イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) ビルボードジャパンソングチャート、デジタル先行解禁曲が上位進出の前週に”全指標未加算”となるパターンを考える

(※追記(4月23日5時44分):今回のエントリーにて紹介した傾向について、2026年度(4月15日公開分まで)におけるビルボードジャパンソングチャートでの事例を追記しています。)

 

 

 

毎週土曜のエントリーでは、前週のビルボードジャパンソングチャートで初めてトップ10入りした曲の最新動向をチェックしています。昨日付の内容はこちら。

その際紹介したKID PHENOMENON from EXILE TRIBE「Mirror」は、4月8日公開分(集計期間:3月30日~4月5日)のビルボードジャパンソングチャートで10位に登場した後、当週(集計期間:4月6~12日)にて100位未満へ後退。当週のCHART insightをみると、同曲はフィジカルセールス指標(黄色で表示)のみの獲得にとどまっています。

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。また、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)

「Mirror」はフィジカルリリースの1週間前である3月25日にデジタルリリースされています(4/1発売シングル「Mirror」先行配信決定!! | KID PHENOMENON | ソニーミュージックオフィシャルサイト参照)。しかしながら同曲ではダウンロード(CHART insightでは紫で表示)、ストリーミング(青)および動画再生(赤)といったデジタル指標群が、フィジカルセールス指標初加算前に加点されることはありませんでした。

 

デジタルがフィジカルに先駆けてリリースされた曲が、フィジカルセールス指標初加算時に総合トップ10入りすることは少なくありません。しかしその前週、1指標も300位以内に入らず未加点となることが散見されます。以下に、2026年度における事例を紹介します。

 

 

フィジカルリリースの前週までにデジタルを先行解禁するもフィジカルセールス指標初加算時の前週にどの指標も300位以内に入らないという状況については、大きく分けてふたつのパターンが存在します。ひとつはデジタルで先行でリリースするも各指標300位以内に入らず未加点という状況、もうひとつはデジタル先行リリース分が加算されるも継続せずにフィジカルセールス指標初加算前に勢いが一旦途絶えるという状況です。

CHART insightは総合100位未達の場合でも、1指標でも300位以内に入れば作成されます。しかしフィジカルセールス指標初加算時になってはじめてCHART insightが作成されるデジタル先行リリース曲は、実は少なくありません。

 

 

デジタルで先行でリリースするも各指標300位以内に入らず未加点のまま、フィジカルセールス指標初加算時にCHART insightがはじめて作られた例としてはパンダドラゴン「Winter Song 防衛隊」が挙げられます。昨年12月24日公開分で総合ソングチャート3位に登場した翌週には100位未満に後退した同曲は、12月17日のフィジカルセールスに先駆ける形で11月23日にデジタルリリースされています。

(パンダドラゴン「Winter Song 防衛隊」のCHART insightは2026年1月7日公開分が最終表示となっています。)

 

一方、デジタル先行リリース分が加算されるも継続せずにフィジカルセールス指標初加算前に勢いが一旦途絶える例として、SUPER★DRAGON「Break off」があります。3月4日のフィジカルリリースに先駆け1月5日にデジタルリリースされた同曲は、フィジカルセールス指標初加算となった3月11日公開分で総合6位に登場した翌週に65位へ後退していますが、CHART insightからはストリーミング指標(青で表示)の加点が見て取れます。

SUPER★DRAGON「Break off」におけるストリーミング指標の加点は、同曲がデジタル先行配信時にLINE MUSIC再生キャンペーンを実施したことに伴います。1月14日公開分以降この指標が加点されていましたが、2月1日を集計期間最終日とする2月4日公開分を最後に途絶え、他指標も加点されないままフィジカルセールス指標の初加算を待った形です。

 

 

パターンが異なるふたつの事例を挙げましたが、しかし共通しているのはアイドルやダンスボーカルグループの作品であること、そしてダウンロード指標の高くなさです。アイドルやダンスボーカルグループの作品は所有指標が長けているという印象があるのですが、この点からは該当曲を輩出した歌手のコアファンがフィジカルの所有に積極的な一方でデジタルの所有にはそこまで関心が高くないということが読み取れます。

 

 

そしてもうひとつ、音楽チャート(そしてその先)への関心の高くなさもみえてくるのではというのが私見です。

 

