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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン上半期記事からソングチャートの表を作成、そこからみえてくるものとは

昨日早朝にビルボードジャパンが発表した上半期チャートについて、ソングチャートを主体に分析等を実施したエントリーを同日掲載しました。ビルボードジャパンによる記事等をまとめた別途エントリーのリンクも掲載していますので、是非ご活用ください。

今回の上半期チャートは昨年度と同様、総合ソングチャートおよびトップアーティストチャートが100位まで公開されています。今回は記事を踏まえ、ソングチャートの表を作成しました。

 

掲載する表ではビルボードジャパンの上半期ソングチャート50位までにおけるフィジカルセールス(PS)、ダウンロード(DL)およびストリーミング(ST)の各指標(ダウンロード以外は指標化前の数値)の20位までの順位および数値、また26週におけるソングチャートの順位推移を記しています。なお、この表では各指標(ダウンロード以外は指標化前の数値)で20位以内に入りながらも総合では50位以内に入らなかった曲も含めています。

 

ソングチャートと最も乖離の少ない指標はストリーミングであり、この指標の基となる再生回数と総合チャートとでは9位までの顔ぶれが、順位こそ違えど同じ状況です。そしてこれら作品は総合順位の推移においても上位で安定していることが解ります。

昨年度上半期ではストリーミング再生回数と総合チャートの上位20曲が順位は異なれども完全合致していましたが、今年度上半期では総合11位のNumber_i「GOAT」がストリーミング47位という結果に。仮にストリーミングがより高い位置に来ていたならば総合での上位進出、また順位推移の変動が小幅になったと考えます。

 

ダウンロードにおいてはその「GOAT」のほか、Travis Japan「T.G.I. Friday Night」が上位にランクイン。アイドルやダンスボーカルグループではデジタル解禁することでこの指標上位に登場する歌手もいる一方、同じ所有指標でも後述するフィジカルセールスが際立つ歌手が今も多い状況といえます。

(ただしSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手の大半がデジタル解禁していないこと、Travis Japan「T.G.I. Friday Night」はフィジカル未リリースであること、またNumber_i「GOAT」はデジタル先行であったことは考慮する必要があります。)

そして今回も、ダウンロードにおいてはアニメソングが強いことが解ります。ではその中でロングヒットに至る、つまりストリーミングにも波及する作品はどれかということについては、上半期アニメソングチャートの解説記事にて注目の指摘がみられますので以下に紹介します。なおアニメソングチャートは総合ソングチャートからアニメソングや声優による作品を抽出したものです。

今回の上半期アニメチャートトップ20を見ると、「アニメの放送/上映期間終了後も楽曲が聴かれ続ける」ことは大前提として、楽曲と作品の相乗効果で、アニメ人気やアーティスト人気との相関よりも曲単位への支持が高く出るケース(Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」、10-FEET「第ゼロ感」など)、アーティスト人気の高さで、タイアップ元作品の動きに関わらず複数楽曲がチャートインするケース(YOASOBI「勇者」「祝福」、Mrs. GREEN APPLEライラック」「インフェルノ」など)、毎作タイアップ曲をヒットさせる人気シリーズ作の主題歌として、作品とともに支持を集めるケース(ヨルシカ「晴る」、羊文学「more than words」、aiko「相思相愛」など)の、大きく3つのパターンがまんべんなく分布していることがわかる。

 

フィジカルセールスにおいては、総合ソングチャートとの順位が大きく乖離する状況です。フィジカルに強い歌手がデジタルでも強くなり総合で最上位に進出することやロングヒットすることが難しいというのがビルボードジャパンソングチャートの特徴ですが、デジタルに強い歌手がすべてのシングルを総合にてヒットできるわけではないこともまた事実。ならば躊躇することなくデジタルに積極的になることを願うばかりです。

上半期では最終週にKing & Prince「halfmoon」(上半期フィジカルセールス14位)が週間チャートを制覇。冒頭の表では未記載ながらBE:FIRST「Masterplan」(上半期ソングチャート61位)同様、フィジカル/デジタル同週解禁が結実した形といえます。先述したNumber_i「GOAT」(デジタル初加算週に総合首位/フィジカルセールス初加算週に同2位)共々、これらの実績がフィジカルセールスに強い歌手における指針となるでしょう。

 

 

さて、表作成の際、フィジカルセールスについてはこちらの記事を参照しています。

一方、総合ソングチャートの記事では興味深い文言がみられます。

また、ダンス&ヴォーカルグループで最も順位が高かったのはNumber_i「GOAT」。ラジオ1位、ダウンロード3位、動画4位、ストリーミング47位、CDセールス19位と、デジタル指標でポイントを獲得し、11位を獲得した。

Number_i「GOAT」はフィジカルセールス指標の基となる売上枚数では11位ながら、指標化の際に19位と、順位に差があることが判ります。

 

ビルボードジャパンは2017年度以降フィジカルセールス指標にて、週間セールスが一定の枚数を超えた場合にその超過分に係数処理を施す形を採るようになりました(そのハードルは当初30万枚、現在では5万枚前後と推測されますがビルボードジャパンは数値を明らかにしていません)。一方で、昨日のエントリーでも記したように最近は一部歌手でフィジカルリリースから数週後にフィジカル販売施策を採ることが目立っています。

下記は6月5日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおけるAKB48カラコンウインク」のCHART insight。同曲はフィジカルセールス指標初加算の4週後、そして10週後にフィジカルセールスが急増し(前者は58,630枚および後者は73,729枚)、総合ソングチャートでもトップ20内に返り咲いています(前者15位および後者11位に)。しかし翌週にはフィジカルセールス、総合ソングチャート共に急落しています。

しかし現在のチャートポリシーでは週間単位で一定枚数を上回ったフィジカルセールスに対し係数処理を行う一方、フィジカルリリースから数週後のフィジカル販売施策でセールスが急増した曲に対しては係数処理が施されません。この施策で上昇した曲は他指標が伴わず、ライト層やグレーゾーンとの乖離を生んでいる(コアファンの追加購入を施策の主体としている)以上、真の社会的ヒットとは呼び難いと考えます。

ただ、このようなフィジカルリリース後の販売施策を採る曲が、売上枚数の順位以上に指標化時の順位がより高くなっているのではということを、記事の「GOAT」に関する表記から感じています。この仮説が正しいならば、一定の売上枚数を超えた曲についてはその週以降、一定枚数を超えなくとも毎週の売上に係数処理を施すことが必要ではないかと考え、ビルボードジャパンにチャートポリシー(集計方法)の議論を希望します。

 

 

ビルボードジャパンによる上半期チャートの記事からは様々な気付きを得ることができます。記事から今のヒットの形を知り、そして推す歌手がいればその方の作品がより高い位置に到達するにはどうすべきかをコアファン同士で議論するのが好いでしょう。昨日および本日付のブログエントリーが参考になるならば幸いです。

 

 

最後に、上半期ソングチャートにおける上位20曲のCHART insight(総合および構成指標の週間単位での推移)を貼付します。

<2024年度上半期ビルボードジャパンソングチャート 上位20曲のCHART insight>

 ※ 1位から順に掲載。

 ※ 上半期最終週(5月29日公開分)までの最大30週分を表示。

 ※ 順位、チャートイン回数は5月29日公開分を指します(20位未満の際は未記載)。

 ※ 総合順位は黒、フィジカルセールスは黄色、ダウンロードは紫、ストリーミングは青、ラジオは黄緑、動画再生は赤、カラオケは緑で表示。