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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

LINE MUSICが再生回数のカウント方法を変更…再生キャンペーンを非難し続けたビルボードジャパンやKAI-YOUへの違和感を再掲する

ビルボードジャパンがKAI-YOUのインタビューにて、一部サブスクサービスによる再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)を”チャートハック”というネガティブな言葉で形容し暗に非難したことについては、自分はこのブログの中で幾度となく違和感を表明しています。代表的なブログエントリーは下記に。

再生キャンペーンによる再生回数がそのまま加算されること、そもそも物理的精神的な制約を生むキャンペーンの是非は問われる必要がありますが、それ以前にチャート管理側が問題発覚時に適切な処置を採る必要がありました。再生キャンペーンへの対策が始まったのは今年度第2四半期半ばというのは遅きに失したと言えますが、その後も”チャートハック”という言葉を用いてLINE MUSIC側に問い質し続けていました。

ならばビルボードジャパンやKAI-YOU側が直接、再生キャンペーン実施サブスクサービスと話し合う機会を設けるべきと考えていましたが、ようやくそれに近い形での記事が先週末に登場しています。

おそらくは担当編集者によるであろう”ハック”の連呼に辟易しつつ、記事では大事なことが語られていますので後述します。ちなみにここでLINE MUSIC側が語った『音楽配信サービスのランキングには、同じ楽曲やアーティストが1年間ずっと1位にいるなど入れ替わりがないという問題』は実は正しくなく、またそこまで問題ではないのではということについては後日記載する予定です。

 

さて、LINE MUSIC側は再生キャンペーン(KAI-YOUの記事では『再生数キャンペーン』と記載)に関するカウント方法を変更し始めています。

取締役COOの高橋明彦さんによれば、「再生数キャンペーン」に対して具体的な対策もすでに取られているという。

「合理的に考えて異常な再生は再生数に入れなかったり、ランキングにカウントしないような形を模索しながら進めている状況です。

既に実施されているというこの発言は、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートで表れ始めた傾向を裏付けるもので、たとえばブログ【Billion Hits!】管理者でチャート分析に長けたあささんも指摘されています。

たしかにLINE MUSICの再生回数カウント方法が変化したこと(Spotify等他のサブスクサービスに近い形となったこと)で、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるストリーミング指標の問題は解決に向かったかもしれません。それ自体は評価する一方で、何よりここまでの流れに対する強い違和感は拭えないままです。そして根本にある部分が改善されない限り、チャートの様々な問題は根強く存在し続けるものと考えます。

 

再生キャンペーン(これについては今回の記事で、LINE MUSIC側が後にレコード会社による自発的な実施により”暴走”(この表現はKAI-YOU側の記載)と説明していますが、尤もそのきっかけを与えた側の責任も問わないといけません)については、少なくとも4年前に開始されたことが判っています(下記リンク先参照)。ビルボードジャパンはその時から、過熱の可能性を踏まえチャートポリシー変更を行う必要があったはずです。

ビルボードジャパンは対応が遅きに失したと言えるでしょう。そしてLINE MUSICとの連携に問題があることや、チャート管理者として責任ある姿勢とは言い切れない状況については、今年度第3四半期におけるあまりにも大きいチャートエラーがそれを証明してしまったものと捉えています。

そもそもチャート管理者が責任を自覚していれば、LINE MUSICに対し再生キャンペーンの是非を問うなどのやり取りを常時実施し、同時にLINE MUSICの再生回数カウント方法が是正されるまではチャートポリシーを変更し係数処理を施すことができたはずです。しかしチャートポリシー変更は遅くなり、”チャートハック”というネガティブな印象を与えてあたかも追い込むようなやり方は、毅然とは真逆の姿勢ではないでしょうか。

また”チャートハック”という表現の多用が、日本におけるサブスクへのマイナスイメージを植え付けてしまったのではとも危惧しています。川本真琴さんや山下達郎さんが唱える負の主張にあたかもお墨付きを与えるようなその態度は、チャート管理者としてとても好ましくないものです。

 

チャート上昇施策はソングスチャート構成8指標すべてで可能であり、その中でコアファンの熱量が反映されやすく且つポイントも高いのがストリーミング指標における再生キャンペーンと捉えていいでしょう。過熱しやすさも目立ちやすい理由と言えますが、まずはビルボードジャパンが他者を悪く言う前に、すべてのハックに耐え得るチャートポリシーへの変更を行うことこそ大前提ではないでしょうか。

その姿勢を捨てきれない以上、今後問題が噴出した際に後手に回ることが容易に想像できます。ビルボードジャパンは通常月曜に登場するフィジカルセールス週報が今週は火曜となり、さらには遅延に対するお詫びもないことが発覚したばかりゆえ、その責任感の所持について疑念が膨らむ一方なのです。

ひとつひとつに責任ある態度で接し、他者を悪く言うことなく、自問自答をする姿勢を最優先で臨むならば、ビルボードジャパンの信頼度は格段に高まり、認知度上昇にもつながるものと考えます。

 

 

最後に、KAI-YOU担当編集者は”チャートハック”について連載化しようとしていますが、記事から垣間見える姿勢(先述した”暴走”等の表現を用いること等)に対し強い疑問を覚えることを表明させていただきます。ビルボードジャパンに対しても、自身のポリシーを主張する媒体をKAI-YOU以外に用意することを勧めます。