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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

今週ビルボードジャパンは下半期突入…その前にあらためて、チャートポリシー変更希望を提示する

ビルボードジャパンは今週金曜、午前4時に上半期チャートを発表します。昨年度の上半期チャートについてはその日のうちにこのブログでも分析、解説しており、今回も金曜午前のアップを予定しています。

そして今週からは下半期に突入。ビルボードジャパンは2020年第4四半期以降しばらく、各四半期初週にチャートポリシー(集計方法)を変更してきました。今年度第2四半期はその変更はありませんでしたが、第2四半期半ばにストリーミングに関して二度のチャートポリシー変更を実施しています。

それを踏まえれば、下半期および第3四半期初週となる6月8日公開分(6月13日付)で新たなチャートポリシー変更が行われる可能性があるものと考えます。このブログでは以前から提案した内容を再掲する形で、次回以降のチャートポリシー変更の際に希望する内容について、以下にまとめます。

 

 

ビルボードジャパンへのチャートポリシー変更希望、その1つ目は【ソングスチャート構成指標の変更】です。8指標のうち4つについては、見直しが必要と考えます。

まずはフィジカルセールス指標。フィジカルはコアファン向けアイテムの意味合いを増しています。一方でフィジカル未リリースのシングルが増えデジタルのみで大ヒットする作品もありますが、フィジカルに強いながらデジタルに強くない作品が短期的に上位に進出することでデジタルヒット作品がロングヒットはしても週間チャートで上位に進出できない状況が、今も続いていると言えるでしょう。

上半期週間ソングスチャートの1位、2位および3位の成績を定点観測したものを上記に。フィジカルに強いながらもデジタルが伴わない作品は急落が目立ちます。1位に関しては翌週の急落は減りましたが、2位および3位曲の中には翌週100位未満となってしまうものも少なくありません。にもかかわらずフィジカルセールスだけで短期的に上位進出することが目立つことにより、デジタルヒット曲の可視化が妨げられかねません。

フィジカルセールス指標においては、①現在5万枚程度と言われる係数処理対象枚数の引き下げ、②係数処理対象枚数に対してのみのウエイトダウン、③指標全体のウエイトダウン…このどれかは必要と思われます。いずれにせよこの指標の影響力は弱める必要があるのではないでしょうか。

 

ストリーミング指標については、あるサブスクサービスの順位が他のサービスと大きく異なることを見越したサービス自体のウエイトダウン(LINE MUSICもしくはAWAと言われています)、およびLINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)によりStreaming Songsチャート首位を獲得した曲の指標化の際の個別係数適用措置が、共に第2四半期半ばに行われました。

しかし二度のチャートポリシー変更に関して、後者は特に不完全と言える内容です。Streaming Songsチャート首位曲以外にもLINE MUSIC再生キャンペーン効果により上位進出した曲が個別係数適用を免れ、指標化の際にStreaming Songsチャート首位曲を上回る矛盾が発生しています。上記ブログエントリーで述べた解決策を軸に、キャンペーン採用曲全てに個別係数を、分かりやすい形で適用することを求めます。

 

動画再生指標においては2点の改善を希望します。

ひとつは動画再生指標のウエイト上昇。公式動画のみが加算対象となって以降、User Generated Songsチャート上位曲が総合ソングスチャートで伸びないままとなっていますが、上位常連曲はネット上でも長く人気となっていることを踏まえれば、総合チャートとのヒット認識の乖離が続いていると言えるかもしれません。

また5月25日公開分(5月30日付)で普段の動画再生指標首位曲の倍以上もの再生回数を記録したケツメイシ「友よ~この先もずっと・・・」が、一方で総合ソングスチャートでトップ10未達となったことも気になります。動画の影響力はもう少し強める必要があるのではないかというのが私見です。

動画再生指標においては、他の指標で合算対象とならないはずのバージョン違いが合算されていることも問題です。特にTHE FIRST TAKE動画は、その動画用音源が別途リリースされない限りオリジナルバージョンのISRC(国際標準レコーディングコード)が付番されているのか、オリジナルバージョンに合算されているのですが、本来ビルボードジャパンは言語の違いを除き合算しないことが3年半前に判明しています。

