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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】2月以降首位獲得曲等の動向を踏まえた、ビルボードジャパンへのチャートポリシー見直し提案

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

2月20~26日を集計期間とする最新3月1日公開分のビルボードジャパンソングチャートは、King & Prince「Life goes on」がフィジカルセールス初加算に伴い首位を獲得しました。

ビルボードジャパンの記事の表題の通り、King & Prince「Life goes on」はフィジカル発売週にミリオンセールスを達成。『初週売上100万枚超えは、2020年3月にリリースされたAKB48「失恋、ありがとう」(1,414,077枚)と乃木坂46「しあわせの保護色」(1,049,667枚)以来』およそ3年ぶりとなります(『』内は上記ツイート記事より)。

一方でフィジカルシングルのダブルAサイドとなる「We are young」は動画再生指標11位ながら総合100位以内に登場しませんでした。フィジカルセールス指標は複数のAサイドが設定されたシングルでは1曲のみが加算対象となりますが、仮にストリーミング指標が加点されていれば「We are young」も総合100位以内に入ったことでしょう。

また「Life goes on」の獲得ポイントは11,622であり、前週首位のBE:FIRST「Boom Boom Back」には及んでいません。フィジカルセールスを武器に首位を獲得した2月以降の作品の中では1万ポイント超えは素晴らしい数値ながら、ストリーミング指標の基となるサブスクが解禁されていれば今年度最高の週間ポイントを獲得できたのではないでしょうか。

 

さて、上記表で気になったことがもうひとつ。それは前週首位のBE:FIRST「Boom Boom Back」の最新チャートにおけるポイント前週比です。34.5%という水準は、デジタル未解禁ながら総合首位を獲得した作品としては高くはありません。

上記は2022年度におけるビルボードジャパンソングチャート週間首位獲得曲一覧。昨年度まではルックアップおよびTwitterの2指標が加算対象となっています。一方でフィジカルセールスがグレーのものはデジタルのみでリリースされた作品を指しますが、それらの大半は首位獲得翌週のポイントが急落していないことが解ります。その中にあって、BE:FIRSTは「Scream」(2022年8月3日公開分にて首位)でも急落が目立つのです。

「Boom Boom Back」においては他指標もダウンしていますが、ツイート内のチャート構成比をみれば青で表示されるストリーミング指標が非常に大きな役割を果たしていることが解ります。この指標はロングヒットの要になる指標であり、本来急落する性質は持ち合わせていません。

最新チャートの前半3日間におけるストリーミングの速報値では「Boom Boom Back」は2位、再生回数は305万回を突破していましたが、最終的には15位に大きく後退しています。上記速報記事で数値が判明しているものではOfficial髭男dism「Subtitle」(速報値1位→週間1位)が408.2万回→9,833,646回となり2.4倍の伸びとなったのに対し、「Boom Boom Back」は305.7万回→4,872,909回で1.6倍の伸びにとどまります。加えて速報値でトップ10入りしながら週間でのトップ10を逃したのは「Boom Boom Back」のみです。

これはBE:FIRSTが「Boom Boom Back」においてLINE MUSIC再生キャンペーンを採用したことが影響しています(詳細はこちら。なお「Scream」においても実施→こちら)。キャンペーンは最新チャートの集計2日目で終了しており、他のサブスクサービスでLINE MUSICほど好調に推移しなかったことやLINE MUSIC自体でのダウンも、ストリーミング指標が伸びなかったことにつながっています。最終的に総合ポイントの前週比は、フィジカルセールスで初週10万枚を突破した曲とほぼ変わらない水準と言えます。

 

BE:FIRST「Boom Boom Back」についても今回紹介した曲と同様、次週以降の動向をみて真の社会的ヒットに成るかをチェックする必要があります。「Boom Boom Back」のLINE MUSIC再生キャンペーンは次週3月1日公開分ビルボードジャパンソングチャートの集計期間2日目で終了していることから、ストリーミング指標が好位置をキープできるかがまずは重要な見極めポイントとなります。

前週は上記エントリーをアップし、複数週の動向から真のヒット曲に至るかを見極める必要を記しました。「Boom Boom Back」が次週以降復調するか注視していくのと同時に、このLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲については現状においてストリーミング指標の急落が目立つ状況を、今一度考える必要があるでしょう。

下記CHART insightは2月以降のソングチャートにおいて総合トップ10入り、もしくはストリーミング指標でトップ10入りを果たしたLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲の動向となります。

上記で紹介した作品はいずれも、キャンペーン後の急落が目立っています。ロングヒットを続けるOfficial髭男dism「Subtitle」や米津玄師「Kick Back」等と比較すれば、ストリーミングがロングヒットの屋台骨であり本来急落しない性質と解るはずです。


ビルボードジャパンはLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲がストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートを制した際、LINE MUSIC以外のサブスクサービスと乖離が大きければそれに応じた係数処理を施すことを2022年度第2四半期に開始しました。その後LINE MUSICが再生回数に関するカウント方法を変えたことやOfficial髭男dism「Subtitle」のヒットにより、キャンペーン採用曲の指標制覇はなくなっていました。

ビルボードジャパンがLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲において係数処理を実施するのはStreaming Songsチャート首位獲得曲のみとなりますが、今回紹介したキャンペーン採用作品の動向を踏まえれば、採用曲すべてに係数処理を施す必要があるのではと感じています。適用する係数は以前ビルボードジャパンが算出していると思われますので、それを採用曲全体に施すという形です。

 

LINE MUSIC再生キャンペーンは、解禁週に新曲が聴かれにくい(ゆえに新陳代謝が乏しいと形容されることのある)日本においては有効な施策と言えます。一方でストリーミング指標の急落はキャンペーンに参加するコアファンとライト層との乖離を指し、本来ライト層の人気が反映されるこの指標の性質からは離れています。

ビルボードジャパンはフィジカルセールス指標においても係数処理を施すチャートポリシー(集計方法)を採用していますが、それは首位曲が5万枚(推定)を超えた場合の適用であり、すべての作品にかけているわけではありません。ゆえにストリーミング指標においてもStreaming Songsチャート首位曲のみに適用していると考えますが、この指標の割合や意味合いが大きな総合チャートにおいては、LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲についてチャートポリシーを再検討する必要があるのではないでしょうか。

そして仮に見直すことになったとして、LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲を闇雲に否定することはしてはいけません。先述の通り日本で解禁週に新曲が聴かれるにはどうするか、様々な方法を率先して提案すること、そしてストリーミング指標がヒットの大きな鍵であることを訴求することも同時に希望します。デジタル未解禁歌手に対し解禁を促すことも、音楽業界の人気のバロメーターたるチャート管理者の役割だと考えます。