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ジャニーズ曲のサブスク解禁待望論が登場…SixTONESによるTHE FIRST TAKEのチャート動向からこの論を後押しする

昨日、突如としてジャニーズ事務所所属歌手のサブスク解禁待望論がSNSに沸き上がりました。待望論登場の理由は下記ツイートで紹介していますが、このサブスク解禁待望論は幾度となくこのブログで申し上げていることです。たとえば昨年度におけるジャニーズ関連曲のビルボードジャパンソングスチャートでの動向からは、デジタルに明るくなることの重要性がよく解ります。

また、嵐「カイト」がリリースから1年経過した昨年夏に再浮上を果たしたのは、同曲がサブスク等デジタル解禁に至ったゆえです。下記ブログエントリー記載直後、「カイト」はビルボードジャパンソングスチャートで25位まで上昇しています。

デジタル解禁の重要性を語る意味では、それが解禁されていたならば尚の事上昇できたであろう作品についても触れなければなりません。そのひとつが上記ツイートで紹介したなにわ男子「初心LOVE」ですが、今年THE FIRST TAKEで話題となったSixTONESについても同様でしょう。

 

SixTONESジャニーズ事務所所属歌手で初めてTHE FIRST TAKEに登場し、元日はデビュー曲でアルバム『1ST』に収録された「Imitation Rain」を、12日には今月リリースのアルバム『CITY』から「Everlasting」を披露しています。

 

このTHE FIRST TAKEがビルボードジャパンソングスチャート、そして音楽業界全体に与える影響は非常に大きなものとなっています。

一昨日のブログエントリーではSaucy Dog「シンデレラボーイ」について紹介しましたが、ボーカルを務める石原慎也さんは昨年10月中旬にTHE FIRST TAKEに登場。披露曲は「シンデレラボーイ」ではないのですが(「いつか」のTHE FIRST TAKE ver.はこちら)、このチャンネル出演が歌手の知名度向上につながり「シンデレラボーイ」のチャートアクションにも寄与したことはCHART insight(チャート推移)から明らかと言えます。

上記ブログエントリーは「Everlasting」がTHE FIRST TAKEで披露された日にアップしたものですが、そこではDa-iCEが「CITRUS」の同チャンネル披露でブレイクに至った旨も説明しました。また「Imitation Rain」披露直後の1月5日公開分(1月10日付)におけるCHART insightも紹介しています。あれから2週が経過していますが、披露曲はチャートでどう動いたでしょう。

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(「Imitation Rain」については、上記が初のチャートイン以降を、下記が直近11週分を示しています。)

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ビルボードジャパンソングスチャートは8指標で構成されていますが、特筆すべきはCHART insightで赤にて示される動画再生指標の高さ。「Imitation Rain」はTHE FIRST TAKE効果で100位以内に再登場するとその後は2週連続で上昇、また「Everlasting」は最新1月19日公開分(1月24日付)において8位に初登場を果たしています。しかしながらこの2曲共、総合ソングスチャートで100位以内ランクインを果たせませんでした。

(上記は「Rosy」のショートバージョンとなります。)

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ちなみに、アルバム『CITY』のリード曲は「Rosy」となりますが、同曲は最新1月19日公開分(1月24日付)において65位にランクイン。動画再生も好調ですが、「Rosy」の好調を支えるのは黄緑で示されるラジオ指標。ただこの指標は急落する傾向にあるため、同指標の急落に沿って総合ソングスチャートでも早々に100位を割り込む可能性が高いと言えます。

 

 

THE FIRST TAKEへの登場は、メディア露出以上に動画再生指標の上昇につながり*1、その上でダウンロードや、サブスク再生回数を基とするストリーミングにも勢いが波及していきます。「Imitation Rain」や「Everlasting」については他の歌手の出演時以上に動画再生指標が跳ねたと言える一方、総合ソングスチャートでは盛り上がりに欠けていると言わざるを得ません。

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上記は最新1月19日公開分(1月24日付)ソングスチャートのCHART insightにおいて、動画再生およびストリーミング(青で表示)、それぞれの指標のトップ10を示したもの。これをみると、動画再生とストリーミングというふたつの接触指標は順位が近く、密接にリンクしていることが解ります。だからこそ「Everlasting」や、なにわ男子「初心LOVE」のサブスク未解禁に伴うストリーミング指標の強くなさが大きく響きます。