THE FIRST TAKE側がオリジナルバージョンのISRCを付番する理由がチャート上昇の目的も踏まえてであるならば問題ですが、ビルボードジャパンがその矛盾を解っていながらそのままにしているならば、それもまた問題です。海外のチャートは米ビルボードも、米ビルボードによるグローバルチャートでも合算することになっており、動画再生指標の矛盾解決のためにも全バージョンを合算するよう変更することが必要でしょう。

 

そしてTwitter指標。こちらについてはウエイトの減少を講じる必要があると考えます。下記は第2四半期各週のTwitter指標上位20曲であり、青がジャニーズ事務所所属歌手、緑がジャニーズを除く日本の男性アイドルやボーイズグループ、薄い青がLDH所属歌手、ピンクが日本の女性アイドル、紫がK-Pop男性アクト、オレンジがK-Pop女性アクト、そして黄色がアニメソングやネット関連作品を指します。

これをみると緑が圧倒していることが解ります。また緑の中でも特定のグループが際立っている状態です。

コアファンの熱意、チャートへの意識の高さは素晴らしいと思いますが、それにより指標が総合チャートや他指標と著しく乖離しているならばウエイトを減らす措置を採るのは自然なことです。また米やグローバルのソングスチャートではTwitter指標が含まれず、米ではHot Trending Songsチャートという形で別途設けていることから、Twitter指標を切り離すことも視野に入れる必要があるでしょう。

ビルボードジャパンはライト層人気がより強く反映されたチャートを設計思想の礎とし、そのためにチャートポリシー変更を随時行っていると考えます。コアファンの熱量がより強く反映されたフィジカルセールスや(再生キャンペーン等に伴う)ストリーミングにはメスが入っており、Twitter指標についても考慮することを勧めます。

 

 

ビルボードジャパンへのチャートポリシー変更希望、2つ目は【アルバムチャートの米ビルボードチャートポリシー採用】です。単曲ダウンロードのアルバム換算分とストリーミング(動画再生含む)のアルバム換算分をセールスに含めて算出する米ビルボードのチャートポリシーを、日本流にアレンジして採用することを勧めます。

この点については以前も提案しています。実際最新6月1日公開分(6月6日付)ビルボードジャパンアルバムチャートでは上位20作品中16作が初登場となり、残り4作品も最長チャートインが3週という状況ですが、構成3指標の乖離を踏まえればその大半が急落することは確実とみられます。つまり、社会的にヒットしている作品が週間チャートからは可視化されにくいのが現状です。最新チャートのトップ10は下記に。

目立つのはフィジカルセールスとルックアップ指標の乖離。ルックアップはパソコン等にCDをインポートした際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を指し、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数の推測が可能。邦楽のレンタル加算されるのは基本的に3週目以降でありそれまでルックアップがやや低くなりますが、しかしバランスを著しく欠く作品が少なくない状況です。

ルックアップはCD所有者およびレンタルによる接触者双方の取り込みによって生まれるため、アルバムチャート唯一の接触指標がこのルックアップとなります。このルックアップ指標のトップ10をみると、今年のヒット作品が見えてくるのではないでしょうか。それを踏まえれば、ストリーミングという他の接触指標も導入することでより社会的ヒット作品が上位進出し、また安定したチャートアクションと成るはずです。

 

ビルボードジャパンへのチャートポリシー変更希望、最後は【公開スケジュールとアナウンスの徹底】です。厳密にはチャートポリシー変更と異なるかもしれませんが、これも以前から申し上げていることです。

ビルボードにおいても毎週の速報発表に数時間の差が生じていることから、ビルボードジャパンの速報発表はまだ時間差が小さいとは言えます。それでも認知度上昇するためには定時発表を徹底し、且つ注目度を高めるべくイベント化が必要でしょう。たとえば夕方に発表し生配信でカウントダウンしたり(それをポッドキャスト化すれば別途録音する手間も省けます)、定時に記事もアップすれば注目度は俄然高まるはずです。

またビルボードジャパンは、公開後の訂正も少なくありません。その訂正自体を減らす意味でも、スタッフ総出で見直す時間は必要です。記事作成時になってミスが見つかることもあると考えれば、やはり定時発表を勧めます。

 

 

以上、3つの変更希望についてあらためて記載しました。チャートがより好いものになるべく、これら提案が議論されたならば幸いです。