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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日向坂46「僕なんか」を支え、Hey! Say! JUMPと=LOVEの逆転を生んだ指標、そして支えるキャンペーンについて

毎週水曜に発表されるビルボードジャパンソングスチャートについての分析は本来木曜に行うのですが、ビルボードジャパンへの提案や上半期チャートの総括を優先したため、本日掲載することとしました。上半期チャートの総括は下記リンク先をご参照ください。

 

最新6月8日公開分(6月13日付)ビルボードジャパンソングスチャートは、フィジカル関連指標初加算に伴い日向坂46「僕なんか」が首位に到達しています。

日向坂46の7枚目となるシングルのリード曲「僕なんか」は、初週売上478,142枚でシングル1位、ルックアップ1位で合計2冠を獲得。他指標では、ダウンロード8位、ストリーミング42位、Twitter 7位、ラジオ50位でフィジカルだけではなくデジタルでも存在感を発揮して、総合首位を獲得した。前作「ってか」の初週シングルセールスは432,829枚で本作は約4万枚増加しており、順調に訴求力を伸ばしている。

フィジカル関連指標の強さは、48万枚近いフィジカルセールスもさることながら、ルックアップの首位獲得にも表れています。レンタル解禁はアルバム同様発売の17日後に設定されているゆえ、レンタルに伴う加算のない状況で首位を獲得しているのはユニークユーザー数が多い証拠とも言えます。そしてもうひとつ、注目すべきはストリーミング指標の高さです。

フィジカルリリースの前週にデジタルが解禁された「僕なんか」は、前週6月1日公開分(6月6日付)で31位に初登場。その際の原動力はダウンロード指標の好調にあるのですが(CHART insightでは紫で表示。6→8位と推移)、最新週のチャート構成比をみればストリーミング(青)がダウンロードのおよそ3倍ものポイントを獲得しています。

「僕なんか」のストリーミング指標は49→42位と推移。フィジカルに強いアイドルやダンスボーカルグループの作品の中では異例の強さであることは、今年度の週間チャート1~3位の動向からも明らかです。

 

「僕なんか」のストリーミング指標については、同曲がLINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)の採用しており、それが今週までの、そして翌週のチャートでも大きく影響してくることが考えられます。

※ ホームページのキャプチャ画像を貼付しました。問題があれば削除いたします。

再生回数のハードルは高くはないこと、サイン等がなく希少価値がともすれば高くないことが再生総数の多くなさと言えるかもしれませんが、キャンペーン期間が長く次週のソングスチャートもフルで対象となっていることを踏まえれば、次週の下げ幅はポイント、順位共に小さくなることが予想されます。

 

実際、LINE MUSIC再生キャンペーン採用によりフィジカル関連指標加算2週目でダウン幅を小さくすることができたアイドル曲が存在します。

前週フィジカル関連指標初加算に伴い4位に登場した=LOVE「あの子コンプレックス」は27位にダウンするも、ポイントの半分以上がストリーミングで構成。この指標は前週の50位から45位へと順位を上げています。こちらもLINE MUSIC再生キャンペーンを比較的長期間開催したことが功を奏した形です。

※ ホームページのキャプチャ画像を貼付しました。問題があれば削除いたします。

一方、前週同じくフィジカル関連指標初加算に伴い総合首位を獲得した、Hey! Say! JUMP「a r e a」は75位に大きく後退。=LOVE「あの子コンプレックス」と順位が入れ替わったのです。

(上記はショートバージョン。)

Hey! Say! JUMP「a r e a」はダウンロードおよびサブスクが未解禁であり、またレンタル解禁が17日後ゆえレンタルに伴うルックアップも加算されないことが急落の理由と言えます。とはいえ、=LOVEの前作「The 5th」(2021 CHART insightはこちら)が総合4位→100位未満(300位圏内)と推移した経緯を踏まえれば、「あの子コンプレックス」がキャンペーン採用に伴い総合チャートで上位にとどまったことは確実と言えるでしょう。

そして=LOVE「あの子コンプレックス」において、仮にこのLINE MUSIC再生キャンペーンがより多くの方に活用されたならば、前週におけるおよそ1500ポイント差はさらに縮まり、前週の段階においてもHey! Say! JUMP「a r e a」を逆転した可能性はゼロではなかったはずです。今回の結果について、=LOVE側は手応えをつかんだのではないでしょうか。

 

LINE MUSIC再生キャンペーンを活用しStreaming Songsチャートを制した曲が他のサブスクサービスと乖離していた場合はストリーミング指標化の際に個別係数がかけられるよう、今年度第2四半期にチャートポリシー(集計方法)が変更されました。個別係数は好い措置と考える一方でStreaming Songsチャート首位曲以外に個別係数がかからない状況は疑問であり、ビルボードジャパンはチャートポリシーの再変更が必要と考えます。

LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲の再生回数が跳ね他サービスとも大きく乖離する傾向にある以上、それがチャートにそのまま反映されることは問題と考えますが、キャンペーン自体はそこまでの問題ではないとも捉えています(ただしキャンペーンがチャートを著しく歪にした以上、それを続けるLINE MUSICの姿勢は問われておかしくないでしょう)。そして実際に再生回数が増えたことで、今回のような逆転が発生したわけです。

チャート戦略としても有効に作用するLINE MUSIC再生キャンペーンは、しかしストリーミング再生回数を伸ばしても一時的で、ロングヒットには至れません。ゆえにこのキャンペーンをライト層にどう波及させるが重要です。キャンペーン自体はコアファン向けの側面が強いゆえ矛盾と言われておかしくない提案ですが、今年度各週におけるストリーミング指標上位20曲の推移をみれば、提案の意味を理解していただけるはずです。