イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり)【ビルボードジャパン最新動向】2023年度の極端なチャートアクションを踏まえ、ビルボードジャパンに変更を提案する

(※追記(6月8日19時15分):本来、冒頭にて総合ソングチャートのツイートを掲載するところ、誤ってアニメソングチャートを貼付していたため、差替を実施しました。失礼いたしました。)

 

 

 

3月27日~4月2日を集計期間とする最新4月5日公開分のビルボードジャパンソングチャートは、TREASURE「Here I Stand」が100位以内再登場にて総合首位を獲得しました。

(上記はリリックビデオ。)

1月30日にショートバージョンが配信され2週に渡り100位以内に登場したTREASURE「Here I Stand」は今回、集計期間初日のデジタル解禁、およびフィジカルリリースに伴い総合首位を獲得しています。そのフィジカルセールスで「Here I Stand」の倍以上を売り上げた乃木坂46「人は夢を二度見る」に「Here I Stand」はデジタル指標群やラジオで勝り、総合で逆転した形です。

TREASURE「Here I Stand」はラジオ(上記CHART insightでは黄緑で表示)が強いこともさることながら、ストリーミング(青で表示)がポイントのおよそ4分の1を占めていることも特徴。これはLINE MUSIC再生キャンペーン開催に伴うもので、メンバー全員とのハイタッチ会については2000回以上再生した上位40名という基準が設けられています。ゆえにLINE MUSICと他のサブスクサービスとで極端な順位の乖離が生じています。

キャンペーンは4月11日までゆえ次週は急落する可能性は高くないとして、キャンペーン終了後に急落となればビルボードジャパンはLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲のストリーミング指標における取扱を厳格化する必要があると考えます。現在はキャンペーン採用曲のうちStreaming Songsチャートで首位を獲得した作品のみに係数処理が適用されていますが、それを採用曲全体に施すことが必要ではないでしょうか。

この提案は、本来ライト層を主体とした接触指標群のストリーミングにおいて所有指標的な動きがみられること、ビルボードジャパンがライト層のヒットこそ真の社会的ヒット曲という考え方ながら再生キャンペーンの動きはそれと矛盾していることを踏まえてのものです。そして今週、所有指標の極端な動向が好ましくない記録の樹立につながったこともあり、その点からもビルボードジャパンに対し提案を実施します。

 

その記録とは、前週総合首位を獲得したBiSH「Bye-Bye Show」の100位未満(300位圏内)への急落です。総合首位からの急落記録は2021年度最終週に首位を獲得したHey! Say! JUMP「Sing-along」以来となります。

この急落は前週予想できたことで、前週木曜のブログエントリーでは懸念を表明していました。

これまでも高いフィジカルセールスに伴い総合首位を獲得した曲の翌週における急落は目立っていたものの、ビルボードジャパンは真の社会的ヒット曲は何かを突き詰めその都度チャートポリシー(集計方法)変更を実施したことで、急落は目立たなくなりました。無論BiSHにおいては「Bye-Bye Show」がラストシングルであることも好セールスに寄与したとして、いずれ今回の事態が起こることは予想できたのではないでしょうか。

 

ビルボードジャパンソングチャートは米ビルボードのソングチャート(Hot 100)を基に作られていますが、その米ビルボードにおける首位からの急落記録はシックスナイン & ニッキー・ミナージュ「Trollz」の1→34位となっています(クリスマス関連曲を除く。詳しくは米ビルボードにおけるJIMIN『FACE』と「Like Crazy」の指標構成を注視、動向次第ではチャートポリシーの議論も必要(4月3日付)をご参照ください)。

日本の場合、今でもオリコン知名度ビルボードジャパンに勝っていると考えます。そのオリコンランキングは所有指標のみであることから(合算ランキングもありますがフィジカルセールスのウエイトが高く、フィジカルのみのランキングと似た性質を持ちます)、音楽チャートにおける急落は自然という見方が世間一般の共通認識かもしれません。しかしその認識をビルボードジャパンが踏襲する必要はないはずです。

