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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】2月のチャート動向を踏まえた真の社会的ヒット曲を見極める重要性、そして業界への提案

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

2月13~19日を集計期間とする最新2月22日公開分のビルボードジャパンソングチャートは、BE:FIRST「Boom Boom Back」が初登場で首位を獲得しました。

BE:FIRST「Boom Boom Back」は『23,004DLでダウンロード1位、5,010,303回再生で動画1位、9,445,515回再生でストリーミング2位、ラジオ1位と、各指標で高ポイントを獲得』。『昨年8月に同じく初登場で総合首位を獲得した前作「Scream」は、ダウンロードが15,304DL、ストリーミングは8,290,751回再生、動画は5,015,160回再生と、動画以外のデジタル2指標で今作は数字を伸ばし』たことから、ビルボードジャパンは『訴求力の高まりを感じさせる』と記しています(『』内は上記ツイート内リンク先より。)

「Boom Boom Back」については施策が徹底されており、その点は上記ブログエントリーでまとめています。加えて集計期間中にはダンスパフォーマンス、ライブパフォーマンスが公開され、動画再生指標の高水準につながっています(ミュージックビデオのビハインドザシーンも登場)。コアファンを惹き付け続けるのみならず、ライト層に対しても様々な側面から触れてもらうことができるきっかけになると言えるでしょう。

 

BE:FIRST「Boom Boom Back」についてCHART insightで指標構成をみると、ストリーミング(青で表示)の構成比が高いことが解りますが、ダウンロード(紫)、ラジオ(黄緑)そして動画再生(赤)も存在感を示しています。

最新2月22日公開分ビルボードジャパンソングチャートでは2位に櫻坂46「桜月」がランクイン。デジタル先行でリリースされたこの曲は39万枚を超えるフィジカルセールスに伴い急上昇しています。実はデジタルが強くないというわけではないものの、動画再生指標が100位未満(300位圏内)であり加点されてもわずかにとどまっている点が総合首位の座を逃したひとつの理由と考えます。

 

CHART insightにて、最新2月22日公開分ビルボードジャパンソングチャートを総合およびダウンロード指標の6位までを示したものを下記に。

高位置に初登場しやすいダウンロード指標では、今回の集計期間中にリリースされたYOASOBI「アドベンチャー」が3位、優里「恋人じゃなくなった日」が6位となり、総合では前者が30位、後者が41位となっています。2曲ともミュージックビデオは現段階まで公開されていないこと、集計期間前半のリリースながら月曜解禁ではないため1週間フル加算ではないこともありますが、「Boom Boom Back」とは差が生じています。

(上記はティザー(ティーザー)映像。)

(上記は「恋人じゃなくなった日」の優里さんによる解説動画。)

Spotifyをみると次週以降はストリーミング指標においてBE:FIRST「Boom Boom Back」をこの2曲が上回る可能性が高いと思われますが、最新2月22日公開分ビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標では優里「恋人じゃなくなった日」が58位、そしてYOASOBI「アドベンチャー」は100位未満(300位圏内)という状況です。

YOASOBIは「夜に駆ける」が2020年度の、優里さんは「ドライフラワー」が2021年度のビルボードジャパン年間ソングチャートを制しています。2曲、そして2組の強さはファンとのエンゲージメントの確立やその徹底にあったと捉えており、今回の新曲においても中長期的に施策を投入する可能性が高いと考えます。他方初週のチャート動向では、2022年度に高い存在感を示したBE:FIRST側がより高い位置につけたという状況です。

(たとえばYOASOBIに関してはSNSでコアファンを主体に自発的に聴いてもらうための呼びかけ(背中を押すと形容するのが最適な、柔らかな言葉遣い)が、優里さんに関してはYouTuber的な位置付けが、コアファンとのエンゲージメントの確立に大きく寄与していると捉えています。加えてその親しみやすさはライト層に対しても、聴いていただける大きなきっかけになっているのではないでしょうか。)

 

 

さて、BE:FIRST「Boom Boom Back」はともすれば最新2月22日公開分ビルボードジャパンソングチャートで首位を獲得できなかった可能性があります。

上記はビルボードジャパンソングチャートの予想を行う紅蓮・疾風さんによる、結果を踏まえての振り返りツイート。この『係数処理が発生していた場合』というのは、LINE MUSIC再生キャンペーンを採用した曲がストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートを制した場合、LINE MUSICと他のサブスクサービスとで乖離があれば指標化の際に減算が適用されるというものです。

ビルボードジャパンは2022年度第2四半期に係数処理適用の形へとチャートポリシー(集計方法)を変更しています。その後昨秋までに、LINE MUSIC側が再生回数をそのままカウントしない形に変更をしたことで、LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲がStreaming Songsチャートで首位に立つことがみられなくなり、ストリーミング指標化時の係数処理は半年以上適用されていません。なおStreaming Songsチャート首位曲のみの係数処理適用に関して、自分はこのブログでビルボードジャパンへ改善提案を行っています。

