチャートは社会的ヒットの鑑に成ったといえます。

フィジカルが売れ続ける曲も稀にありますが、基本的には加算2週目に急落します。曲の話題性に伴い売れ続けることもあるかもしれませんが、AKB48の今年のシングルにおいてはリリース後にフィジカルセールス以外の指標が加算されなくなっていることもあり、コアファンの熱量を高めた施策の結果だと捉えていいでしょう。

ビルボードジャパンに対してはフィジカルセールス指標のウエイト減少を提案していますが、その提案直後に「アイドルなんかじゃなかったら」がフィジカルセールス再上昇に伴い総合トップ10返り咲きを果たしています。ただし他指標を伴っていないこともあり、あらためてウエイト減少を提案したばかりです(上記エントリー群参照)。

その後、年間チャートの記事にて「どうしても君が好きだ」のフィジカルセールス指標首位が判明しています。施策が過度に反映されている可能性を踏まえれば、この指標の是正は必要と捉えています。

 

フィジカルセールス指標ウエイト減少という提案は、特定の歌手を過度に不利にさせかねないものだと指摘されるかもしれません。そこで昨日記した内容を再掲し、自分の考えを述べさせていただきます。

最善はストリーミングで継続的にヒットさせ、フィジカルリリースがあるならば最良のタイミングで発売し瞬発力も高めるという、接触/所有双方の指標の強化だと考えます。

4番目の項目にて"サブスクにどんなに強い歌手でもアニメタイアップを含むすべての曲がヒットするとは限らない"と書きましたが、熱量の高いコアファンがストリーミングにてライト層にリーチさせる手段を構築することができたならば、アイドルやダンスボーカルグループが社会的ヒットを多く輩出できる、その最前線に躍り出るかもしれません。

 

 

ビルボードジャパンによる年間ソングチャートの記事から、気付くことは様々あるはずです。記事から今のヒットの形を知り、そして推す歌手がいらっしゃるならばより高い位置に到達するためにどうすべきかを考え、コアファン同士で議論するのが好いでしょう。その際、昨日および本日付のブログエントリーが参考になるならば幸いです。

 

 

最後に、年間ソングチャートにおける上位20曲のCHART insight(総合および構成指標の週間単位での推移)を貼付します。

ビルボードジャパン年間ソングチャート 上位20曲のCHART insight>

 ※ 年間ソングチャート、1位から順に掲載。

 ※ 年間チャート最終週(11月29日公開分)までの最大60週分を表示。

 ※ 順位、チャートイン回数およびチャート構成比は11月29日公開分を指します。

 ※ CHART insightの見方については、以下のポストをご参照ください。