 

首位曲の100位圏外への急落はインパクトがありながらも、トップ10に視野を拡げると2023年度だけで二桁もの作品がトップ10内初登場の翌週に100位圏外へと急落しています。Kep1er「I do! Do you?」については100位以内にもう1週ランクインしているものの、トップ10進出の翌週における急落は真の社会的ヒット曲とは呼べないと厳しくも断言します。

(そしてこの状況については、今回のBiSH「Bye-Bye Show」の事態が発生する前から問題提起する必要があったと反省しています。)

いずれの曲も総合トップ10入りの原動力はフィジカルセールス(CHART insightでは黄色で表示)であり、またトップ10入りした週はラジオ(黄緑)やダウンロード(紫)が加点されている曲もある一方、ストリーミングや動画再生(赤)はほぼすべての曲で見当たりません。ゆえにビルボードジャパンにおいては強くなく、真の社会的ヒット曲と成ったとは言い難いのです。

 

このような分析を踏まえ、ビルボードジャパンに以下の提案を行います。

<2023年度の極端なチャートアクションを踏まえたビルボードジャパンへの提案>

 

① チャートポリシーの変更

議論は急務でしょう。変更するならば遅くとも今年度第3四半期までに行う必要があると考えます。フィジカルセールス指標を廃止することはさすがに非現実的ですが、フィジカルセールス販売場所の減少等に伴い所有におけるコアファンとライト層の考え方や行動はますます乖離が生じていると思われます。ならば全体のウエイトを引き下げることを視野に入れていいでしょう。

なおフィジカルセールスのみならず、LINE MUSIC再生キャンペーン全採用曲のストリーミング指標におけるウエイト減少措置も講じることを願います。

 

接触指標群に強い作品が社会的ヒット曲であるという認識の徹底

ビルボードジャパンは先日オールタイムソングチャートを発表しました。その集計方法に個人的には違和感も記しましたが、チャートの内容からはロングヒット作品が上位に来ていることが解ります。

このオールタイムソングチャートを活用し、今のヒット曲とは長く愛される作品であることを周知徹底することができるはずです。ロングヒット曲とは接触指標群が強い作品であること、複数週の動向から真の社会的ヒット曲を判断することの重要性を伝え、それを多くの方が理解するようになれば、最終的にはフィジカルセールスにこだわる歌手側も接触指標群の獲得をこれまで以上に意識するようになるのではないでしょうか。

 

オリコン(との比較)からの脱却

先述したように、上位からの急落はオリコンのチャートアクションに慣れている方には自然なことだったりやむなしだと捉えられるかもしれません。しかし本来、より多くの方の支持を受ける曲はヒットの規模が急激に縮小することはありません。

ビルボードジャパンは①によりチャート上位進出曲の翌週における急落幅を縮小、②によりチャートの見方をより多くの方に伝えることで、オリコンのような動向をなぞらないチャート設計ができるでしょう。そしてそれは同時に、オリコンよりも優れているという比較対象(として用いること)からの脱却につながり、ビルボードジャパンが唯一最良のチャートという認識の形成にもつながるはずです。

 

 

1週でもトップ10入りすることは素晴らしいことです。しかし今回取り上げた曲においては、客観的なデータを踏まえればライト層に拡がっていないということが解ります。歌手側が活動をより長く続けるならば、ライト層の中からコアファンに昇華させファン層を拡大することが重要であり、ゆえにライト層獲得につながる接触指標群の拡充は必須なのです。

一部を除くジャニーズ事務所ハロー!プロジェクトの所属歌手等、サブスク未解禁歌手が解禁することは勿論必要ですが、そのためにはビルボードジャパンが①~③を徹底し、歌手側に対しサブスク解禁や接触指標群獲得が重要というという認識を高めさせなければならないでしょう。