イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

MUSIC AWARDS JAPANアイドル関連部門のノミネートから、ロングヒットの重要性がみえてくることについて

4月15日公開分のビルボードジャパンソングチャートを制した乃木坂46「最後に階段を駆け上がったのはいつだ?」がその2週後に総合100位圏外へ後退した際、次のように指摘しました。同曲はLINE MUSIC再生キャンペーン開催中にフィジカルセールス指標が加算され総合首位に立った一方、企画終了後に急落した形です。

乃木坂46「最後に階段を駆け上がったのはいつだ?」のみならず、週間チャート制覇という事実だけで"社会的ヒット"とみなすのは極めて難しいというのが、厳しくも私見です。

(中略)

これらを踏まえ、ビルボードジャパンには下半期の開始前に、所有指標群や再生キャンペーンに伴い所有指標的な動きをなぞるストリーミング、施策に用いられやすい一方で反動が大きいラジオといった指標群について、チャートポリシー(集計方法)を見直すかを議論することを願います。実際、このジャンルのMUSIC AWARDS JAPANにおけるノミネートからは週間単位以上にロングヒットの重要性がみえてくるゆえ、尚の事です。

上記リンク先の最後には、4月30日に発表されたMUSIC AWARDS JAPAN 2026のノミネートのうちアイドルおよびダンスボーカルグループ部門(一般投票部門除く)のノミネート一覧を掲載。その候補作品や歌手の音楽チャート動向をあらためて確認すると、投票メンバー(投票会員)がどのような意思に基づいて行動したかがみえてくると感じています。今回はアイドル関連の4部門に絞った形ですが、行動の背景を読みます。

 

<MUSIC AWARDS JAPAN 2026 アイドル関連部門におけるノミネートの特徴>

 

 

アイドル関連4部門 ノミネートにおけるビルボードジャパンのCHART insight

まずはMUSIC AWARDS JAPAN 2026におけるアイドル関連4部門(一般投票部門除く)の候補作品および歌手について、ビルボードジャパンソングチャートならびにトップアーティストチャートのCHART insightを掲載します。なおトップアーティストチャートは、ソングチャートとアルバムチャートを合算したものです。

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において100位まで表示

(100位まではCHART insight有料会員が確認可能なもので、無料会員が確認可能な20位未満の指標順位も明示されています。ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。)

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

・最優秀ボーイズアイドルカルチャー楽曲賞 (グループ/ソロ) ノミネート一覧

画像

(上記画像を貼付したMUSIC AWARDS JAPANによるポストはこちら)

 

(上記CHART insightにおける最終ランクイン週は2026年4月1日公開分)

(上記CHART insightにおける最終ランクイン週は2026年1月14日公開分)

 

・最優秀ガールズアイドルカルチャー楽曲賞 (グループ/ソロ) ノミネート一覧

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(上記画像を貼付したMUSIC AWARDS JAPANによるポストはこちら)

 

(上記CHART insightにおける最終ランクイン週は2026年4月22日公開分)

(上記CHART insightにおける最終ランクイン週は2026年3月11日公開分)

 

・最優秀ボーイズアイドルカルチャーアーティスト賞 (グループ/ソロ)

 ノミネート一覧

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(上記画像を貼付したMUSIC AWARDS JAPANによるポストはこちら)

 

・最優秀ガールズアイドルカルチャーアーティスト賞 (グループ/ソロ)

 ノミネート一覧

画像

(上記画像を貼付したMUSIC AWARDS JAPANによるポストはこちら)

 

 

MUSIC AWARDS JAPAN 2026の投票メンバー(投票会員)がどのような意思をベースに投票したかについては、一人ひとりに聞かない限りは分かりかねます。しかしながら今回のノミネート一覧をCHART insightで確認すると、みえてくるものがあります。

 

ノミネート作品/歌手の背景①:ロングヒットやバズの発生

ノミネート一覧には大きくふたつの傾向がみられます。ひとつは接触指標群のロングヒット、もうひとつはバズの発生であり、双方の条件を満たす場合も存在します。

 

接触指標群のロングヒットに関してですが、基本的にはストリーミング指標(CHART insightでは青で表示)が安定して強い作品や歌手が選ばれる傾向にあるといえます。またストリーミングと比例しやすい動画再生指標(赤)についてはアイドルのジャンルにおいて順位面でより高くなる傾向にあり、ストリーミングが低いとしても動画再生でロングヒットする場合はノミネートに至りやすいこともみえてきます。

 

一部例外として、DOMOTO「愛のかたまり」が挙げられます。音楽賞はノミネート(の前提となるエントリー)対象作品が2025年リリースであることが条件となります。改名前のKinKi Kids時代にリリースした曲を一部歌詞加筆の上でセルフカバーしたDOMOTO版は音楽チャート上で大きなヒットには至らずも、昨年5月5日のKinKi Kidsサブスク解禁に伴いオリジナル版がロングヒットしたことが投票メンバーを動かしたと推測可能です。

(表示は2025年3月5日公開分以降)

 

バズの発生に伴うノミネートとしてはAiScReam「愛♡スクリ~ム!」やJuice=Juice「盛れ!ミ・アモーレ」が挙げられると捉えています。一方でこれら作品はMUSIC AWARDS JAPAN 2026の集計期間(2025年1月27日~2026年2月22日)内に音楽チャート上で大きくヒットしたとは言えません。

