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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

THE FIRST TAKEに本日再登場のSixTONES、「Imitation Rain」の動向からデジタル解禁を考える

本日22時公開のTHE FIRST TAKEに、SixTONESが二度目の登場を果たします。

元日の初出演アナウンス、そして「Imitation Rain」の披露はTwitter上で大きな話題となりました。

THE FIRST TAKEは水曜と金曜に公開され、歌手は通常2回登場。1回目に代表曲、2回目に新曲を披露する傾向があります。また2回目の登場は1回目の3回後となります。SixTONESの場合、元日(土曜)出演やPUNPEE「フレンヅ」を挟んでの登場は異例と言えますが、THE FIRST TAKEが年末年始に特別編成を敷いていたと踏まえればこのタイミングでの2回目登場は自然な形です。

またSixTONESは自身のYouTubeチャンネルにて下記動画をアップ。THE FIRST TAKEへの意気込みも、よく解るのではないでしょうか。

 

さて、1回目出演後の反響はどうだったでしょう。ビルボードジャパンソングスチャートで「Imitation Rain」の動向をみてみます。

 

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上記はビルボードジャパンソングスチャートにおけるSixTONES「Imitation Rain」のCHART insight。1月2日までを集計期間とする最新1月5日公開分(1月10日付)の動向を示しています。

赤で表示される動画再生指標は53位に再登場。元日の土曜22時に公開されたTHE FIRST TAKEの最新ソングスチャートにおける集計対象時間は26時間にとどまるのですが、それでこの位置に登場したのですからチャンネルの影響力がよく解ります。

(ちなみにビルボードジャパンソングスチャートでは通常、リミックスや客演追加曲等オリジナル版と異なるバージョンは合算されません。一方で動画再生指標において、THE FIRST TAKEバージョンがオリジナル版に含まれています。この矛盾は個人的に解決しなければならない課題と捉えており、たとえばDISH//「猫」の社会的ヒットと年間ソングスチャートとのやや大きな乖離等を踏まえればすべて合算すべきと提言しています。)

「Imitation Rain」の動きではその他、Twitter(CHART insightでは水色で表示)の29位再登場も注目すべき点です。この指標はいわばビルボード対策としてコアなファンによるつぶやきが徹底された曲が上位にとどまる傾向にあるゆえ、「Imitation Rain」の29位は話題性の高さを感じるに十分です。なお同指標は昨年度第4四半期にウエイトが減少しており、個人的にはビルボードジャパンのチャートポリシー変更を支持しています*1

 

一方で気になる動向が。CHART insightにおける円グラフは最新週においてソングスチャートを構成する8指標のポイント比率を指します。SixTONES「Imitation Rain」はフィジカルセールス(黄色)、ルックアップ(オレンジ)、Twitterおよび動画再生の4つの指標で構成されており、言い換えればダウンロード(紫)、ストリーミング(青)、ラジオ(黄緑)そしてカラオケ(緑)は加点されていません。

そしてやはり、SixTONES自体がデジタル解禁するのかが気になります。

(中略)

また、THE FIRST TAKEはサブスク聴取やミュージックビデオの視聴、ダウンロードの所有といったデジタルコンテンツの遷移につながります。これは様々な動画のビルボードジャパンソングスチャートにおけるアクションをみれば明らかですが、SixTONESはデジタル解禁がない限り「Imitation Rain」や、おそらくもう一本配信されるであろう曲においても、複合指標に基づくチャートでの上昇は他の歌手の作品より厳しいでしょう。

THE FIRST TAKE動画は人気の差こそあれ、多くの曲が投稿週において動画再生指標を伸ばします。そしてその人気がひときわ高い曲においては他指標への遷移もみられます。その一例を挙げてみましょう。

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2021年4月2日金曜に公開されたのがDa-iCECITRUS」。この曲については、昨年日本レコード大賞を受賞した翌日にも紹介しています。

