イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日本でもっと様々な音楽が聴かれるために、プレイリストの活用と知ってもらうことが重要だと提案する

日本のサブスクは新陳代謝がないという声をこの1週間とりわけ強く耳にしています。ただこの表現はひとつ訂正する必要があるかもしれません。海外ではヒット曲が入れ替わりやすいのみならず昔の曲も一定の条件の下で上昇する傾向にあるためで、上位曲の入れ替わりが少ないと記したほうが適切ではと感じています。

 

Spotifyではグローバルや各国もしくは地域におけるデイリーやウイークリーチャートが200位まで可視化されます。今週2月14日付のグローバルおよび米チャートについては、こちらのツイートにて上位100曲を確認可能です。

2月14日付デイリーチャートで採り上げたい特徴は2点。ひとつはリアーナの大挙エントリーであり、この日はグローバルで13曲、米で18曲が100位以内に登場しています。これは米で2月12日に開催されたスーパーボウルでリアーナがハーフタイムショーに登場したためであり、その模様はNFLYouTubeアカウントにて確認可能です(なお、ブログに貼り付けても観ることができないためリンクを掲載します→こちら)。

尤も2月13日付に比べれば順位は下がっているものの、リアーナの存在感はハーフタイムショー、そしてその後の音楽チャートで十分示されたことになります。Spotifyも加算対象となる2月25日付米ビルボードおよびグローバルチャートで作品群がどう推移するかに注目です。

 

2月14日付のSpotifyデイリーチャートで採り上げたい特徴、もうひとつはバレンタインデーにちなんだ曲の上昇です。とはいってもクリスマスほど多いわけではないのですが、たとえばエド・シーラン「Perfect」はグローバルで77位(米では200位圏外)、テイラー・スウィフト「Lover」はグローバルで136位および米で88位、ジョン・レジェンド「All Of Me」は米で185位(グローバルでは200位圏外)に登場しています。

(上記画像はSpotifyによる公式プレイリスト、Valentine's Day Loveより。日本時間2月18日午前5時台の内容をキャプチャしたもの。プレイリストの順番等は今後変わっていくことが予想されるため、現時点での内容をキャプチャしています。)

上記公式プレイリストはユーザーである自分のために作られたとの記載があるため、曲順や選曲自体ユーザーによって異なるかもしれません。それでもテイラー・スウィフト「Lover」やジョン・レジェンド「All Of Me」(7番目に登場)が確認できるほか、巻頭を飾るエルヴィス・プレスリー「Can't Help Falling In Love」は2月14日付米Spotifyデイリーチャートで198位に初登場を果たしています。

この2点を踏まえれば、海外では大きなイベントの発生時(季節的なものを含む)に関連曲がチャートを上昇する傾向にあることがよく解ります。そしてそれらはサブスクプレイリストの存在も大きく影響を及ぼす可能性が高いのです。Spotifyにおけるリアーナの公式プレイリストが11曲目まで、スーパーボウルハーフタイムショーの曲順通りに掲載されているということも、作品の上昇に寄与したと考えていいでしょう。

(上記画像はSpotifyによる公式プレイリスト、This Is Rihannaより。日本時間2月18日午前5時台の内容をキャプチャしたものとなります。)

 

では日本ではどうでしょう。スーパーボウルハーフタイムショーは日本時間の2月13日に開催されていますが、同日および翌14日付におけるSpotifyデイリーチャートではリアーナの作品は200位以内に登場していません。そしてバレンタインデーにおいては関連曲が登場していないこともまた特徴と言えます。

(上記はPerfumeチョコレイト・ディスコ」における、直近2月15日公開分までの150週分を示したCHART insight。ラジオは黄緑、ストリーミングは青で表示されます。)

日本のバレンタインデー関連曲で真っ先に思い出す方が多いであろうPerfumeチョコレイト・ディスコ」はラジオこそ強く、ビルボードジャパンのCHART insightをみると毎年のようにこの指標で20位前後まで上昇しています。このラジオ指標の基となるプランテックの最新OAチャートでは、バレンタイン関連曲が100位以内に6曲入っています。

一方、2月14日にはバレンタインデーを迎え、毎年恒例の曲から最新曲までが急伸した。おなじみのPerfumeチョコレイト・ディスコ」は20位まで浮上、松任谷 由実「Valentine’s RADIO」は58位、国生さゆりバレンタイン・キッス」は67位となった。この他、リクエスト最多だった家入レオ「チョコレート」(23位)をはじめ、新曲のmiwa「2月14日feat.川崎鷹也」(33位)、洋楽からはThe 1975「チョコレート」(-位→46位)がチャートインした。

ビルボードジャパンは放送局の聴取可能人口等を加味してラジオを指標化していますが、おそらくこの6曲はいずれも2月15日公開分ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標において100位以内に入っていることでしょう。イベント関連や季節感を示す曲は日本においてはラジオがより敏感であると以前紹介したことがあるのですが、他方サブスクでは強くないことが見て取れます。先述したPerfumeチョコレイト・ディスコ」は2020年以降、ストリーミング指標で300位以内に入っていません。

 

 

Spotifyをはじめとするサブスク再生等に基づいたストリーミング指標においてリアーナの作品群やバレンタインデー関連曲がどう推移するか、2月13日からの1週間を集計期間とする2月22日公開分のビルボードジャパンソングチャートを注目する必要がありますが、今回海外と日本の動向を比較して感じたのは、日本でサブスクプレイリストの存在感をもっと高めることができるのではないかということです。

上記はSpotifyにおけるMy Valentine - マイバレンタインと題した公式プレイリストですが、フォロワーは1万人に満たない状況です。Spotify側は、たとえばプレイリストの選曲内容や説明欄の充実を図ったり、またプレイリストをより見つけやすい形に変更することも必要かもしれません。今週自分が参加した会合にてSpotifyのUIの分かりにくさを問う声があがったこともあり、サブスクサービス側の改善も重要だと感じています。

一方でユーザーがプレイリストを活用する必要性も感じていますが、そのためには気付いてもらうことがまずは重要でしょう。上記はデータをわかりやすく、そして客観的に提示する徒然研究室さんによるツイートですが、50万以上のユーザーを持つJ-POP関連プレイリストが2つのみという状況は、言い換えればプレイリスト側が宣伝等を充実させることで上位に躍り出やすい可能性も秘めていると感じています。

 

(ふたつの画像は共に、日本時間の本日6時の段階でキャプチャしたものです。)

たとえば最新曲のプレイリストにおいて、J-POP主体ながら洋楽も含むNew Music Wednesday(毎週水曜0時更新、プレイリストはこちら)と、世界中の新曲を集めK-POPも選出される傾向が高い一方でJ-POPの選出が厳しいといえるNew Music Friday(日本時間の毎週金曜14時(サマータイム導入時は金曜13時)更新、プレイリストはこちら)ではフォロワーが大きく異なることが解ります。新陳代謝を高めたいならば新曲を聴いてもらうべく最新曲プレイリストのフォロワーをどう増やすか、検討する必要があるはずです。

そして過去曲のランクインが難しいことも、日本のデイリー200位以内ランクイン曲が他の国や地域に比べて多くない理由かもしれません。新陳代謝のみならず旧曲による代謝も必要と考えるならば、プレイリストをユーザーに活用してもらう、知っていただくことがひとつの案として有効でしょう。これはサービス側のみならず歌手側、発信側そして評論家等音楽関係者の課題でもあり、具体的で前向きな提言が必要です。