本日1本目に公開したブログエントリーでは、なにわ男子「コイスルヒカリ」をメインに採り上げました。トップ10内をキープできなかったもののデジタル解禁がプラスに作用しているというのが紹介した理由ですが、一方でストリーミング指標の未加算を踏まえ、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品のデジタル訴求は上手くないのではとも記しました。
このデジタル訴求に関連して、今回Snow Man「EMPIRE」を採り上げます。この曲、そしてSnow Man自体そもそもデジタルを解禁していないのですが、仮に解禁していたならばデジタルのみでの総合トップ10入りも有り得たかもしれません。
Snow Man「EMPIRE」は10月30日リリースのアルバム『RAYS』からのリード曲。8月28日公開分のビルボードジャパンソングチャートで総合47位に初登場を果たし、翌週も95位にランクインしています。当週は総合100位以内から脱落しましたが、これは動画視聴者の多さにほかなりません。3週とも動画再生指標のみで総合チャートにランクインしていますが、この指標のみでの100位以内到達は珍しいことです。
上記は最新9月11日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおけるSnow Man「EMPIRE」のCHART insight、そして下記は「EMPIRE」が初登場した8月28日公開分ソングチャートでの動画再生指標のトップ5。動画再生指標はストリーミングと比例する傾向があり、仮に「EMPIRE」がNumber_i「INZM」と同じくらいのストリーミング指標を獲得したならば、「EMPIRE」はトップ10目前に迫った可能性が考えられるのです。
(8月28日公開分ビルボードジャパンソングチャート(→こちら)にてNumber_i「INZM」はポイント全体のおよそ2割をストリーミング指標で獲得しています(同曲のCHART insightはこちらに掲載)。仮に「INZM」のストリーミング指標による獲得分を全体の2割(2,856ポイント)とし、Snow Man「EMPIRE」も同じポイントをストリーミングで獲得したならば「EMPIRE」は初登場時に4,738ポイントを獲得、総合11位相当となります。)
Snow Man「EMPIRE」の人気については、noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんがコラムにて紹介しています(元々Yahoo! JAPANに掲載されていたコラムのnote転載分を下記に貼付しています)。YouTubeライブ配信との連動、ライブ配信の同時視聴者数の多さを踏まえれば、「EMPIRE」の人気には納得します。
そうでなくとも、Snow Manの動画はビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標において常に人気であり、「EMPIRE」と似たチャートアクションを示す作品が以前もあったのですが、今作では以前の作品と違う点があります。
一方でSnow Manは「BREAKOUT」や「EMPIRE」にて、以前「ブラザービート」(2022)で獲得できていたストリーミング指標が加点されていないことが気になります
(中略)
ストリーミング指標はYouTubeをオーディオストリーミングで用いた(聴いた)方が多ければ加点されることがあります。(中略) ストリーミング指標獲得に至れなかったのは近年ストリーミング全体の再生回数が上昇したことで300位圏内に到達しにくくなったためと考えられます。
STARTO ENTERTAINMENT所属歌手による音楽関連動画がどんなに人気を博しても、サブスクを解禁しないならばストリーミング指標の加点は今後難しくなるでしょう。そもそもデジタル未解禁の作品が安定して上位にランクインすること自体、現在のチャートポリシー(集計方法)下ではほぼあり得ないことです。
Snow ManはSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手で最もフィジカルセールスに強く、シングルでは今年リリースの「LOVE TRIGGER」「BREAKOUT」が共に初週ミリオンを達成しています。ともすればデジタル未解禁を続ける背景には、デジタルを解禁することでフィジカルセールスに悪影響が及ぶという考えもあるのかもしれません。
本日1本目のブログエントリーを再掲しましたが、こちらで記したようになにわ男子「コイスルヒカリ」はデジタルを同時解禁しながらフィジカルセールスも伸びています。デジタルがフィジカルセールスを凌駕するという考え方があるのならば、その可能性はあるとしても考えすぎることはないというのが私見です。
まして、最近のSnow Manによるミュージックビデオはフルバージョンであることが多い模様です(短尺版を示す”YouTube Ver.”は動画タイトル欄に記載されなくなってきています)。ミュージックビデオ解禁がYouTubeをサブスク的に使う環境を整えたものと同義であると考えれば、サブスク全体での解禁も特段問題はないのではというのが私見です。
Snow Manは今週、ファーストシングル「D.D.」の通常版カップリングとして収録された「Crazy F-R-E-S-H Beat」のダンス動画(YouTube Ver.)が1億回再生を突破しています。このアナウンスが動画の再生回数を増やすことは十分考えられる一方、フィジカルシングルを購入する方は多くないでしょう。しかしサブスクやダウンロードを解禁していればこの曲が記事等を経て今一度フックアップされるだろうことは十分考えられます。
コアファンのみならずライト層(歌手のファンではないものの曲が気になる)の再生分も大きかったと推測します。海外からの再生分も少なくないでしょう。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年9月11日
サブスクを解禁すれば音楽チャートでの長期エントリーや、再生回数に伴う利益獲得も十分有り得たはずです。
デジタルに明るくなることを願います。 https://t.co/MuiDHKNfqO
デジタル人気はフィジカルシングル表題曲だけに集まるわけではないということは、たとえば藤井風「死ぬのがいいわ」(アルバム『HELP EVER HURT NEVER』(2020)収録)から明らかであり、同曲はデジタルを解禁しているからこそフックアップされ世界的な人気につながっています。Snow Manが世界進出をどう考えているかは解りかねますが、そもそもデジタルを解禁していなければ注目されにくいというのが厳しくも私見です。
そして現在では、フィジカルシングルのカップリング曲やアルバムのリード曲といったソングチャートでフィジカルセールス指標が加算されない曲も長期ランクインする可能性を持ち合わせています。Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」もそのひとつです。ヒットに伴いメディアが採り上げれば、最終的に収録されたフィジカルの売上が伸び、またフィジカル購入を経てコアファンが増える可能性も十分考えられるのです。
ひとつの案として、「EMPIRE」だけでもデジタル解禁することを提唱します。1曲だけならばアルバムセールスがダウンしたとしてもその下がり幅は小さく済むでしょう。そしてコアファンの数の多さを踏まえれば、アルバムリリースまでにダウンロードやサブスクでチェックする方が多く、ソングチャートでも上位進出が図れるものと考えます。
STARTO ENTERTAINMENT所属歌手の作品は事前のミュージックビデオ解禁が主流となっており、この解禁をデジタル全体のそれへと拡げることに対するハードルは高くはないのではと考えます。未来のコアファンにつながるライト層、そして海外コアファンの獲得のためにも、まず一度踏み出すことを勧めます。そしてSTARTO ENTERTAINMENTがデジタルに踏み出すことは、組織自体の改善面においても重要な意味を持つでしょう。