イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2022年における日本の音楽業界への要望を記す

あけましておめでとうございます。ブログ【イマオト - 今の音楽を追うブログ -】は昨日公開分で毎日更新8年目に突入しました。2022年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

さて、2020年末にこのようなブログエントリーを記しました。

① 新曲のデジタル解禁を徹底してほしい

② 旧譜のデジタルアーカイブも徹底してほしい

③ 歌手別にYouTubeアカウントを用意してほしい

④ テレビパフォーマンス映像のYouTube配信を徹底してほしい

⑤ 金曜リリースを標準化してほしい

⑥ 日本の音楽業界を代表する賞を創設してほしい

⑦ 邦楽のベストアルバムを提示する場所を用意してほしい

ビルボードジャパンはソングスチャートの構成指標等の見直しを行ってほしい

⑨ 行政がエンタテインメントを大事にする姿勢を持ってほしい

この9項目には全くもって叶っていないものもあれば、少しずつ兆しがみえているものもあります。さすがに1年でどうにかなるものではないとして、数年を経て日本の音楽業界が大きく変わっていくことを願うばかりです。

 

日本の音楽業界に自分が望む変化…そのひとつは健全化、もうひとつは世界におけるJ-Popの浸透です。そこで2022年における日本の音楽業界への要望を、前回とは別にして以下に記します。

 

2022年における日本の音楽業界への要望

ビルボードジャパンの絶え間なき革新

デジタルアーカイブの充実

③ 音楽業界およびメディアの枷の撤廃

④ サブスクの普及

ビルボードジャパンの認知度向上

 

ビルボードジャパンの絶え間なき革新】においては、ビルボードジャパンは2021年度にソングスチャートで四度、四半期に一度のペースでチャートポリシー(チャート集計方法)を変更しています。同年度においてもフィジカルセールスのみに強い曲の週間チャート制覇→翌週の急落は大きくは変わりませんでしたが、それを踏まえて2022年度初週にもチャートポリシーが変更されました。より好いチャートを目指す姿勢が見えます。

今後はデジタルにおいても様々な変化が出てくるかもしれず、その変化にも柔軟に対応したチャートポリシーになることを願います。その点には希望的観測を抱く一方で、昨年はチャート発表時の問題が散見されたことが否めず、チェック体制等の強化もまた強く願うところです。

 

デジタルアーカイブの充実】において、J-Popの新譜がフィジカルの発売と同時にサブスク解禁されることが増えています。宇多田ヒカルさんにおいてはデジタル解禁をフィジカルリリースに先駆けるという海外の動きを踏襲。異論も生まれるかもしれませんが、J-Popでもこの動向が増えていくはずです。

一方で、この1年のリリース作品においてはたとえばMr.Children『SOUNDTRACKS』やB'z『FRIENDS III』がサブスク解禁を遅らせています。未だにフィジカル等所有指標を優先させる姿勢に、日本の音楽業界がまだ変わりきっていないことを感じずにはいられません。

(この点について、ビルボードジャパンがアルバムチャートを米ビルボード同様にストリーミング指標を取り込んだものへ変更することで、日本の音楽業界の改革を促すことができるのではと考えます。接触指標でもあるルックアップは既に構成要素の一部となっていることから、ビルボードジャパンはその導入を議論してほしいと願います。)

また、未だデジタル解禁に至っていない歌手は少なくありません。特に日本の音楽業界やメディアに大きな影響を与え続けるジャニーズ事務所(所属歌手)においては、嵐が全面解禁した一方でその他の歌手はKinKi Kidsのソロプロジェクトを除き、未だ充実していない状況です。その中で昨年デビューしたなにわ男子は「初心LOVE」においてできる限りのデジタルアプローチを施しヒット。ゆくゆくはサブスクも…そう願うばかりです。

 