LINE MUSICが再生回数をそのままカウントしなくなった(ただし再生キャンペーン参加ユーザーに対しては再生回数が引き続きそのまま可視化されているものと思われます)、その変更以降はじめてLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲がStreaming Songsチャートを制するかに注目していましたが、最終的にBE:FIRST「Boom Boom Back」はこのチャートで2位となり、係数処理適用を免れた形です。

 

LINE MUSIC再生キャンペーンについてはネガティブな見方が強く、現にビルボードジャパン自体が非難を続けていた印象です(LINE MUSICが再生回数のカウント方法を変更…再生キャンペーンを非難し続けたビルボードジャパンやKAI-YOUへの違和感を再掲する(2022年10月19日付)にて、その姿勢への疑問を記しています)。他方このキャンペーンが、新陳代謝しにくいと言われる日本のストリーミングチャート、そして複合指標から成る音楽チャートにおいて順位の入れ替わりに大きな役割を果たしている状況です。

この点は上記ブログエントリーにて、2週前のビルボードジャパンソングチャートにおける上位初登場曲を例に記しました。大事なのはLINE MUSIC再生キャンペーン終了後も勢いをキープすることであり、私たちは社会的ヒット曲に成るかを見極めることが重要です。そして音楽業界側が再生キャンペーンに頼らずも新曲がリリース週に聴かれる体制づくりを、音楽チャートは過度な施策に対してはそれが反映されにくい形へチャートポリシーを変更することを、常に自問自答し毅然とした態度にて行うことが重要です。

 

社会的ヒット曲になるかを見極めることの重要性については、前週もブログエントリーで記載しました。下記ブログエントリーでは2月8日公開分ビルボードジャパンソングチャートでLINE MUSIC再生キャンペーン採用効果もあり上位に進出した曲の翌週の動向、そして2月15日公開分ビルボードジャパンソングチャートで新たにトップ10入りを果たした4曲について紹介しています。

前週初のトップ10入りを果たした4曲の最新動向を下記に掲載。上記ブログエントリーで予想したように、4曲のうち由薫「星月夜」が最新ソングチャートで最も高い位置につけました。

BSS feat. Lee Young Ji「Fighting」およびNCT DREAM「Best Friend Ever」は最新2月22日公開分ビルボードジャパンソングチャートの集計期間2日目でLINE MUSIC再生キャンペーンが終了しており、フィジカルセールスが大きくダウンした「Fighting」が総合順位を大きく落とした形です(他方「Best Friend Ever」はフィジカルセールスが1→2位となり、総合順位の下げ幅も小さくなっています)。

なおHKT48「君はもっとできる」はデジタル先行リリース時に再生キャンペーンを実施していましたが、同曲はストリーミング指標が一度も300位以内に入っていません。デジタルの強くなさもあり、同曲はフィジカルセールスのダウンに比例する形で総合順位を4位から100位未満(300位圏内)へと落としています。

前週トップ10内に初めて登場した曲のうち順位が最も低かった由薫「星月夜」は、今週9→7位へ順位を上げ、さらにポイントも伸ばしています(前週比102.0%)。集計期間中『ミュージックステーション』(テレビ朝日)に登場した効果は大きく、ダウンロードを微減にとどめた上でストリーミングや動画再生というロングヒットの要になる接触指標群を伸ばしたことにより大ヒットのフェーズに入る可能性がより高まったと言えます。

 

 

音楽チャートから真の社会的ヒット曲を見極めるには、複数週の動向を調べる必要があります。1週のみを見て判断できれば最善かもしれませんが、日本ではフィジカルセールスやLINE MUSIC再生キャンペーンの存在も大きいため難しい部分があります。それら以外にも大なり小なり様々な施策を多くの歌手が考え、実行しています。そしてコアファンのチャートへの熱意もまた自然なものです。

先述したように音楽チャート側が毅然とした態度で、常に自問自答を行いチャートポリシーを見直していくことが大前提ですが、同時にチャートの受け手に対して見方をレクチャーすることも大事でしょう。このレクチャーはチャートを活用するメディアや音楽関係者等においても必要なことと考えます。

 

BE:FIRST「Boom Boom Back」についても今回紹介した曲と同様、次週以降の動向をみて真の社会的ヒットに成るかをチェックする必要があります。「Boom Boom Back」のLINE MUSIC再生キャンペーンは次週3月1日公開分ビルボードジャパンソングチャートの集計期間2日目で終了していることから、ストリーミング指標が好位置をキープできるかがまずは重要な見極めポイントとなります。ロングヒットの要は接触指標群であり、そのためにはライト層の支持を集めることが何より大事になるのです。