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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

King & Princeがデジタル解禁…今後のビルボードジャパンソングチャートにおける注目ポイントとは

King & Princeが5月23日にフィジカルシングル「halfmoon」「moooove!!」(ダブルAサイド)をリリースするに先立ち、20日月曜に2曲をデジタル先行で、そして23日にはフィジカルシングルのカップリング曲、およびベストアルバム『Mr.5』収録曲を解禁しました。この点については以前ブログにて紹介しています。

5月23日の解禁日にはKing & Princeの所属レーベル、Project K&Pを擁するユニバーサルミュージックジャパンがXにてこのようなポストを発信しています。メンバー本人も生配信で語っていたとのことですが、STARTO ENTERTAINMENT関連歌手でビルボードジャパンを制することを明言するのは極めて珍しいと捉えています。

他方、今週報じられたようにKing & PrinceはSTARTO ENTERTAINMENTとエージェント契約を結んでおり、そのことがデジタルで動きやすい環境につながったのかもしれません。となるとSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手のデジタル解禁はまだ難しいとも考えてしまうのですが、それは一旦置きつつ、今回は音楽チャート分析者として5月29日公開分(集計期間:5月20~26日)以降におけるKing & Prince作品の注目点を採り上げます。

 

<今後のビルボードジャパンソングチャートにおけるKing & Prince作品の注目点>

 

 

① 「halfmoon」は首位に初登場を果たすか

ダブルやトリプル等、複数のAサイドが用意されたシングルではフィジカルセールス指標が1曲のみに加算され、King & Princeの今作においては「halfmoon」が対象となります。

フィジカルシングルの前作では「愛し生きること」が昨年11月15日公開分にて初週353,077枚を売り上げ、フィジカルセールス指標加算初週に7,189ポイントで3位に到達しています。上記はその際のCHART insightですが、フィジカルセールス指標(黄色で表示)だけで全体の9割以上を占めています。同曲のミュージックビデオは9月下旬に公開されており、動画再生指標(赤)がいち早くランクインしていた形です。

「halfmoon」ではミュージックビデオを5月20日月曜に公開したのみならず、同曲を主題歌に起用した永瀬廉さん出演のドラマ『東京タワー』(テレビ朝日)とのコラボレーションムービーがKing & Prince側の公式YouTubeチャンネルにて、期間限定ながら5月18日に公開。これらが動画再生指標に反映されます(なおテレビ局等の公式YouTubeチャンネルにて公開された動画は動画再生指標の加算対象外となります)。

加えて、フィジカルリリースに先駆けて5月20日月曜にデジタル解禁したことで、5月29日公開分ビルボードジャパンソングチャートではダウンロード(CHART insightでは紫で表示)およびストリーミング(青)が1週間フル加算されます。いずれの指標も300位以内までが加点対象となりますが、ダウンロードは集計期間前半3日間の速報値で首位を記録しています。

ビルボードジャパンソングチャートで「halfmoon」が首位に達するには、最新5月22日公開分まで通算16週首位を獲得しているCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」に勝ることが必要です。同曲は漸減状態が続いていますが、仮に好調に推移し次回においてポイント前週比95%で推移するならば10,747ポイントの獲得が見込まれます。King & Prince「halfmoon」はデジタルでどこまで上乗せできるかが首位獲得の鍵となります。

ちなみに、Mrs. GREEN APPLEライラック」が伸びてくることも予想されますが(最新チャートの動向については上記エントリーにて記載)、次週において1万ポイントを超えるかは難しいかもしれません。それでもMrs. GREEN APPLEのデジタル動向、そして背景にある見事な施策については多くの歌手が知るべきではないかというのが私見です。

 

② 「moooove!!」はソングチャートでどの位置に登場するか

Apple Music、SpotifyおよびLINE MUSICといった主要サブスクサービスではいずれも、「halfmoon」より「moooove!!」の再生回数が上回っています。仮に「moooove!!」をフィジカルシングル1曲目に配置し、ミュージックビデオ公開を月曜に据えていたならば、ビルボードジャパンソングチャート制覇の可能性はより高まったかもしれません。

「moooove!!」のミュージックビデオは一昨日夜に公開されており、5月29日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおける動画再生指標の加算対象期間は3日強にとどまります。一方でストリーミング指標が100位以内に入る可能性があること、ダウンロードは「halfmoon」に次いで速報値で2位に入っていることを踏まえれば、ソングチャートでの上位進出も考えられるでしょう。

加えてカップリング曲の動向にも注目。いずれも5月23日木曜のフィジカルシングルリリースに合わせてデジタル解禁されています。また、King & Prince公式ではなく”King & Prince - トピック”というチャンネル(→こちら)発ながらYouTubeでも公式オーディオが公開されています(トピックチャンネルについてはこちらで紹介されています)。

トピックチャンネル発の動画が動画再生指標の加算対象となるかは解りかねますが、動画再生指標を主軸にダウンロード指標も獲得し、ソングチャート100位に入る可能性もあるかもしれません。ただし木曜公開であり集計期間後半4日のみでの加算では難しいかもしれません。「moooove!!」そしてフィジカルシングルカップリング曲のチャート推移を見守りたいと思います。

