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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

King & Princeが動画再生指標トップ5を寡占した理由、そして今後考えられることへの私見

最新2月15日公開分のビルボードジャパンソングチャート、動画再生指標ではKing & Princeが5位までに4曲ランクインしています。下記は最新のビルボードジャパンソングチャート、CHART insightにて動画再生指標の1位から順に並べたものです。

「ツキヨミ」は11週連続で動画再生指標を制覇し、「ichiban」は14週連続で同指標トップ10内をキープしています。加えて2月22日にフィジカルリリースされる「Life goes on」および「We are young」の2曲に関しても、動画再生が高い状況です。

今回は、動画再生指標トップ5をKing & Princeが寡占した理由について考えます。

 

実は動画再生指標の強さについては、King & Princeに限らずジャニーズ事務所所属歌手、それもKing & Prince以降にデビューしたグループが強い状況が続くようになりました。ビルボードジャパンも記事やポッドキャストにて、特筆すべき事項として時折採り上げています。

ビルボードジャパンソングチャートでは時代に即したチャートポリシー(集計方法)の変更を続けたことでサブスク再生等に基づくストリーミング指標が強い曲が年間は勿論のこと週間単位でも最上位に到達しやすくなったため、サブスク未配信作品は存在感を示しにくくなっています。しかしながら昨年度の年間チャートにランクインしたジャニーズ曲には特徴がみられます。

 

下記は2022年度各週における動画再生指標上位20曲の推移。年間ソングチャートで79位に入ったなにわ男子「初心LOVE」は第1四半期において動画再生指標がトップ10内に入り続け、そして年間84位のSnow Manブラザービート」は第2四半期で動画再生指標が安定していたことが解ります。

「初心LOVE」および「ブラザービート」のヒットはビルボードジャパンによるTikTok Weekly Top 20でも可視化されています。移り変わりが激しいTikTokチャートにあって2曲はそれぞれ第1四半期、第2四半期でヒットしており、それが動画再生指標に影響を与えたとみられています。

また、サブスク未解禁ゆえに動画を介して曲を聴くという行為も動画再生指標の維持につながったとみていいでしょう。なにわ男子「初心LOVE」やSnow Manブラザービート」ではフルバージョンの動画がアップされ、それらも貢献したとこのブログでは以前から紹介しています。現在ではサブスクを使用する一方でCDプレイヤーがない方も少なくないと思われますが、その方々においてはYouTubeが主要な聴取手段となります。

上記2023年度のTikTokチャートに登場したジャニーズ作品のうちSixTONES「Boom-Pow-Wow!」やジャニーズWEST「膝銀座」はいずれもアルバムからの先行公開。最近のジャニーズ作品においてはTikTokもさることながらYouTubeでのミュージックビデオ先行公開が徹底されており、今年度の動画再生指標ではなにわ男子「ハッピーサプライズ」やKing & Princeの2曲がトップ20入りを果たしています。

先行公開されたYouTubeでの映像を観つつ、フィジカルシングルがリリースされた後はCDに同梱される映像盤でミュージックビデオをチェックするという流れが定番化していることが伺えます。King & PrinceにおいてはYouTubeにアップされたミュージックビデオがいずれもショートバージョンとなっていますが、ティザー(ティーザー)という位置付けとして捉えられているかもしれません。

 

ただし短尺版の場合、動画再生指標が早々にランクダウンすることは免れません。その動きがKing & Princeでみられないのは、一部メンバーの脱退がアナウンスされて以降のコアファンの連帯も強いゆえと考えられます。

今年に入りこのブログでは、好調に推移するKing & Prince「ツキヨミ」の動向を紹介し、フィジカルセールスが初週のみならず登場3週目以降も大きな盛り上がりを見せたのは彼らをミリオンセールスに導きたいというコアファンの思いの強さゆえではと結論付けました。結果的にビルボードジャパンでも今週、「ツキヨミ」がミリオンセールスを達成。下記ツイートには現段階で2千を超える引用リツイートがみられます。

一部メンバーの脱退が発表されたのは昨年11月4日。そして同月6日までを集計期間とする昨年11月9日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは「ichiban」が動画再生指標で7週ぶりにトップ20内に返り咲きました。その後同曲はトップ10内、それも1週を除き5位以内をキープしているのです。これはコアファンの連帯も大きく寄与したと考えるのは自然なことでしょう。

 

 

TikTokでのヒット、サブスクの代替、CDリリース前のティザー的な意味合い、そしてコアファンの連帯といった要素がKing & Princeの動画再生指標の強さにつながったと捉えています。加えてTikTokを介して曲が気になるライト層が増えたこと、昨秋の報道以降彼らを注目し応援したい方々が増えたことも、動画再生指標を押し上げ維持する理由となっていることでしょう。

一方で、そのライト層の動向はストリーミング指標により大きく反映され、TikTok人気もサブスク等に派生するのが通常です。ゆえにこれは何度も申し上げていることですが、サブスクの未解禁はヒットが可視化されにくい点においてとても勿体ないと感じずにはいられません。

 

 

さて個人的には、5月以降ともすればミュージックビデオ等動画が公式YouTubeチャンネルから削除される可能性がゼロではないのではと感じています。

匿名関係者発言は説得力を有さないものの、『退所後に2人から『配信は止めて』と言われる可能性がある。そのリスクを考え、Hulu側が予め出演箇所をカットしたのでは』(上記ツイート内記事より)というその内容は、今後動画が消えた場合においても退所した側の意向ゆえであるとみなせる言質に成りかねないものと危惧します。

「シンデレラガール」や「Memorial」といった6名時代の作品は公式YouTubeチャンネルに今も残っているためこの危惧は杞憂だろうとは思うものの、今回の動画配信事例と似た内容がYouTubeでも発生すれば、音楽チャートにも影響を及ぼしかねません。

2社それぞれのコラボレーションに対する振り返りに続き、「SNS時代におけるファンとのコミュニケーション」をテーマとしたトークがスタート。日高氏はこのテーマについて「国民全員が発信者の時代になってからさらに5年10年が経っており、(インターネットで)発信されないと存在しないのも一緒。BMSGのスタッフとも『この時代にストリーミング配信されていない音源は、もう存在しないのと一緒だ』と話している」と語った。

『この時代にストリーミング配信されていない音源は、もう存在しないのと一緒』であると同時に、デジタルの削除は今の時代にあってはその歌手が存在しなくなるといっても過言ではないかもしれません。Huluの事例からこの記事を思い出し、日本のエンタテインメント業界に通底する不条理な慣例(常識と刷り込まれていたもの)を破るにはSKY-HIさんのみならずコアファンの連帯と働きかけも有効のはずだと強く感じています。