近年は特に男性アイドルやダンスボーカルグループ(BE:FIRSTやNumber_i等)がフィジカルリリース時、またデジタルオンリーの作品であっても初動の最大化に努める動きが見て取れます。リスニングパーティーの開催やラジオ向け施策の用意がその代表例ですが、同時にコアファンにおける音楽チャートへの関心(それに伴う施策への参加)もみえてきます。

このブログでは音楽チャートに意識的なコアファンの集まりをファンダムと定義していますが、このファンダムが存在するかが音楽チャートの初動に端的に表れると捉えています。また先程は”音楽チャート(そしてその先)への関心”と記しましたが、これはビルボードジャパンの主要チャートが『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場歌手選考に関わることから記した次第であり、目標をそこに設定しているならば関心は重要です。

 

 

ではこのチャートアクションを変えるためにどうするかですが、今回の採り上げたチャートアクションをなぞった歌手に対しては、LINE MUSIC再生キャンペーンの採用を勧めたいと思います。とはいえSUPER★DRAGON「Break off」のような形よりも、最新ソングチャートを制した乃木坂46に代表される坂道シリーズが採るような、フィジカルリリース時にも開催期間を被せる形での企画の開催が重要です。

ただし、音楽チャート分析者としてはこのキャンペーン自体を疑問視しています。本来はライト層(歌手のファンではないが曲が気になる方)の支持が反映されやすいストリーミング指標にコアファンの熱量が投入されること、高い再生回数ハードルを設けるためにコアファンに物理的/精神的負担を強いかねないこと、通常は急落しないストリーミング指標にあってキャンペーン終了直後に急落する可能性が高いこと等がその理由です。

 

ではなぜ勧めるかですが、ひとつは歌手のコアファンを音楽チャートに意識的なファンダムにすることです。再生キャンペーンを用いる際、その目的を明確にすることで意識は高まっていくかもしれません。現在は初動ストリーミング数に長けている歌手の中には以前LINE MUSIC再生キャンペーンを行っていた方もいらっしゃるため、コアファンのファンダム化という点では必要なことではないかと考えた次第です。

そしてそのキャンペーンを採用することで、他のデジタル指標群を盛り上げる施策にも歌手側が積極的に成るかもしれないというのが、勧めるもうひとつの理由です。そのような意識付けにもつながるならば、ひとつの契機としてLINE MUSIC再生キャンペーンは有効に作用するかもしれません。ただし軌道に乗ったならば今後はそこから脱却し、ライト層獲得にシフトすることが重要と考えます。

 

 

さて、フィジカルセールス指標初加算の前週に1指標も300位以内に入らず未加点という事例には3パターン目が存在します。

 

Ryosuke Yamada「Blue Noise」は1月21日公開分でフィジカルセールス指標初加算に伴い総合ソングチャート4位に登場した翌週に100位未満へ後退。一方でデジタルはフィジカルリリース日と同じ1月14日に解禁されています。

またKing & Prince「Waltz for Lily」は4月1日公開分で首位に立った翌週に15位へ後退。こちらはフィジカルリリースの2日前となる3月23日にデジタルを解禁し、フィジカル/デジタル同週初加算のタイミングで首位の座を獲得しています。このスケジューリングもまた施策の一環と呼べるものですが、一方で2曲共にフィジカル/デジタル指標群の初加算前に動画再生指標(CHART insightでは赤で表示)が300位以内に入っています。

 

Ryosuke Yamada「Blue Noise」は昨年12月21日にミュージックビデオを解禁したことが同年12月31日公開分の動画再生指標初加算に反映。一方、King & Prince「Waltz for Lily」のミュージックビデオ解禁日はデジタル解禁と同日ですが、同曲の東京ドーム公演におけるパフォーマンス映像が3月6日に公開されたことで、3月11日公開分の動画再生指標加点に反映されています。

フィジカルセールス指標初加算の前週に1指標も300位以内に入らず未加点という事例の3つ目は、偶然かもしれませんがSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品となります。しかしながら所属歌手がフィジカルリリースに先駆けてミュージックビデオ等を積極的に公開する傾向にあることを踏まえれば、その流れでの動画公開がこのようなチャートアクションにつながったのかもしれません。

またこのパターンに該当する事例として、芸能事務所の区別なくラジオ先行解禁という施策を採った場合も当てはまるものと考えます。

 

