イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり)【ビルボードジャパン最新動向】『劇場版 呪術廻戦0』や年末音楽特番が影響を及ぼしたチャートを振り返る

(※追記(2023年1月3日5時47分):はてなブログにてビルボードジャパンのホームページを貼付すると、きちんと表示されない現象が続いています。そのため、表示できなかった記事についてはそのURLを掲載したビルボードジャパンによるツイートを貼付する形に切り替えました。)

 

 

 

最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

2021年12月27日~2022年1月2日を集計期間とする2022年1月5日公開(2022年1月10日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)は、年末年始進行の関係で昨日発表。King Gnu「一途」が首位を獲得し、King Gnuはキャリア初の頂点に到達しました。

今回のチャートは、主にふたつの側面から語ることができます。

 

ひとつは、映画『劇場版 呪術廻戦0』の特大ヒット効果です。

『劇場版 呪術廻戦0』は現段階で興行収入が67億円を記録する特大ヒットに。新型コロナウイルスの再拡大に伴いその動きは鈍るかもしれませんが、映画の勢いは関連曲に波及しています。

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「一途」は最新ソングスチャートにてフィジカル関連指標初加算。それでもフィジカルセールスおよびルックアップ指標によるポイントは全体の3割に満たないことが上記CHART insightから見て取れます(フィジカルセールスは黄色、ルックアップはオレンジで表示)。デジタル関連指標が「一途」の好調を支えていることが解ると共に、今回300位以内に初登場したカラオケ指標(緑)が今後のプラス材料と成ることでしょう。

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さらに、ダブルAサイドシングルの1曲ながらフィジカル関連指標が加算されない*1「逆夢」も、9ランクアップし3位に到達。1月5日水曜にはミュージックビデオが公開され、次回のソングスチャートで動画再生指標も加点されることを踏まえれば、ともすればワンツーフィニッシュもあり得るかもしれません。なお今回のソングスチャートにおけるポイント前週比は「一途」が147.1%、「逆夢」が162.6%と驚異的です。

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さらにはテレビアニメ版『呪術廻戦』の第1クールオープニング主題歌となったEve「廻廻奇譚」も上昇気流に乗り、一気に22位まで再浮上。これは『呪術廻戦』というコンテンツ自体の人気の凄さを物語っていると言えるでしょう。

次週は『呪術廻戦』関連の3曲に注目しましょう。またSpotifyではKing Gnu自体の再生回数が上昇していることから、「白日」を含む彼らの作品の動向にも注目です。

 

 

今回のチャートを語る上で欠かせないのは『呪術廻戦』のみならず、年末に放送された音楽特番の影響も外せません。

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1月5日公開分(1月10日付)ビルボードジャパンソングスチャートでトップ10返り咲きを果たしたのはKing Gnu「逆夢」のほか、マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」(13→6位)、Da-iCECITRUS」(42→7位)、藤井風「きらり」(37→9位)およびAwesome City Club「勿忘」(34→10位)。「きらり」は昨年9月15日公開分、「勿忘」は昨年4月28日公開分以来の返り咲きとなり、そして「CITRUS」は初のトップ10入りを果たしました。

これは日本レコード大賞Da-iCECITRUS」が、最優秀新人賞をマカロニえんぴつが受賞したこと、またNHK紅白歌合戦で藤井風さんが注目されたこと、双方にてAwesome City Clubが出演したことが影響しています。ポイント前週比は「なんでもないよ、」が前週比108.0%、「CITRUS」が同190.4%、「きらり」が同169.3%、「勿忘」が同158.0%となり、注目の高さがうかがえます。

元日までのSpotifyの動向を踏まえて上記ブログエントリーを記載しましたが、藤井風さんはアルバム『HELP EVER HURT NEVER』(2020年)が1月5日公開分ビルボードジャパンアルバムチャートで63→8位、カバー集『HELP EVER HURT COVER』も100位未満(300位圏内)→20位へジャンプアップを果たし、藤井風さんが如何に注目を集めたかがはっきりと示された形です。

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ソングスチャートに話を戻すと、マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」以外の3曲はいずれも、ストリーミング再生回数が1億回を突破しています。昨年9月15日公開分にてこのようなリストがビルボードジャパンから公式アナウンスされ、3曲すべて掲載されています。

ストリーミング1億回再生が新たなヒットの基準になっていることは、リスト掲載曲の認知度の低くなさから解るでしょう。そしてこの3曲は、(Da-iCEにおいては昨年春の総合ソングスチャート100位以内への再ランクイン以降)ストリーミング(CHART insightでは青で表示)および動画再生(赤)といった接触指標群が100位以内を常時キープ。今回これら接触指標群も上昇していますが、さらに際立った上昇を示す指標が。

紅白や特番などで披露された楽曲が軒並み上昇している。Awesome City Clubが紅白に初出場した際にパフォーマンスした映画『花束みたいな恋をした』の主題歌「勿忘」は前週26位から大きくジャンプアップし、最高位となる4位についた。また『第63回輝く!日本レコード大賞』で大賞に選ばれたDa-iCEの「CITRUS」は前週86位から5位に浮上し、チャートイン51週目にして初のトップ10入りを果たした。

(中略)

こちらも紅白初出場となった藤井 風が自宅から弾き語りした「きらり」は前週70位から7位へ大きく順位を上げ、同じく紅白でパフォーマンスされたYOASOBIの「群青」も前週40位からトップ10に返り咲いた。

最新1月5日公開分ソングスチャートにおけるダウンロード指標(CHART insightでは紫で表示)の順位は、今回紹介した3曲いずれもジャンプアップしています。以前からこのブログにて、テレビの影響がこの指標に如実に反映されると紹介していますが、今回その通りの結果に。曲への馴染みが深い方は繰り返し聞く姿勢を強化し、あまり知らなかった方はその興味がまずは所有へ向かうだろう状況が可視化されたと言えます。

Da-iCECITRUS」の日本レコード大賞受賞には一部否定的な見解もみられますが、既にストリーミング1億回再生という箔はついており受賞は妥当だったと上記ブログエントリーで記しました。またそのエントリーでも触れましたが、Da-iCEはなぜかテレビ露出できていないためにこれまで見つかりにくかったと言えるわけで、今回のチャート結果は「CITRUS」が、そして彼ら自身が遂に見つかったことを示すものと考えます。

 

採り上げた3曲のうち「CITRUS」のみシングルとしてフィジカルリリースされているものの発売枚数は限定されており、3曲ともフィジカル関連指標がソングスチャートに(ほぼ)反映されない状況の中でポイント前週比150%以上を達成したわけです。デジタル環境を整備し常に所有および接触できる状況を作ることにより、きっかけがあれば所有指標中心に伸びて総合チャート再浮上が可能となることが今回証明されたと言えます。

*1:フィジカル関連指標はダブルAサイド、トリプル…等において1曲のみに加算されます。