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これは最新ソングスチャートにおける総合トップ10からも明らか。フィジカルセールス(上記CHART insightでは黄色で表示)を初登場で制したBLACK IRIS「Head Shot」(総合10位)の他指標100位未満、およびAimer「朝が来る」(総合6位)のストリーミング100位という状況は、共に今回初登場したゆえと言えます。それ以外の作品は、ロングヒットやこの1ヶ月強で上位進出した曲のどちらにおいても、接触指標群の強さが際立つのです。

 

TikTok等の短尺版に限らず、動画の人気はストリーミング等他指標へ遷移していきます。特にTHE FIRST TAKEへの登場は、その動画自体が総合ソングスチャートに合算されチャートにダイレクトに反映されるのみならず、披露曲やその歌手の他の作品をストリーミングで聴く流れがより大きくなると言えます。だからこそ、SixTONESがサブスク等デジタル未解禁なのは機会損失であり、今回はっきりとチャートに表れた形です。

 

 

一方、今回のTHE FIRST TAKE登場でアルバムへの注目度が上昇していると言えなくはありません。

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SixTONESのファーストアルバム『1ST』は、収録曲「Imitation Rain」がTHE FIRST TAKEに登場した日を集計期間に含む1月5日公開分(1月10日付)ビルボードジャパンアルバムチャートにて総合78→35位に再浮上。その後19→22位と推移しています。特にルックアップ*2の勢いが増しており、14→5→5位と推移しています。

またセカンドアルバム『CITY』は最新1月19日公開分(1月24日付)までに、472954→38890枚と推移。レンタル解禁に伴うルックアップは次回公開分より加算されるため、レンタル解禁前の段階でルックアップ2連覇を果たしています。

『1ST』のフィジカルセールスは初週が472080枚(2021年1月13日公開分)を記録し、続いて37048→14161枚と推移。2週目までの売上は『CITY』が上回っていますが、大きく上昇しているわけではありません。また『1ST』は直近3週のセールスが796→1887→1610枚と推移していますが、THE FIRST TAKE出演のみならず『CITY』リリース効果とも考えられ、チャンネル出演の影響とは断言できないかもしれません。

 

仮にダウンロード販売が行われていたならば『CITY』や『1ST』がアルバムチャートで、また「Imitation Rain」や「Everlasting」等楽曲単位においても、さらなる勢いにつながったものと考えます。また『1ST』のルックアップ上昇がレンタルに因るものも大きいと考えれば、同じく接触手段に該当するサブスクを解禁していれば「Imitation Rain」等がストリーミング指標上昇につながったものと考えるのが自然でしょう。

 

 

ジャニーズ事務所所属歌手の作品をデジタルできちんと解禁してほしいと願う理由は、このようなチャートアクションの勿体なさを強く感じるゆえです。アイドルの場合はフィジカルがグッズ的な側面(意味)をより大きく持つこともあり、デジタル解禁してもフィジカルセールスが極度に下がることはないでしょう。また先述した嵐「カイト」のように、廃盤の概念がないデジタルは旧曲の注目度上昇に伴い利益を上げられるのです。

ジャニーズ事務所のみならず、たとえば一昨日『ラヴィット!』(TBS)の影響でトレンド入りした太陽とシスコムーンを擁するハロー!プロジェクト等、サブスク未解禁歌手側の意識の改革を強く求めます。ジャニーズファンからも昨日サブスク解禁を求める声が散見されたことを踏まえれば、尚の事です。話題になったタイミングで気軽にチェックできる環境が歌手側から提供されていないことは機会損失と言えます。

 

最後に、THE FIRST TAKEに対してもデジタル未解禁歌手を採り上げたことの理由が気になります。デジタル未解禁ゆえサブスク等に遷移できないことやTHE FIRST TAKEバージョンとして音源をリリースできないであろう問題もさることながら、何よりも外国からのアクセスが多いチャンネルにおいて、日本の音楽業界の事情を知らないためにデジタル未解禁という状況にただただ愕然とする外国人の方は少なくないはずです。

デジタルに明るくない歌手を登場に至らせたことは、ともすればTHE FIRST TAKEが自らの高いブランド力に自ずと傷をつけるものになりかねないのではないでしょうか。話題性は必要ですが、ブランドそしてプライドについて尋ねてみたいと強く感じています。

*1:尤も、本来オリジナルバージョンと異なる音源はビルボードジャパンにおいて合算対象外となるのですが、それが合算され続けていることには疑問を覚えるゆえ、一度きちんと合算基準(チャートポリシー)を発表することをビルボードジャパンに対し強く求めます。

*2:ルックアップとはCDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を指し、実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル数の推測を可能とします。