イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ロングヒットの推移を見守るより、攻め続けることが重要…Da-iCE「CITRUS」から考える

週間チャートを制することも重要ですが、それ以上にロングヒットに至り年間チャートで上位進出することが真の社会的ヒット曲だというのが私見。2021年度のビルボードジャパン年間ソングスチャートのラインナップから、みえてくるものがあるはずです。

上記ブログエントリーでも紹介しましたが、ビルボードジャパンでは2022年度初週にソングスチャートのチャートポリシー変更を実施し、フィジカルセールス指標のウエイトダウン(係数処理適用枚数引き下げ)を行いました。第1四半期はフィジカルセールスに強い曲が多くないこともありますが、ストリーミング指標のトップ10と総合チャートのそれとがより密接になっており、チャートが真の社会的ヒットと成ったと感じます。

 

さて、2022年度ビルボードジャパンソングスチャートの第1四半期において、トップ10に肉薄しているのがDa-iCECITRUS」です。ドラマ主題歌としてリリース後、THE FIRST TAKE出演を機に上昇。THE FIRST課題曲起用や歌唱分析動画の人気、そして日本レコード大賞受賞でさらに高いフェーズに突入しています。このブログでも幾度となく取り上げています。

昨年秋にストリーミング1億回再生を突破した「CITRUS」は、日本レコード大賞受賞のタイミングで年末年始を集計期間とする1月5日公開(1月10日付)ビルボードジャパンソングスチャートにて初のトップ10入り。その後10位前後をキープし、最新3月16日公開分(3月21日付)では17位となっています。

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このDa-iCECITRUS」のビルボードジャパンにおけるチャートアクションについて、先日記事が登場しました。

記事には引っかかる表現が。『サブスク時代に入ってから、長期に渡るロングヒットが生まれるようになった。代表的なところでは、星野源「恋」やOfficial髭男dism「Pretender」など』とありますが、星野源さんのサブスク解禁は2019年8月末であり「恋」リリース当時は解禁されていません。しかしながら、サブスクが浸透した現代にあってはロングヒットが通常となったのは間違いありません。

事実、上記CHART insightでの総合ソングスチャートの順位(黒で表示)は日本レコード大賞を機に高いフェーズに突入しています。その一方、「CITRUS」の獲得ポイントは直近4週では前週割れを続けています

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テレビ出演が特にダウンロード指標を大きく動かすことは【ビルボードジャパン最新動向】『劇場版 呪術廻戦0』や年末音楽特番が影響を及ぼしたチャートを振り返る(1月8日付)でも紹介。その週はポイントが大きく上昇しながらも翌週以降に反動が表れる形です。実際、2月16日公開分(2月21日付)でも集計期間初日の『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)出演効果でダウンロード指標が上昇し、ポイントも14.3%アップしています。

しかしながら、テレビ出演等がなければポイントは下がる傾向にあります。

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最新ソングスチャートにおけるポイント前週比を上記に。ストリーミング指標はLINE MUSIC再生キャンペーン対象曲でない限り急激に聴かれなくなるものではなく、再生回数やポイントのダウン幅は大きくありませんが、しかし緩やかにダウン。ロングヒット曲の場合は前週の9割強というのが自分の見方です。なお最新チャートでポイントを伸ばしたBTSの英語詞3曲については昨日のブログエントリーにてまとめています。

ゆえに、ビルボードジャパンの記事における「CITRUS」ロングヒットのフェーズ突入は間違いないと考える一方で、話題と成る手段がなくなれば緩やかにダウンするという視点が必要だとも考えます。これは「CITRUS」に限らずどの曲においても同様です。

 

そんな中、「CITRUS」に強力な援軍が表れたと言えるかもしれません。

ダウンロードのみならずサブスクでも配信されていますが、演歌風のアレンジが見事だと感心させられます。

上記動画の概要欄には『Da-iCEさんが「小林幸子さんに歌ってみて欲しい!」と話したことを、ファンの方々が私に届けてくれました』とあり、このカバーに至ったことが解ります。Da-iCE側もファンの方々もチャートの底上げを目的として願ったわけではないかもしれませんが、ともすればその面でもプラスに作用する可能性は十分です。

 

 

ロングヒット曲が緩やかにダウンする傾向を打破するために、年間ソングスチャートで上位に進出するためにどうするか、歌手側にもコアなファンにとっても重要な課題です。今回紹介した小林幸子さんバージョンの「CITRUS」が人気になり、本家Da-iCE版が再浮上に至るならば、ロングヒットの推移を見守るのではなく攻め続けていく仕掛けを施すことを、どの歌手においても考慮する必要が出てくるでしょう。