3月まで記載していたこちらのエントリーを、内容を少しリニューアルした上で夏以降再開しています。先週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と位置付けています。週間単位で上位に入ることも素晴らしいですが、他方で所有指標が強い曲は加算2週目、また所有指標的な接触指標をなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が急落し、総合でも大きくダウンすることが少なくありません。
急落傾向はここ最近、特に目立っています。ソングチャートのトップ10は5曲近くが毎週入れ替わり、ロングヒットする(その可能性を持ち合わせている)かそうでないかが極端に分かれる状況です。ロングヒット曲は主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標が強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しいといえます。
ゆえにこのブログエントリーでは上記提案をビルボードジャパンに対して行っていますが、すぐに叶うことはないかもしれません。ならば、あくまで自分なりであると前置きしつつ、チャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー復活の理由です。
<2024年9月11日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
最新週における指標毎のポイント構成
(CHART insight改定以降は累計ポイントにおける構成比に変更した、とビルボードジャパンは説明しています。)
・ME:I「Hi-Five」
9月4日公開分 1位→9月11日公開分 26位
・なにわ男子「コイスルヒカリ」
9月4日公開分 2位→9月11日公開分 29位
・≠ME「夏が来たから」
9月4日公開分 4位→9月11日公開分 100位未満(300位圏内)
・つばきファクトリー「ベイビースパイダー」
9月4日公開分 5位→9月11日公開分 100位未満(300位圏内)
・NGT48「一瞬の花火」
9月4日公開分 9位→9月11日公開分 100位未満(300位圏内)
当週におけるストリーミング等動向表はこちら。
前週はフィジカルセールス7万2千枚以上を売り上げた5曲が総合10位以内に初めて登場したものの、当週は3曲が100位圏外、2曲が20位未満となっています。
瞬発的な上位進出も好いことながら、ロングヒットし年間チャートに登場する曲が真の社会的ヒット作品と位置付けており、後者はいずれもストリーミング指標が上位で安定しています。デジタルに強くない曲がフィジカルセールス指標をほぼ牽引材料として上位に進出しても急落する状況が続くならば、ビルボードジャパンがフィジカルセールス指標のウエイトを見直すことは急務だと考えます。
そのような中、なにわ男子「コイスルヒカリ」に注目しています。当週29位に後退していますが、フィジカルセールス指標加算2週目における総合順位はここ最近の作品では高いほうであり、これまでの同指標加算対象曲では「初心LOVE」が1→1位、「The Answer」が1→6位、「ハッピーサプライズ」が2→17位、「Special Kiss」が2→34位、「Make Up Day」が5→70位、「I Wish」が2→60位と推移しています。
上記は直近のフィジカルシングル3曲(ダブルAサイドについてはフィジカルセールス指標が加算される作品)における、フィジカルセールス指標加算2週連続のCHART insight。STARTO ENTERTAINMENT所属歌手の作品はこの指標が大きいのですが、「コイスルヒカリ」は前2曲より初週、2週目共に上回っています(「Make Up Day」は390,702→16,616枚、「I Wish」は395,721→14,370枚、「コイスルヒカリ」は432,017→27,271枚)。
そして「コイスルヒカリ」は、なにわ男子のフィジカルシングル表題曲としてはじめてデジタルも解禁。ストリーミングは300位以内に入らず加点されていませんが、ダウンロードについては割合こそ大きくないものの加点対象に。これも当週のポイント上昇に寄与したといっていいでしょう。
フィジカルセールス指標加算2週目に29位を記録した「コイスルヒカリ」については、初期リリースのシングルと比べれば順位自体は高くありません。一方で、デジタルをフィジカルと同時解禁した曲にてフィジカルセールスが上昇しているのは重要なポイントであり、”デジタルがフィジカルを凌駕する”という考えを持つ方には再考するきっかけと成るでしょう。
(なおフィジカルセールスはリリースの種類や封入する特典、タイアップ先の作品の評判等に伴い、売上が数万枚単位で変わります。ゆえに減少することもあるという状況ですが、それをバッシングの目的に用いるメディアや一部市井に対しては異を唱えます。)
一方で、これはなにわ男子に限らないことですが、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手のデジタルリリースにおいてはその訴求方法が強くない、施策が巧くないと感じることは少なくありません。この点は改善が必須だと感じています。