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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む (2024年1月10日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして当週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。

なお今回はビルボードジャパンの年末年始進行に伴い、1月10日に発表された1月10日公開分(集計期間:1月1~7日)を分析します。同日発表された1月3日公開分(集計期間:2023年12月25~31日)については昨日のエントリーにて紹介しています。

前週(昨日掲載分)のエントリーはこちら。

1月10日公開分のソングチャートに関する記事は、以下をご参照ください。

 

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポストにて簡潔に説明しています。

 

<2024年1月3日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

星野源「光の跡」 3位→23位

KinKi Kidsシュレーディンガー」 4位→100位未満(300位圏内)

(上記はショートバージョン。)

 

前週のエントリーにて、KinKi Kidsシュレーディンガー」がミュージックビデオのフルバージョンを元日にYouTubeで公開したことをお伝えしました。元日は当週の集計期間初日に該当するのですが、同曲は動画再生指標300位以内に返り咲いていません。

KinKi Kidsは昨年、自身のYouTubeチャンネルにKing & Princeを招き「シンデレラガール」をコラボしています(一方、King & Prince側ではKinKi Kidsと共に「シンデレラ・クリスマス」を披露した模様を公開。YouTubeこちら)。クリスマスイブの夜(すなわち1月3日公開分ビルボードジャパンソングチャートの集計期間前夜)に公開されたこの動画は、前週のソングチャートにおいて動画再生指標12位に登場していました。

この動画の再生には、『ミュージックステーション SUPER LIVE 2023』(テレビ朝日)での披露を踏まえた流入も大きいと思われますが、その特番では「シュレーディンガー」も披露されています。仮に新曲がリリースタイミングまでにフルバージョンで公開されていたならば、コラボ動画から「シュレーディンガー」への導線がより太くなったのではないでしょうか。サブスク解禁されたならば、そちらにも反映されたことでしょう。

 

 

続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2024年1月10日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・1位 (初登場) Number_i「GOAT」

・5位 (初登場) Kis-My-Ft2「HEARTBREAKER」

 

なお、前週フィジカルセールス指標のみで総合17位に再浮上したAKB48「アイドルなんかじゃなかったら」は、今回100位未満(300位圏内)に後退しています。この急上昇と急落(を繰り返すことについて)は、前週のチャート紹介時にビルボードジャパンに対し提案を記しています。

 

首位を獲得したNumber_i「GOAT」については、下記エントリーにて動向を分析しています。その際、Kis-My-Ft2「HEARTBREAKER」の施策についても言及しました。

【前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む】という一連のエントリー(CHART insightからヒットを読む カテゴリーの記事一覧から確認可能)にて、特にアイドル/ダンスボーカルグループにおいて所有指標(主にフィジカルセールス)の初動の高さに伴い上位進出しながら、翌週に急落する傾向が高いことが解ります。Number_i「GOAT」はその状況を跳ね除けることができるかに注目です。

 

このNumber_i「GOAT」の動向は、BE:FIRST「Boom Boom Back」のチャートアクションを思わせます。「Boom Boom Back」は様々な施策を徹底したことも功を奏し、2023年2月22日公開分のビルボードジャパンソングチャートを初登場で制しています。

(上記はBE:FIRST「Boom Boom Back」における、最新1月10日公開分までのビルボードジャパンソングチャートのCHART insight。)

BE:FIRST「Boom Boom Back」ではLINE MUSIC再生キャンペーンも開催していたことでストリーミングの初動も高かった一方、Number_i「GOAT」では行われていません(またBE:FIRST自体、その後再生キャンペーンを採用しない傾向にあります(LINE MUSICの別のキャンペーンは用いています))。ダウンロードやラジオ、動画再生指標の初動の高さに伴いフィジカル未リリースで1万ポイントを超えたことが、2曲共通の特徴といえます。

曲自体においても、BE:FIRST「Boom Boom Back」とNumber_i「GOAT」はヒップホップ的アプローチが共通。BE:FIRSTは年度後半に「Mainstream」をリリースし、そのカラーを強めています。「Boom Boom Back」や「Mainstream」はロングヒットしたとは言い難いかもしれませんが、チャート上のインパクトの大きさやアイドル/ダンスボーカルグループにおいて群を抜いたチャートアクションの結果、存在感を高めています。

(上記はBE:FIRST「Mainstream」における、最新1月10日公開分までのビルボードジャパンソングチャートのCHART insight。)

 

Number_iが「GOAT」に続く曲を歌モノにする可能性もあり今後の展開は分かりかねますが、デジタル/ラジオの施策徹底(キャンペーンの実施、複数動画の投入等)はBE:FIRSTを彷彿とさせます。BE:FIRSTはデジタル時代にあってリリース作品の初動の最大化、コアファンとのエンゲージメント確立の徹底等に長けており、彼らの施策を吸収するのは自然なことです(そして日本の音楽業界全体が徹底すべき部分だとも考えます)。

Number_iのメンバーが以前所属していた旧ジャニーズ事務所では、フィジカルセールスの強い歌手ほどデジタル未解禁、ミュージックビデオもYouTubeで短尺版にてアップするという手法が採られ続けています。今回の「GOAT」における施策をみるに、またその音楽性も含め、Number_iのメンバー3名がやりたかったのはこういうことだったのではないかとも感じています。