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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】KinKi Kidsを抑え総合首位獲得、BE:FIRST「Scream」の指標構成を分析する

毎週木曜以降は、最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

最新8月3日公開分(8月8日付)ビルボードジャパンソングスチャートはフィジカル関連指標初加算のKinKi Kids「Amazing Love」を抑え、BE:FIRST「Scream」が初登場で首位を獲得しました。

BE:FIRST「Scream」はフィジカルシングル未リリースながら6指標のうちカラオケ以外の5指標がすべてトップ3入り、且つ3指標で首位に。動画再生指標は501万と高い水準になっていますが、これはミュージックビデオのみならずダンス関連動画も加算されたことに伴うもの。動画再生指標はISRC(国際標準レコーディングコード)を付番されたものであればバージョンの異なる動画も合算されます。

この複数動画投入は、フィジカルシングルとしてもリリースされた「Bye-Good-Bye」のデジタル先行リリース時も同様であり(【ビルボードジャパン最新動向】初登場首位獲得のBE:FIRST「Bye-Good-Bye」における強さと課題、そしてメディアへの提言(3月17日付)参照)、BE:FIRST側がチャート対策としてもきちんと施策を打っていることがよく解ります。

 

今回、BE:FIRST「Scream」はともすれば減点される可能性がありました。これはビルボードジャパンが今年度第2四半期に、LINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)適用曲がStreaming Songsチャートで首位を獲得した場合に他のサブスクサービスとの乖離を踏まえて個別係数を適用するようにチャートポリシーを変更したため。

ですが、このチャートポリシー変更は穴があると考えています。Streaming Songsチャートのストリーミング指標への指標化の際に係数処理が適用されるのはLINE MUSIC再生キャンペーンを採用して首位になった曲のみ。同チャート2位以下であれば、キャンペーンを用いていても指標化の際に個別係数が適用されません。この点については改善案も添えて、このブログで以前指摘しています。

最新ビルボードジャパンソングスチャートにおける集計期間前半3日間の速報値で、BE:FIRST「Scream」はStreaming Songsチャートで首位に立っていました(上記ツイート内リンク先参照)。これは同曲がLINE MUSIC再生キャンペーンを開催した影響が大きく、LINE MUSICでは一昨日までを期間とする週間チャートを制した一方、Spotifyではデイリー50位以下が続き、Apple Musicでは日曜までの1週間で93位となっていました。

仮にBE:FIRST「Scream」が週間でもStreaming Songsチャートを制したならば、ソングスチャートのストリーミング指標への指標化の際に係数処理が施されることになり、その場合はKinKi Kids「Amazing Love」との差が詰まったことでしょう。そのStreaming Songsチャートでは最終的に、速報値で2位だったTani Yuuki「W/X/Y」が逆転します。

BE:FIRST「Scream」のLINE MUSIC再生キャンペーン対象期間が最新8月3日公開分(8月8日付)ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間と完全一致のため、(沢山再生するほど当選回数はアップしますが)特典獲得の基準値をクリアした方がリピート再生から離れたことで集計期間後半の伸びが鈍化し、Tani Yuuki「W/X/Y」の逆転を生んだものと考えます。「Scream」は結果的に、係数処理の適用を免れた形です。

 

あくまで自分の知る範囲では、係数処理適用の可能性を懸念して再生回数を減らそうという動きはみられませんでしたが、しかし今後、BE:FIRSTに限らずLINE MUSIC再生キャンペーンを適用した歌手のコアファンがチャート上位を狙う場合に"首位を獲らせたいから再生回数を減らす"という矛盾した行為に至るではないかということが容易に想像できる気がします。ならば、現行のチャートポリシーはやはり穴があると考えます。

ビルボードジャパンはStreaming Songsチャート登場曲のうちLINE MUSIC再生キャンペーン適用曲のすべてに対し、ストリーミング指標化の際に係数を適用することを検討すべきと考えます。各曲への適用係数は、集計期間中のキャンペーン適用日数や他のサブスクサービスとの乖離によって異なるようにすべきかもしれませんが、ビルボードジャパンはまず現行のチャートポリシーについて分かりやすく掲示することを願います。

 

 

さて、今後の注目は「Scream」の次週の動向です。

今年度のビルボードジャパン週間ソングスチャートで首位を記録した曲の翌週の動向をみると、デジタルに強い曲とフィジカルのそれとでポイント前週比が大きく異なるのですが、LINE MUSIC再生キャンペーンを実施したBE:FIRST「Bye-Good-Bye」およびBTS「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」はポイント前週比5割台前半となり、中間といえます。「Scream」は少なくとも5割台をキープできるかが課題と考えます。

一方で今回の「Scream」首位獲得は、同曲をリード曲としたファーストアルバム『BE:1』に弾みを付けたと言えるでしょう。フジロックフェスティバルでのジョナス・ブルーへの客演参加およびYouTube配信や、一昨日はTHE STAR NEXTAGEでK-PopアクトのIVEと同じステージに立つ等、BE:FIRSTはコアファン以外への訴求も続けています。

SKY-HIさんの喜びのツイートからも、アルバム『BE:1』への意気込みが感じられます。地上波テレビ局の音楽番組出演が最良の訴求方法とも思いつつ、歌手側からの発信(ツイート)も効果を持つことは間違いないでしょう。そしてチャート制覇の喜びを語ることは、ビルボードジャパンの存在や意義の大きさを示すに十分なのです。