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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン『国内アイドル/ダンスボーカルグループ ストリーミング1億超え曲一覧』から考えること

ビルボードジャパンは毎週水曜にストリーミング再生回数が一定基準を超えた作品について紹介していますが、当週はアイドルやダンスボーカルグループにおいて新たに2曲が1億回再生を突破したこともあってか、このようなポストを発信しています。なお下記一覧は、”国内アイドル/ダンスボーカルグループ ストリーミング1億超え曲”がより正確な表現でしょう。

一方でこの一覧については補足すべきと考える点があり、今回のエントリーで記載します。

 

 

国内アイドル/ダンスボーカルグループ ストリーミング1億超え曲一覧について補足すべきと考える点、1つ目はLINE MUSIC再生キャンペーン実施曲の存在です。

たとえばBE:FIRST「Bye-Good-Bye」(2022)は初登場時に週間1354万回の再生数を記録していますが、同曲は再生キャンペーンを採用。また、この曲のストリーミング指標2連覇に続きINI「CALL 119」(2022)がキャンペーン採用に伴い3連覇を果たしていますが、LINE MUSICは同年秋までに再生回数のカウント方法を変更し、ビルボードジャパンも再生キャンペーンに対するチャートポリシー(集計方法)変更を実施しています。

毎週土曜に掲載しているCHART insightからヒットを読む カテゴリーのブログエントリーではビルボードジャパンおよび各サブスクサービスの上位曲をまとめたストリーミング表を掲載していますが、LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲は現段階でも同サービスで上位に進出する傾向です。しかし先述したBE:FIRST「Bye-Good-Bye」のみならず、NiziU「Make you happy」(2020)や、BTSの英語詞曲でも企画が採用されていました。

つまりは再生キャンペーン終了後もきちんと再生されている曲が、ストリーミング1億回再生を突破するということがみえてきます。ただしLINE MUSIC側が再生キャンペーン採用曲の再生回数をダイレクトに反映していたということは、考慮に入れる必要があります。

 

ふたつ目は公式リスニングパーティー等に基づくコアファンの熱量と、そこから生じるサブスクサービス間の乖離について。この点は昨日ポストにて記しています。

最後のポストはMUSIC AWARDS JAPAN、発表されたノミネート内容や経緯を踏まえて改善策を提案する(4月21日付)で記載した内容とリンクしますが、この点においてはNumber_iが顕著かもしれません。直近ではジャクソン・ワン「GBAD」に客演参加したリミックス版がリリースされていますが、Spotifyにおいてはデイリートップ10入りした一方でApple MusicやLINE MUSICでは直近にて100位以内に入っていません。

無論これはNumber_iに限ったことではありませんが、彼らのコアファンは音楽チャートへの意識が高く、再生回数が可視化されるSpotifyにて50位以内に「GBAD (Number_i Remix)」を含む5曲がエントリーを続けています。ゆえに、他のサブスクサービスで高くないという状況がより気になるというのが率直な私見です。K-POP作品ですがJIMIN「Who」やJIN「Running Wild」においても同様の考えを持ち合わせています。

 

そして最後は、ビルボードジャパンソングチャートにおけるチャートポリシーの限界についてです。

ともすれば先程のストリーミング再生回数1億回超えの一覧に、DA PUMP「U.S.A.」がランクインしていないことを疑問に思う方は少なくないのではないでしょうか。同曲のCHART insightをみると、ストリーミング指標は2020年2月26日公開分を最後に加点が途切れ、復活するも同年12月23日公開分が最後の加点となっています。

これはビルボードジャパンソングチャートが構成全指標について300位までを加点対象としていることで、DA PUMP「U.S.A.」の再生回数が加算されなかったことに伴うものと考えます。MUSIC AWARDS JAPAN、発表されたノミネート内容や経緯を踏まえて改善策を提案する(4月21日付)でも述べたように、弊ブログでは最も影響力のあるストリーミング指標の加算対象を少なくとも500位までにすることを提案していますが、仮にこれが叶ったならば「U.S.A.」は1億回再生突破した可能性が高いはずです。

 

 

最後の項目についてはビルボードジャパンに対し随時議論することを希望します。またひとつのサブスクサービスに偏る形で再生回数が大台を突破する曲は今後も登場するかもしれません。それでも、ビルボードジャパンが提示した国内アイドル/ダンスボーカルグループにおけるストリーミング1億回再生突破曲の多くは、広く国民に認知されている作品といえるでしょう。

そしてこのラインナップにおけるSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手の作品は1曲のみ、加えて2010年代後半以降の作品での1億回超えはゼロという状況です。これはサブスク解禁が後手に回ったことがその一因と断言してよく、本日一本目のエントリー(上記参照)で紹介したSnow Man『THE BEST 2020 - 2025』のデジタル解禁がフィジカルリリースから遅れたことも、同事務所のスタンスの一端だといえるのではないでしょうか。

その中にあって、元Sexy Zone中島健人さんがキタニタツヤさんと組んだ「ファタール」は昨年暮れに1億回再生を突破しています。アニメタイアップということも要因とはいえ、デジタルをきちんと解禁し動画等でもプロモートすることが功を奏した形です。このような実績、また嵐による過去曲の大台突破も踏まえれば、現在活躍する、そして過去に所属した歌手による作品のデジタル化に対し前向きになることは必要です。