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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新ソングスチャートからみえてくるKing & Prince「ツキヨミ」の動向、そしてさらなる支持獲得に必要なこと

最新11月23日公開分(11月28日付)ビルボードジャパンソングスチャートではOfficial髭男dism「Subtitle」が首位に返り咲きを果たし、なにわ男子「ハッピーサプライズ」は2位発進となったことについては昨日のブログエントリーでお伝えしました。

そのOfficial髭男dism「Subtitle」を前週破ったKing & Prince「ツキヨミ」は、最新のビルボードジャパンソングスチャートで7位に後退。フィジカル関連指標加算2週目でありデジタル未解禁ゆえダウンは免れなかったものの、しかし興味深い傾向がいくつかみられます。

上記CHART insightからみえてくる興味深い傾向、そのひとつが赤で表示される動画再生指標。前週の3位から、5週ぶりの首位返り咲きを果たしています。

(上記はショートバージョン。)

前週首位のKing & Prince「ツキヨミ」は、総合7位にランクダウン。それでも動画1位、ルックアップとTwitterは2位、シングル4位、ラジオ53位と、各指標で好調を維持している。特に動画指標は初登場1位→5位→5位→4位→3位→当週1位と粘り強く、当週では3,957,470再生と、当楽曲の週間再生最高値をマークした。

このタイミングで週間再生回数が最高に達すること自体珍しいと言えます。またCHART insightにおいて緑で表示されるカラオケが今週初めて加点されている(100位未満ながら300位圏内に初登場した)ことは、曲の人気を示すに十分と言えるでしょう。

 

フィジカルセールス加算2週目における動画再生指標の上昇、そしてカラオケ指標の加点がジャニーズ事務所所属歌手の作品(以下”ジャニーズ曲”と表記)の中で如何に特筆すべきことかについては、2022年度ビルボードジャパンソングスチャートでフィジカルセールスが初加算された曲の動向からも明らかです。なお下記表ではデジタルリリース曲のうち初週総合トップ10入りを果たしたTravis JapanJUST DANCE!」も含めています。

フィジカル関連指標加算2週目において動画再生指標が首位を獲得したジャニーズ曲はSnow Manブラザービート」、なにわ男子「The Answer」およびKing & Prince「ツキヨミ」のみ。「ブラザービート」はミュージックビデオがフルバージョンでアップされ、「The Answer」はフィジカル発売の翌週にダンスバージョンがフルバージョンでアップされたことが影響していますが、「ツキヨミ」はショートバージョンのみです。

(なお、なにわ男子「The Answer」は11月25日5時30分の段階で、ショートバージョンでアップされたミュージックビデオ(→こちら)の再生回数が1856万回に対し、ダンスバージョンは2760万回となっています。フルバージョンのニーズの高さは、後述するサブスク解禁の必要性を示すに十分と考えます。)

またジャニーズ曲におけるフィジカル関連指標加算2週目におけるカラオケ指標ランクインはSnow Manブラザービート」、SixTONES「わたし」そしてKing & Prince「ツキヨミ」のみ。前年度はなにわ男子「初心LOVE」がこのタイミングでカラオケ指標72位に入っており、今年度の3曲はそこまでの勢いがみられないながらも一般に浸透していると言えるでしょう。なお3曲とも映像作品の主題歌もしくは挿入歌となります。

(上記はショートバージョン。)

 

おそらく2022年度を代表するジャニーズ曲を広く投票してもらう企画があるならば、Snow Manブラザービート」やSixTONES「わたし」、なにわ男子「The Answer」はその筆頭に挙げられることでしょう。そしてその中にKing & Prince「ツキヨミ」が入ったと言えるかもしれません。

加えて「ツキヨミ」は、フィジカル関連指標加算2週目でビルボードジャパンソングスチャートの総合トップ10内をキープ。2022年度のジャニーズ曲では「ブラザービート」、「The Answer」、Snow Man「オレンジkiss」に続く4曲目となります。加えて「ツキヨミ」のポイント前週比36.6%は「オレンジkiss」(37.9%)に次ぐ今年度ジャニーズ曲2番目の高さとなっていることも注目すべきです。

 

「ツキヨミ」はKing & Princeがメンバー脱退を発表した翌週にリリースされたこともあってか、前作「TraceTrace」を10万枚以上上回る614,173枚を初週で売り上げています。一方でフィジカル関連指標加算2週目は「TraceTrace」と売上枚数がさほど変わらないため、他指標が強くなければポイント下落幅は大きくなるものと考えられました。ゆえに「ツキヨミ」では、特に動画再生指標の強さがトップ10キープの要因となっています。

コアファンの間でビルボードジャパンを意識した活動が行われていたかは分かりかねますが、YouTubeは1ユーザーが1日に何回再生してもそのすべてが加算されるわけではありません。それでもコアファンの方々が再生する習慣はあったと思われますし、カラオケ指標の加点を踏まえれば「ツキヨミ」が主題歌となったドラマ『クロサギ』(TBS)のファンでKing & Princeのライト層による支持が少なくないことも想起できるでしょう。

 

 

惜しむらくはデジタル未解禁、特にサブスクが解禁されていないゆえポイント下落幅が大きく、順位も下がるということ。大ヒット曲はポイント下落幅を1割前後に抑える傾向にあり、フィジカル加算2週目であってもデジタルが強いならばポイント下落幅が小さくなることは今年度のビルボードジャパンソングスチャート首位獲得曲一覧からも解るはずです。「ツキヨミ」はあくまでジャニーズ曲として強い、とも言えます。

11月16日公開分(11月21日付)ビルボードジャパンソングスチャート、フィジカルセールス指標の基となるTop Singles SalesチャートではKing & Princeの11枚のシングルすべてが登場。「ツキヨミ」以外は順位が上昇もしくは100位以内に再登場しており、デジタルを解禁していればビルボードジャパン総合ソングスチャートでも明らかに存在感を示せたはずです。これはチャート予想等を行う紅蓮・疾風さんも指摘されています。

 

デジタルの解禁は何かあった際に、それがコアファンにとっては悲しい出来事であっても曲のフックアップにつながります。ライト層にとってもハードルの高いフィジカル購入ではなく動画やサブスクでの接触を可能とし、複合指標から成るビルボードジャパンソングスチャートに反映されるのです。そしてデジタルの解禁は、King & Princeのこれまでの足跡をきちんとアーカイブするという意味も持ち合わせています。

King & Princeコアファンによるフィジカル購入でのサポートは素晴らしいことです。一方で今作「ツキヨミ」での動画再生やカラオケ指標、ポイント前週比等に伴うライト層需要の可視化を踏まえれば、ライト層を拡げコアファンに昇華させるべくデジタル解禁をジャニーズ事務所側に願い、進言するほうがより好いというのが私見です。難しいことは覚悟の上で、事務所側に対し冷静客観的な視点を持ち説得することを願います。