この「CITRUS」が現在に至るまでヒットを続けていることは、CHART insightにおける総合順位(黒で表示)から判りますが、このきっかけとなったのがTHE FIRST TAKEの出演でした。

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上記CHART insightは「CITRUS」のTHE FIRST TAKE公開前後11週分をクローズアップしたもの。28週に該当するところがTHE FIRST TAKE動画が初加算された2021年4月7日公開分(4月12日付)となり、動画再生指標は前週の100位未満(300位圏内)から33位に躍進しています。そしてダウンロードが300位圏外から76位に返り咲いたことも特筆すべき現象です。

ストリーミングについてはTHE FIRST TAKE動画の加算直前にひとつの山が生まれていますが、これはLINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)の影響に基づくもの(キャンペーンの詳細はこちら)。キャンペーン終了のタイミングでこの指標が急落するのはキャンペーンがコアなファンの域を出ていないということであり、一方でTHE FIRST TAKE後には同指標が徐々に上昇且つ安定し、ロングヒットを支えているのです。

 

 

一般的に、メディア(特にテレビ)での露出はダウンロードの目立った上昇、そしてストリーミングや動画再生といった接触指標群の緩やかながらも確実な上昇に表れます。これは昨年の『NHK紅白歌合戦』でもはっきり示されました。

THE FIRST TAKEはYouTubeチャンネルであるため、メディア露出以上に動画再生指標の上昇につながります。その上でダウンロードや、サブスク再生回数を基とするストリーミングにも勢いが波及するのです。

 

ならばやはり、デジタル未解禁のSixTONESにおいては機会損失が生じていると言えるかもしれません。尤も今回はニューアルバム『CITY』リリースタイミングでの出演であり、その訴求も出演の大きな要因ではあるでしょう(なおTHE FIRST TAKE出演が新作リリースに重なることは、多くの歌手にみられる傾向です)。

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「Imitation Rain」が収録されたアルバム『1ST』は、最新1月5日公開分(1月10日付)ビルボードジャパンアルバムチャートにおいて78→35位に上昇しています。フィジカルセールスが90→34位、ルックアップが18→14位となっていますが、アルバムチャートはこれらのほか、ダウンロードも構成指標のひとつ。デジタル解禁されていたならば、『1ST』がさらに大きく伸びたことは想像に難くありません。

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デジタル解禁がアルバムチャートをさらに押し上げる例が、最新1月5日公開分(1月10日付)における藤井風『HELP EVER HURT NEVER』。『NHK紅白歌合戦』効果に伴いフィジカルセールスが81→14位、ルックアップが42→22位、そしてダウンロードが33→4位となり、3指標中ダウンロードが最も高い順位となっています。総合トップ10返り咲き(63→8位)はダウンロードの影響も大きいと言えるのです。

 

 

多くのジャニーズ事務所所属歌手は未だデジタル解禁に至っておらず、話題になった曲がダウンロード等デジタル指標群に反映されにくいことが解ります。一方で、昨年の東京オリンピックおよびパラリンピックのタイミングで嵐「カイト」が最高25位に再浮上を果たしましたが(下記ブログエントリー解説分の翌週に到達)、これはデジタルをきちんと解禁しているゆえ。この経験が後輩歌手に活かされてほしいと思います。

デジタルには基本的に廃盤という概念がなく、いつでも手にすることができます。デジタル解禁がフィジカルセールスに影響があったとしても軽微ではないかと考えており、また継続的に利益が入るならばデジタル解禁のメリットは大きいはずです。またメディア露出やTHE FIRST TAKE出演はフィジカルセールスにも影響を及ぼすため、デジタル解禁とフィジカルリリースの双方を行っているならばその影響度はより高まるでしょう。

 

本日、最新のビルボードジャパンソングスチャート(1月12日公開分(1月17日付))が発表されます。「Imitation Rain」のTHE FIRST TAKEバージョンが初の1週間フル加算となる最新チャートで、総合100位以内に入るかに注目しましょう。