 

今回は、フィジカルに先駆けてデジタルリリースした曲がフィジカルセールス指標初加算の前週に1指標も300位以内に入らず未加点となる事例をお伝えしました。3つのパターンがありますが、いずれにおいても上位進出の翌週に総合トップ10内をキープできていないという点が共通しています。歌手側がコアファンのデジタルや音楽チャートへの意識を高めること、そしてライト層へ伝播させることに積極的に成るよう願います。

 

今回の事例として紹介したパンダドラゴン「Winter Song 防衛隊」については、先週のエントリーで紹介した”ヒットの8段階”では第1段階にとどまると位置付けました。他の作品においても、高くて第2段階というのが厳しも私見であり、社会的ヒットを目指すには第5段階以降へのステップアップが必要と考えます。

 

 

 

※追記(4月23日5時44分)

 

今回紹介した傾向について、2026年度(4月15日公開分まで)におけるビルボードジャパンソングチャートでの事例を以下に掲載します。

 

<2026年度のビルボードジャパンソングチャートでフィジカルセールス指標初加算に

 伴い総合トップ10入りした曲の、前週全指標未加点作品におけるCHART insight>

 

 ※ 総合10位以内初登場時、およびその翌週のCHART insightを掲載

 

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

・SUPER★DRAGON「Concealer」

 2025年12月10日公開分 5位→12月17日公開分 100位未満

 デジタルリリース日:2025年11月3日

 フィジカルリリース日:2025年12月3日

 

・KID PHENOMENON from EXILE TRIBE「Black Flame」

 2025年12月10日公開分 9位→12月17日公開分 100位未満

 デジタルリリース日:2025年10月9日

 フィジカルリリース日:2025年12月3日

 

・≠ME「排他的ファイター」

 2025年12月17日公開分 3位→12月24日公開分 100位未満

 デジタルリリース日:2025年11月19日

 フィジカルリリース日:2025年12月10日

・僕が見たかった青空「あれはフェアリー」

 2025年12月24日公開分 2位→12月31日公開分 100位未満

 デジタルリリース日:2025年11月15日

 フィジカルリリース日:2025年12月17日

・パンダドラゴン「Winter Song 防衛隊」

 2025年12月24日公開分 3位→12月31日公開分 100位未満

 デジタルリリース日:2025年11月23日

 フィジカルリリース日:2025年12月17日

・OCTPATH「スターライトランデブー」

 2025年12月24日公開分 4位→12月31日公開分 100位未満

 デジタルリリース日:2025年12月1日

 フィジカルリリース日:2025年12月17日

・Kis-My-Ft2「&Joy」

 2026年1月7日公開分 2位→1月14日公開分 40位

 デジタルリリース日:2025年11月12日

 フィジカルリリース日:2025年12月31日

・Ryosuke Yamada「Blue Noise」

 2026年1月21日公開分 4位→1月28日公開分 100位未満

 デジタルリリース日:2026年1月14日

 フィジカルリリース日:2026年1月14日

・AKB48「名残り桜」

 2026年3月4日公開分 3位→3月11日公開分 54位

 デジタルリリース日:2026年2月2日

 フィジカルリリース日:2026年2月25日

・STU48「好きすぎて泣く」

 2026年3月11日公開分 4位→3月18日公開分 100位未満

 デジタルリリース日:2026年2月18日

 フィジカルリリース日:2026年3月4日

・SUPER★DRAGON「Break off」

 2026年3月11日公開分 6位→3月18日公開分 65位

 デジタルリリース日:2026年1月5日

 フィジカルリリース日:2026年3月4日

・aoen「秒で落ちた」

 2026年3月25日公開分 8位→4月1日公開分 100位未満

 デジタルリリース日:2026年3月9日

 フィジカルリリース日:2026年3月18日

・THE JET BOY BANGERZ from EXILE TRIBE introduced by Zeebra「HEAD UP」

 2026年3月25日公開分 9位→4月1日公開分 100位未満

 デジタルリリース日:2026年2月25日

 フィジカルリリース日:2026年3月18日

・King & Prince「Waltz for Lily」

 2026年4月1日公開分 1位→4月8日公開分 15位

 デジタルリリース日:2026年3月23日

 フィジカルリリース日:2026年3月25日