「愛♡スクリ~ム!」は総合ソングチャート100位以内に達せず、「盛れ!ミ・アモーレ」は最高90位且つ100位以内登場2週となります。さらに双方はストリーミング指標も高くありません(前者は最高100位未満、後者は一度も300位以内に入らず未加点)。しかしながらメディアで採り上げられたことやそれに伴う露出増加がノミネートにつながったといえるのではないでしょうか。

 

接触指標群のロングヒット、そしてバズの発生が投票メンバーによる選出動機と仮定すれば、KAWAII LAB.所属歌手の歌手部門でのノミネートは自然といえるかもしれません。それでもトップアーティストチャートのストリーミング指標をみるとCANDY TUNE、CUTIE STREETおよびFRUITS ZIPPERの3組はいずれもこの指標が急落しています(FRUITS ZIPPERはその後再上昇)。

これはビルボードジャパンがソングおよびアルバムチャートにて、昨年度下半期初週にリカレントルールを導入したことが背景にあります。ロングヒット作品のストリーミング指標に(基となるチャートから指標化する際)減算処理を施すというもので、各歌手がブレイクするきっかけとなったロングヒット作品のルール適用が影響した形です。またその後に社会的ヒットが出ていると言い難いことも、CHART insightから読み取れます。

FRUITS ZIPPERにおいては「はちゃめちゃわちゃライフ!」の登場がその後のストリーミング指標再上昇につながっていますが、KAWAII LAB.所属各歌手のブレイク、そしてそれを機にKAWAII LAB.自体も注目されたことが投票行動の背景にあるといえそうです。その一方、たとえば坂道シリーズやAKBグループはストリーミングヒットを輩出したとは言い難く、結果としてアイドル関連部門の候補入りを果たせなかったものと考えます。

 

ノミネート作品/歌手の背景②:エントリー発表後のヒット

ブログではMUSIC AWARDS JAPAN 2026のノミネート発表翌日、主要部門(のうち4つ)について候補入りの背景を分析。そのうち最優秀楽曲賞に関して、『M!LK「好きすぎて滅!」候補入りから想起したオリヴィア・ディーンのグラミー受賞』という項目を用意しています。「好きすぎて滅!」は集計期間内のチャート結果は高くないものの、一次投票期間内におけるチャートではノミネート作品の中で最高位に立っています。

ここから想起したのが、今年のグラミー賞で最優秀新人賞を獲得したオリヴィア・ディーンです。米グラミー賞は2024年8月31日~2025年8月30日が作品や歌手のノミネート対象期間となり、2025年10月3~15日の投票を経て11月7日にノミネートが発表されています。

実はオリヴィア・ディーンによるアルバム『The Art Of Loving』は2025年9月26日のリリースであり、来年のグラミー賞対象作品となります。このアルバムは2025年10月11日付の米ビルボードソングチャートで8位に初登場した後ロングヒットを続け、また収録曲の「Man I Need」は同年11月1日付米ビルボードソングチャートで初のトップ10入りを果たしています。言い換えれば、米主要チャートにおけるオリヴィア・ディーンのトップ10入りは、今年のグラミー賞集計期間内には成されていないことになります。

一方、今年のグラミー賞のノミネートを決める投票期間内に、オリヴィア・ディーン『The Art Of Loving』のトップ10内初登場がアナウンスされています(現地時間の2025年10月5日に速報記事が発表)。およそ1年という対象期間内では大きくヒットしていなくとも、その後の投票期間中にヒットしたならば候補入り、そして受賞もあり得るということが、オリヴィア・ディーンの事例からみえてくるのではないかと捉えています。

エントリー一覧からノミネートを決める際、エントリー発表後の投票期間中におけるヒットも投票メンバーによる行動要因と考えます。このことは、集計期間内に新たな音源をリリースしていないため作品としてのエントリーはゼロながら、「Five」のヒットに伴い歌手部門にノミネートされた嵐にも当てはまるかもしれません(なお最優秀リバイバル楽曲賞には「Love so sweet」がノミネートされています)。

 

おわりに:アイドルがMUSIC AWARDS JAPANで受賞を目指すならば

投票メンバーによるMUSIC AWARDS JAPAN 2026アイドル関連部門の投票行動には、接触指標群のロングヒット、バズの発生、さらには集計期間やエントリー発表以降のヒットが背景にあるものと考えます。そして今回の候補入りは、(例外もありますが)主に音楽チャートでのロングヒットがベースにあるというのが私見です。

ノミネートの前提となるエントリーに入るための条件が音楽チャートへのランクインゆえ、ヒットがベースにあるということは当然と言われればそれまでです。しかし、総合100位以内未達の作品でもバズを契機に候補入りした一方で、最高位の面で上回る作品は多いながらそちらが選ばれなかったことを踏まえるに、音楽チャートにおいては瞬発力以上にロングヒットが重要に成るということがみえてくるのではないでしょうか。

この"ロングヒットの重要性"は弊ブログで随時お伝えしていることですが、投票メンバーという音楽関係者においても同じ考えにあることが読み取れます。アイドル運営側のみならずアイドルのコアファン、特に音楽チャートに意識的なファンダムにおいてこの考えが浸透し、ライト層やグレーゾーンにまで浸透する曲が生まれるならば、来年以降のノミネート選定はより白熱するものと期待します。