【音楽業界およびメディアの枷の撤廃】については直近で挙げたブログエントリーでも触れたように、ビルボードジャパンソングスチャートを制したBE:FIRST「Gifted.」や同曲と争ったINI「Rocketeer」、そして一昨日開催の日本レコード大賞を受賞したDa-iCECITRUS」等、男性ダンスボーカルグループ(男性アイドルグループ)のヒット作品が十分メディアで披露されていない状況です。

Da-iCE日本レコード大賞受賞を機に、音楽業界、そしてなによりメディアが、主に自身の保身を目的に用意し続ける枷を自発的に外すか、私たちは注視しなければなりません。

 

【サブスクの普及】については、特に年配者へ拡大させる必要があると考えます。音楽ジャーナリストの柴那典さんが昨日寄稿した記事からは、60代以上と50代以下の大きな差が見て取れます。

ドライフラワー」は10代〜50代でTOP5入りし、「うっせぇわ」も同じく10代〜50代でTOP10入り。「夜に駆ける」と「炎」は全世代でランクインしている。

ただし、60代のランキングは他の世代とはがらっと様相が異なっている。1位は『水戸黄門』主題歌の里見浩太朗/横内正「あゝ人生に涙あり」で、2位は高橋真梨子「桃色吐息」。この世代の上位は演歌・歌謡曲が中心だ。

こうして見ると、2021年においては、少なくとも10代から50代までの世代では「最近のヒット曲」を共有していることが明らかになったと言えるだろう。

50代までによく歌われていると紹介された2020年以降のリリース曲ではLiSA「炎」以外、シングルではフィジカルリリースされていません。優里「ドライフラワー」は今月のアルバム発売に至るまでフィジカルが登場しませんが、にもかかわらず人気なのは50代までがデジタルに親しみを持っているゆえと言っていいでしょう。

これはTikTokで人気となった和田アキ子「YONA YONA DANCE」と共に紹介した、紅白出場(当時は予定)の演歌・歌謡曲歌手におけるチャート動向からも見て取れます。旧態依然の売り方に固執することは、新しいものを覚えにくいであろう年配者には一見優しいかもしれませんが、しかしより多くの金銭を伴わせます。それでいてその拡がり方は「YONA YONA DANCE」とは雲泥の差と言えるのです。

個人的には、YouTubeでのサブスク利用説明およびラジオ番組の用意という、両極ともいえるふたつの手段を同時に駆使し、サブスクの楽しさ、さらに新しい曲に触れられる喜びを実感してもらうことが最善と考えます。2022年元日に、演歌界の大御所である北島三郎さんが一挙解禁したことは、サブスクの流れを年配者にも浸透させる大きなきっかけになるかもしれません。

 

デジタルアーカイブの充実】【音楽業界およびメディアの枷の撤廃】そして【サブスクの普及】については、【ビルボードジャパンの認知度向上】がさらなる後押しにつながると考えます。メディアでもビルボードジャパンを扱う音楽番組や情報番組は増えました。しかし一方で、最新チャートを紹介するメディアはほぼありません。これは認知度向上等に対する大きな機会損失だと考えます。

最新チャート発表においても、YouTubeやラジオという両極のメディアを使っていち早く紹介することが必要と考えます。個人的にはポッドキャスト(Billboard Top Hits)を公開日の夜に更新していますが(上記リンク先参照)、YouTubeの拡散力を踏まえれば使わない手はありません。動画編集ができていたならば…自分は悔しい思いに駆られています。

 

 

以上、2021年版と一部被る部分もありますが、今年の音楽業界、そしてメディアへの希望を5つ記しました。少しでも前進することを願うばかりです。そしてそれが叶うことで、J-Popのグローバルヒットの可能性は高まるはずです。

 

最後に自分の希望を記すならば、チャートを紹介する立場としてラジオに出演したいと強く願っています。チャート発信プログラムが生まれるならば尚の事嬉しいですね。叶えるべく今年も精進していきますので、よろしくお願いいたします。