イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

当初の発表にはなかった、ビルボードジャパンがソングチャートから2指標を廃止した理由…その後出しを憂慮する

気になったインタビューを紹介します。ビルボードジャパンは2023年度にソングチャートからルックアップおよびTwitterの2指標を廃止していますが、こちらのインタビュー後編ではその廃止について語られています。個人的には笑覧は難しいと考え、今回採り上げた次第です。

礒崎さん:ツイッターに関しても、ルックアップとは違ってデータを収集していくことはできたんですけれども、推し活としてのアーティストが非常に多くて。僕らはその推し活されていない楽曲とアーティスト名に実は着目していたりするんですけど、それが非常にわかりづらくなってしまって。各指標300位で足切りをするんですけれども、推し活の対象曲というのが非常に増えてしまって、僕らが拾いたいデータがこのルールでこぼれてしまうんですよ。なのでちょっとこれは厳しいかなってところでこの2指標を同時にやめようということにしました。

 

ーつまりチャート全体の信用度や精度が下がってしまう可能性があった、ということでしょうか?

 

礒崎さん:推し活の方々の楽曲の楽しみ方というのを決して否定するものではありません。 決して否定するものではないんですけれども、そればかりのチャートであるはずはないというか、音楽の楽しみ方は推し活だけではないです。というところを考えてバランスを取り直したっていうのが正確なところでしょうか。

このTwitter指標の廃止の理由、昨年10月のアナウンスの際には示されていませんでした。

またTwitter指標については、ラジオ以外でのメディア露出効果を図ることを目的として集計を開始したが、他指標で十分に効果が測れるようになったため、それぞれ集計を廃止する運びとなった。

ビルボードジャパンのホームページのリンクをはてなブログに貼付しようとしてもエラーとなるため、リンクが掲載されたツイートを貼付しています。

尤も廃止の理由として過度な推し活は予想されたことではあり、2指標廃止アナウンス直後のブログエントリーではビルボードジャパンの意図と推測可能なものとして記しました。そして同時に、ビルボードジャパンの発表を半ば邪推を混ぜ込む形で報じたメディアに対し警鐘を鳴らしています。

その後のビルボードジャパンの姿勢は、自分が懸念する方に歩調を合わせる印象を抱いています。元来”チャートハック”という言葉を多用するKAI-YOU側に協力的だったこともそうですが、ビルボードジャパンは今年1月の記事においても推し活への対策という姿勢を示していました。

また、2023年チャートからは、ルックアップ(パソコンによるCD音源の取り込み)の指標がデータ提供元の事情から廃止。ツイッターも廃止となる。ツイッターは熱心なファンによる意図的なツイートが原因の一つだった。「総合チャートに与える影響はさほど大きくない」(礒﨑氏)としているが、この変更には注目したい。

そして今回の日本出版貿易におけるインタビューは、下記ポッドキャストでも言及されているように礒崎誠二さんの話し言葉がほぼそのままの形で文字化され掲載されているということ。ゆえに尚の事、今回の発言はインタビューの真実味、Twitter指標廃止の意図を示すに十分と言えるでしょう。

ちなみに2月22日配信分の上記ポッドキャストのタイトル、”ストリーミング再生数が一番多いとヒット曲?”についても違和感を抱いていますが、この点は後述します。

 

日本出版貿易のインタビューから感じたのは、Twitter指標を廃止するという昨年10月のアナウンスの段階で、推し活を考慮した対策でもあることをなぜ言及しなかったのかということです。

自分はルックアップやTwitter指標については廃止も含めた検討が必要であり、それは過度な推し活対策として有効であるためとこれまで提案してきました。ともすれば一部のコアファンの方々から反発を招くかもしれませんが、データを用いて冷静に、そして堂々と主張の根拠を示せば納得していただけるはずと考え、記しています。

他方、ビルボードジャパンの姿勢は後出しジャンケンと呼べるものです。それが一部で邪推を生み、推し活を過度に否定する等表現に悪意が混じる記事やコラムが発信されてしまう理由となったのではと考えます。ビルボードジャパンが廃止アナウンスの段階でチャートポリシー(集計方法)変更の正式な理由を語っていれば、邪推は生まれにくかったのではないでしょうか。

 

推し活は当たり前に存在するものであることに加えて、海外の歌手はチャート施策を当然のように行っています。先週金曜にリリースされたザ・ウィークエンド「Die For You」におけるアリアナ・グランデ参加版はその一環です。

まずはチャート施策が当たり前に存在することを受け入れることが大切です。推し活自体は否定しないとしていますが、過度なものをNGとするならばそれが反映されにくい形に前もってチャートポリシーを変えることが重要だったのではないでしょうか。後出しジャンケンと捉えられかねない主張は、ビルボードジャパンが日本の主たる音楽チャートに君臨するために必要な信頼度を自ら損ねているように感じています。

 

最後に。先週公開のビルボードジャパンによるポッドキャストに対しては、まずタイトルの内容がチャート振り返り後の終盤数分間に語られた(だけの)ものだという点、そして2月22日公開分の音楽チャートで生まれた複数の記録について、まるでその記録の価値を損なわせかねないのではという点において、タイトルに違和感を覚えています。

最新2月22日公開分ビルボードジャパンソングチャートではBE:FIRST「Boom Boom Back」が首位に立ちました。ストリーミング指標ではLINE MUSIC再生キャンペーンも功を奏した形です。その指標ではOfficial髭男dism「Subtitle」が制し、史上最速でストリーミング3億回再生を突破しました。ともすれば最新ポッドキャストで示した姿勢が、これら記録の意味を濁してしまいかねないのではと感じています。

ビルボードジャパンに必要なのは迅速なチャートポリシー変更のみならず、複合指標によるチャートについて様々な見方を提示することだと考えます。ストリーミングだけがヒットではないとするならば尚の事ではないでしょうか。CHART insightを動画で紹介するだけでも理解度は大きく異なるはずであり、そのようなアイデアを前向きに実践する姿勢を示すことを願っています。

 

 

なお自分は先週水曜に公開されたポッドキャスト【かいだん】にて、ビルボードジャパンのチャートを語っています。その際2指標の廃止についても触れていますが、推し活が過度になったひとつの理由として、男性ダンスボーカルグループの地上波音楽番組における待遇差の問題を挙げています。エンタテインメント業界の問題を指摘して改善に至らせることは重要です。ビルボードジャパンの存在はそのメスの役割に成り得ると考えるゆえ、前向きな姿勢に成ることを願います。