イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

映像作品とのコラボや追加発信が新しいヒットの形に…wacci、ケイト・ブッシュおよびメタリカの例

昨日は日本のSpotifyデイリーチャートで新たにトップ50入りを果たし、今後ビルボードジャパンソングスチャートを賑わす存在になるであろう曲について紹介しました。

今回紹介するのはwacci「恋だろ」。4月15日に配信リリースされたこの曲は、最新7月7日付の日本におけるSpotifyデイリーチャートでは56位に入り、トップ50(プレイリスト)入りに近い存在と言えます。

この日本におけるSpotifyデイリーチャートで、wacci「恋だろ」は6月24日付で197位に登場し、4日連続で200位以内に入りながらも28日には圏外に。しかし6月末に再登場すると急上昇。さらに他のサブスクサービス等では既に人気となっており、来週7月13日に公開される7月18日付ビルボードジャパンソングスチャートのStreaming Songsチャート速報で8位にランクインしているのです。

この理由、非常に面白いと感じています。

前週73位に初登場したwacci「恋だろ」が188.4万回を記録し速報8位に急上昇。同曲はドラマ『やんごとなき一族』の挿入歌に起用され、4月15日より配信がスタートした。『やんごとなき一族』の最終回がオンエアされた6月30日には、ドラマに出演する松下洸平とコラボした本楽曲のライブ映像がYouTubeにて公開され、7月8日現在も急上昇ランキングの1位をマークしている。

松下洸平さんは昨年秋クールのドラマ『最愛』(TBS)でドラマ共々高い評価を集め、昨日オリコンが発表した上半期ブレイク俳優ランキング男性部門でも4位に登場しています。

おそらくはこの結果も、wacci「恋だろ」の後押しになるかもしれません。日本のSpotifyデイリーチャートで50位以内に入り、トップ50プレイリストに名を連ねれば数日のうちに急上昇する可能性があります。最新7月6日公開分(7月11日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは「恋だろ」が38位に再登場しており、次週の動向にも注目が集まります。

(なお、ビルボードジャパンソングスチャートについては疑問が。オリジナルと言語以外が異なるバージョンは合算されないのですが、動画についてはISRC(国際標準レコーディングコード)がオリジナル版と同じならば合算されます。コラボ動画の概要欄におけるクレジットはwacci単体での「恋だろ」となっているため、次週のビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標に注目すると共に、ビルボードジャパンには再度合算化を提案させていただきます。)

 

 

映像作品関連でいえば、メタリカも。『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン4関連で、1986年にリリースされた代表曲のひとつである「Master Of Puppets (邦題:メタル・マスター)」が米ビルボードソングスチャートに初登場する可能性が出ているのです。

(上記は2009年のライブ動画。ISRCもライブバージョンとしてクレジットされていますが、米ビルボードおよびグローバルのソングスチャートは様々なバージョンが基本的に合算されます。)

大人気シリーズとの相乗効果により、同曲はiTunesSpotifyの米国デイリー・チャートでTOP10入りするなど、ストリーミング大手で爆発的な人気を博している。Luminate(ルミネイト、旧MRCデータ)によると、米国でのデイリー・オンデマンド・オーディオ・ストリーミングは、『ストレンジャー・シングス』の最新エピソードが公開される前日の6月30日の224,000回から、7月3日には111万回に約400%増加した。

(※注意:記事にはドラマのネタバレが含まれます。)

ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン4は7話までのVol.1と8・9話のVol.2に分かれて公開され、後者は7月1日金曜に解禁。日本で7月12日未明に発表される米ビルボードソングスチャートおよびグローバルチャートの集計期間は公開日からの1週間となります。最新7月7日付の米におけるSpotifyデイリーチャートでは「Master Of Puppets」が7位に入っており、次週の総合チャート初登場の可能性は高いのです。

そしてVol.1にて印象的なシーンに使われたケイト・ブッシュ「Running Up That Hill (A Deal With God)」は、Vol.2公開日以降米の、公開翌日以降はグローバルのSpotifyデイリーチャートを制覇。米ビルボードソングスチャートでは同曲のみならずキャリアとしても最高位となる3位以上となるのではという見方も生まれています。

ケイト・ブッシュリバイバルヒットについては米ビルボードソングスチャートで再登場を果たす前に取り上げましたが、メタリカ「Master Of Puppets」についても同種の現象が生まれるだろうことは興味深いものがあります。視聴者数の多さのみならず、ケイト・ブッシュメタリカもドラマや様々なリアクションについてSNSを介して反応していることが、話題をより高めた理由と言えるのではないでしょうか。

63歳のブッシュは滅多に公の発言をしないが、Netflixの人気SFスリラーのシーズン4の第1弾エピソードが2022年5月27日に配信されると、彼女の1985年の楽曲が使用されていたことで、ここ数週間再び彼女にスポットライトが当たっていた。「神秘の丘」への新たな関心について彼女は、自身のウェブサイトで、「全てが本当にエキサイティングです!この曲を応援してくれた皆さん、本当にありがとうございます」と投稿していた。

こうした中、ドラマを通じてメタリカを初めて知った、いわゆる“にわか”ファンが目立ってきていることを快く思わない古参ファンもいるようで、例えば7月6日にTikTokに投稿された、「最近何かかっこいい曲聴きました?[稲妻の絵文字]#Metallica #MasterOfPuppets #StrangerThings #StrangerThings4 #EddieMunson #NotLiveInTheUpsideDown」と添えられた同曲のライブ演奏動画には、「“ストレンジャー・シングス”(からの)フェイクなファンがいっぱいでごめんよメタリカ、愛してる」という皮肉なコメントがついた。

このような意見に対しバンドは素早く反応し、「謝る必要なんてない。メタリカ・ファミリーにはみんなウェルカムだ。(新規のファンが)“パペッツ”を好きなら、ハマれる楽曲が他にもたっぷりあるだろう」とコメントし、後に、「ちなみに、メタリカ・ファミリーには全ての人がウェルカムだ。ファン歴が40時間だろうが40年だろうが、我々は音楽を通じて絆を共有している。みんなある時にゼロ地点からスタートしてるんだ」と付け加え、ファンの仲を取り持った。

 

 

映像作品への曲提供にとどまらずポジティブなリアクションを行う姿勢、曲提供した映像作品に関連した新たな動画を用意したことがプラスに作用しています。心のこもった行動がチャートにも反映されていくことを実感するのです。