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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

藤井風『Prema』がアルバムチャート首位返り咲き…ストリーミングでNumber_i『No.Ⅱ』を上回った要因を考える

最新10月22日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートは、藤井風『Prema』が4週ぶりにトップに返り咲きを果たしています。

当週はNumber_i『No.Ⅱ』が2位にランクイン。登場4週目となる同作品は前週までストリーミング指標3連覇を果たしていましたが、『Prema』がこの指標でも逆転した形です。

 

藤井風『Prema』およびNumber_i『No.Ⅱ』のCHART insightは以下の通り。

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。また、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)

Number_i『No.Ⅱ』はビルボードジャパンアルバムチャート初登場時にて構成3指標完全制覇を達成した翌週、藤井風『Prema』に所有2指標で抜かれるもストリーミング指標が上回ったことで総合首位をキープ。前週は所有指標の順位に開きが生じつつも『No.Ⅱ』はストリーミング指標を首位をキープ(一方で総合首位は『Prema』が逆転)、そして当週はストリーミングでも『Prema』が勝ったという形です。

 

藤井風『Prema』がNumber_i『No.Ⅱ』をストリーミング指標で逆転した要因を、収録曲のソングチャートにおける動向から察することができると考えます。

藤井風さんは『Prema』に収録された「I Need U Back」のミュージックビデオを10月9日木曜夜に公開。その日は22時から『NHK MUSIC SPECIAL 藤井風 ~いま、世界で~』がNHK総合でオンエアされ、番組ではミュージックビデオのビハインド・ザ・シーンも登場していました。

このミュージックビデオが公開後初の1週間フル加算となった当週、「I Need U Back」は総合ソングチャートで80→67位と推移しています。動画再生指標(CHART insightでは赤で表示)が19→11位と上昇。一方でストリーミング指標(青)は2週続けて100位未満ながら、上昇した可能性が考えられます。

 

そしてこのような、アルバムリリース後における収録曲のミュージックビデオ公開が、当週のアルバムチャートにおけるストリーミング指標首位返り咲きの一因と捉えています。藤井風『Prema』においてはタイトル曲のミュージックビデオがアルバムリリース日に公開されており、リリース以降(リリース日を含む)のミュージックビデオ公開は2曲目となります。

ビルボードジャパンアルバムチャートのストリーミング指標は米ビルボードと異なり動画再生が含まれていませんが、しかし動画再生はサブスク聴取ともリンクしやすいと捉えています。この考えが正しいならば、アルバムの長期接触化を歌手側が視野に入れてきたことがミュージックビデオ制作の背景にあり、それを加速させたのがビルボードジャパンアルバムチャートのチャートポリシー(集計方法)変更かもしれません。

(中略)

ビルボードジャパンアルバムチャートのチャートポリシー変更に伴いストリーミングの重要性が示されたことで、歌手側がアルバムリリース後のミュージックビデオ公開という施策を増やしていくかもしれません。アルバム制作にかける時間の増加もその背景にあるかもしれませんが、ストリーミングの収益等を加味できるようになったことがミュージックビデオの制作を後押ししているのではというのが私見です。

尤も藤井風さんにおいては『HELP EVER HURT NEVER』『LOVE ALL SERVE ALL』でもアルバムリリース以降の複数ミュージックビデオ公開という施策を行っており、最新アルバムでもその流れを踏まえているのかもしれませんが、しかし指標動向の推移は興味深いところです。

 

 

一方のNumber_iはアルバムリリース以降のミュージックビデオ公開が今のところありませんが、来週末放送の『Venue101』プレゼンツライブ(NHK総合)に登場します。

このタイミングでミュージックビデオが登場するか、注目です。