ビルボードジャパンは今週月曜、下半期初週のソングチャートおよびアルバムチャートから”リカレントルール”を適用するとアナウンスしました。
今回導入するリカレントルールでは、日本独自のマーケットバランスを考慮し、対象曲のストリーミングポイントを一定の割合で減算する。<Hot 100>においての対象は通算52週チャートインした楽曲、<Hot Albums>は通算26週チャートインした楽曲を対象とする。
Billboard JAPANチャート、リカレントルールを2025年度下半期チャートより導入https://t.co/jwsAorQU9Z
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年6月2日
この新ルール適用について、弊ブログでは上記アナウンスを踏まえて採り上げ((追記あり) ビルボードジャパンが下半期よりリカレントルールを導入へ…現時点での私見を記す(6月2日付)参照)、翌日にはRealSoundへコラムを寄稿しています。
ビルボードジャパンが昨日公開したリカレントルール初適用のソングチャートについてはこのブログで紹介しています。
今回は、本日発表されたアルバムチャートについて紹介します。
ビルボードジャパンアルバムチャートは昨年最終週よりストリーミング指標を導入。それまで所有2指標で構成し、ダウンロードの縮小に伴いフィジカルセールスの影響力が大きかったこのチャートが、指標追加に伴い大きく変化しています((追記あり) ストリーミングを導入したビルボードジャパンアルバムチャート、リニューアル初回の動向は(2024年12月26日付)参照)。明日発表の上半期チャートでも変化が見て取れるでしょう。
(なおビルボードジャパン上半期チャートについては、このブログにて明日7時に分析内容を公開予定です。)
そして下半期初週より、通算26週チャートインした作品に減算処理が施されることになりました。このリカレントルールを適用する前後での総合トップ10は以下のとおり。
・5月28日公開分 ビルボードジャパンアルバムチャート
・6月4日公開分 ビルボードジャパンアルバムチャート
ストリーミング指標が上位進出に欠かせないこと自体は変わらないながら、26週以上在籍していたMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』は総合4→6位、ストリーミング指標では2→5位に後退しています。また前週トップ10入りしていたVaundy『strobo』(総合8位/ストリーミング指標6位)および『replica』(9位/7位)、Number_i『No.I』(10位/8位)はいずれも、総合トップ10内から姿を消しています。
では、ストリーミング指標の動向はどうなったでしょう。そこで2025年度第2四半期および第3四半期(後者は当週のみ)のビルボードジャパンアルバムチャート、ストリーミング指標における1~20位および21~50位の一覧表を掲載します。第2四半期最終週および第3四半期初週(当週)においては、総合順位を併記しています。
(なお、総合および各指標21位以下についてはCHART insight有料会員のみが確認可能です。ビルボードジャパンはデータの掲載を可能としています。)
表では第2四半期最終週(前週)の段階で総合アルバムチャートに26週以上ランクインした作品を青で表示、また第3四半期初週(当週)において総合アルバムチャートランクイン数が26週目となった作品を水色で表示しています。
これをみると、ストリーミング指標50位以内にランクインした26週以上ランクイン作品の数は前週のおよそ3分の1に減少していることが解ります。それに伴い上昇する作品が登場し、新陳代謝が生じているといえます。
他方、気になる点がふたつあり、ビルボードジャパンへ提案します。
ひとつは、当週において総合アルバムチャート26週目となるランクイン作品について。リカレントルール紹介記事では対象作品が『通算26週チャートイン』と書かれており、ランクイン26週目の作品が減算処理されると読み取ることが可能です。また『通算26週チャートインした楽曲を対象』とありますが、これは楽曲ではなくアルバムのことではと捉えています。誤解を招きにくい文章にて、記事を今一度発信するよう願います。
そしてもうひとつは、減算処理適用前のチャートが用意されていないこと。ソングチャートのストリーミング指標はStreaming Songsチャートに基づき、減算処理前における実際の人気曲が可視化されていますが、アルバムチャートにおいてはStreaming Albumsチャートが存在せず、減算前の状況、つまり実際に聴かれているアルバム順がみえてきません。ストリーミング指標追加段階から述べている提案内容を、今一度記します。
さて、ソングチャートおよびアルバムチャートのストリーミング指標がリカレントルールに伴う減算処理を適用されたことで、ふたつのチャートを合算するトップアーティストチャート(Artist 100)にも影響が生じています。
Mrs. GREEN APPLEはこのトップアーティストチャートで2025年度は1週を除き首位をキープしていましたが、当週はアルバムチャートを制したSEVENTEENが勝った形です。それでも、Mrs. GREEN APPLEは引き続きストリーミング指標を制しています。
そして重要なのは、当週のトップアーティストチャートでトップ10入りした歌手がすべて、ストリーミング指標でも10位以内に入っているということです。ロングヒット作品が厳しい状況となったビルボードジャパンのチャートですが、それでもやはりストリーミング指標の充実がアーティストパワーの増加に欠かせないということがよく解るのです。
最後に。今回のアルバムチャートやトップアーティストチャートも踏まえ、本日午後にポッドキャスト【Billboard Top Hits (#ポッドチャート)】を公開しています。是非チェックしてください。