 

③ ベストアルバム収録曲はランクインするか

ベストアルバム『Mr.5』(2023)収録曲の中で、主要サブスクサービスでは「ツキヨミ」(2022)および「シンデレラガール」(2018)が上位に進出し、「koi-wazurai」(2019)がそれに続く形です。

2020年8月12日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、米津玄師さんがサブスク解禁したことに伴い100位以内に21曲ランクインを果たしています。解禁タイミングが『STRAY SHEEP』リリースと同日ゆえアルバム収録曲のランクインが目立つ形ですが、「アイネクライネ」(2014)や「LOSER」(2016)もランクインしていることに注目。デジタル解禁は歌手の人気曲が可視化されるという点でも興味深いのです。

サブスクで特に人気を誇る「ツキヨミ」は、平野紫耀さんが主演したドラマ『クロサギ』(TBS 2022)主題歌であり、平野さんを含む3名の脱退アナウンスも相まってフィジカルセールスや動画再生指標が牽引し2023年度年間ソングチャートにランクインしています。他方、デジタル解禁していれば代表曲に成ったと上記エントリーで紹介していますが、デジタル解禁後の動向を踏まえればこの見方は正しかったといえるでしょう。

「ツキヨミ」や「シンデレラガール」はダウンロードでも好調に推移している模様であり、ソングチャート100位以内エントリー復帰成るか注目です。

 

④ ロングヒットするか

このブログでは幾度となく述べていますが、ビルボードジャパンソングチャートで週間チャートを制することも好いことながら、それ以上にロングヒットし年間チャートにランクインすることがより素晴らしいというのが私見です。

前作のフィジカルシングル「愛し生きること」は昨年11月15日公開分でフィジカルセールス指標初加算に伴い3位に登場した翌週、89位にダウンしています。また前々作「なにもの」は昨年6月28日公開分で同じくフィジカルシングル初加算に伴い2位を獲得した一方、翌週は50位に後退しています。

日本の男性アイドルグループ/ダンスボーカルグループはデジタルを解禁していても、フィジカルセールスが強い一方でデジタルに不得手な歌手が多く、フィジカルセールス指標初加算の翌週に総合チャートで急落することが目立つ状況です。仮に「halfmoon」がチャートを制すれば今年度STARTO ENTERTAINMENT関連曲では初となりますが、5月29日公開分のチャート動向以上に翌週どの位置にいるかが、重要だと捉えています。

 

 

(上記はKing & Prince|15th single 「halfmoon / moooove!!」よりキャプチャしたもの。問題があれば削除いたします。)

King & Princeはデジタル解禁に伴い施策を充実させています。キャンペーンの徹底、スケジュール一覧の掲載に加えてフィジカルセールス週の月曜に表題曲をデジタルリリースしました。ビルボードジャパンソングチャート制覇を掲げ、そのためにチャートの特徴等をきちんと研究していることがうかがえます。

一方、昨日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)でコラボレーション企画に用いられた「なにもの」がデジタル未解禁であることが気になります。昨日のパフォーマンスやデジタル解禁を機に曲が気になった方が「なにもの」に辿り着けない状況は機会損失でしょう。カタログ全曲のデジタル発信(YouTubeでのミュージックビデオフルバージョン化含む)は必須だと考えます。

 

 

最後に。今作「halfmoon」「moooove!!」においてはフィジカルセールスが前作よりダウンする可能性が低くなく、ともすればフィジカルセールスのみのランキングで首位を逸するかもしれません。既にゴシップ的メディアによる指摘も登場しているようです。ただフィジカルセールスは、リリースの種類や同梱物、タイアップ先の作品が社会的ヒットに至っているか等でも少なからず、時にはやや大きく変動する傾向があります。

デジタル化に伴い微減することは考えられるものの、デジタルヒットがフィジカルセールスの持続につながる可能性もあること(すなわちデジタルの整備がライト層からコアファンへ昇華しやすい環境につながっていること)は考慮した上で、広い視野にて見極める必要があります。大幅なダウンならば対策を講じる必要はありますが、廃盤の概念が基本存在しないデジタルは利益の長時間での確保が可能です。

今作「halfmoon」「moooove!!」を含むフィジカルシングルは、「シンデレラガール」のリリースに合わせて発売日を5月23日木曜に設定しています。日本でデフォルトとなっている水曜リリースではないゆえにビルボードジャパンのフィジカルセールス速報記事では登場せず、オリコンでも火曜および水曜がいわゆるフラゲ日の扱いとなったことは考慮する必要があります。

 

先述したように、音楽チャートにおいて重要なのは週間チャート制覇以上にロングヒットや年間チャートへのランクインです。デジタルを解禁してもその域に達する曲はわずかだとして、しかし解禁によりロングヒットの可能性が高まるのみならず、過去曲もTikTok等で人気が再燃しフックアップされる可能性が生まれます。メディア等にはマイナス面だけを述べるのではなく、これら可能性について客観視することを願います。