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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

集計期間後半のリリースでソングチャートトップ10入り目前、藤井風「花」の指標動向を分析する

最新10月18日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、藤井風「花」が11位に初登場。ドラマ『いちばんすきな花』(フジテレビ)の主題歌として初回放送の翌日にリリースされたこの曲は、集計期間3日間でトップ10目前まで上昇しています。

 

藤井風「花」はフィジカルとしてシングルをリリースしていないゆえ、ダウンロード(CHART insightでは紫で表示)、ストリーミング(青)、ラジオ(黄緑)、動画再生(赤)およびカラオケ(緑)の5指標がポイント獲得源に。カラオケは徐々に上昇する特性があり今回は300位以内にランクインせず、ダウンロード2位、ストリーミング55位、ラジオ11位そして動画再生77位という結果になりましたが、いずれの順位も興味深く感じています。

 

唯一の所有指標であるダウンロードは瞬発力を伴うため初週から上昇しやすい傾向にありますが、それでも集計期間5日目のリリースながら2位に至ったのは立派といえます。また日本では全体的に初動が高くないストリーミングで初週100位以内に入るのも見事であり、藤井風さんがストリーミングで高く支持されてきたことの表れともいえるでしょう。

ラジオ指標の高さも特筆すべきです。ラジオは一週間にOAされる曲に限度がある指標ですが、集計期間5日目にリリースされた曲がわずか3日間でトップ10目前まで迫るという結果からは、藤井風さんがラジオで如何に愛されているかがよく解ります。なお、藤井風さんの大ファンである別所哲也さんがDJ(ナビゲーター)を務める『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』は月-木曜の放送につき、集計期間中の「花」のOAはありません。

 

そして最も注目したいのが動画再生指標。順位が高いというわけではありませんが、これは下記動画をきちんと公開したことの効果に因るものといえます。

現時点にて藤井風「花」の公式動画は上記公式オーディオのみですが、きちんと公開していることで再生回数を獲得できたと考えます。歌手の中にはサブスク再生やダウンロード数に支障をきたすと考え公式オーディオを公開しない(もしくはYouTubeの有料会員向けにのみ公開する)ことを選択する方もいらっしゃるかもしれませんが、公開すれば再生回数を獲得しチャートにも反映されることが今回のチャートから解ります。

 

この状況から思い出したのがOfficial髭男dism「Subtitle」。『いちばんすきな花』と脚本家等が同じドラマ『Silent』(フジテレビ)の主題歌として初回放送の翌週である2022年10月12日水曜にリリースされたこの曲は、同年10月19日公開分のビルボードジャパンソングチャート(上記CHART insightは同日公開分)にて3位に初登場。動画再生指標は12位を記録していますが、このときの状況も藤井風「花」と重なります。

Official髭男dism「Subtitle」が動画再生指標を伸ばした理由は、同曲のリリース日にYouTubeにて公式オーディオをアップしたためと考えられます。ともすれば運営側は、ドラマ視聴(見逃し配信での視聴ならば尚の事)から主題歌チェックに流れてくることを見越して、この措置を実行したのではないかと考えます。これもまた施策の一環であり、総合での初週1万ポイント超えの要因になったのではないでしょうか。

 

動画再生指標はミュージックビデオのみならずリリックビデオや公式オーディオ等、公式動画が加算対象となります(国際標準レコーディングコード(ISRC)をきちんと付番していることが前提)。ミュージックビデオの公開が遅れるならば音源配信日に公式オーディオを広く公開する、またオーディオ→リリックビデオ→ミュージックビデオの順に公開する等、公式オーディオを用いた施策の活用が重要であることが今回よく解ります。