基本的に毎週金曜、前週のビルボードジャパンソングチャートで初めてトップ10入りした曲の翌週動向をチェックしています。前週は4曲が新たに登場しましたが、Number_i「HIRAKEGOMA」以外は100位圏外に後退しました。
一方で、100位以内にとどまったNumber_i「HIRAKEGOMA」は、「GOAT」「BON」および「INZM」と比べて獲得ポイントが大きくはありません。
<Number_i 主要シングル曲
ビルボードジャパンソングチャート初登場時の状況および2週目の推移>
※ CHART insightは初登場時のものを指します
・「GOAT」
1月10日公開分 初登場1位 16,138ポイント
ダウンロード 64,321DL、ストリーミング4,801,615回再生
→1月17日公開分 3位 7,746ポイント (ポイント前週比48.0%)
・「BON」
6月5日公開分 初登場2位 14,007ポイント
ダウンロード 49,896DL、ストリーミング5,038,092回再生
→6月12日公開分 8位 4,748ポイント (ポイント前週比33.9%)
・「INZM」
8月28日公開分 初登場1位 14,280ポイント
ダウンロード 54,560DL、ストリーミング4,865,963回再生
→9月4日公開分 13位 4,400ポイント (ポイント前週比30.8%)
・「HIRAKEGOMA」
12月11日公開分 初登場3位 8,956ポイント
ダウンロード 31,895DL、ストリーミング2,746,996回再生
→12月18日公開分 36位 2,302ポイント (ポイント前週比25.7%)
デビュー曲「GOAT」はシングルのフィジカルリリースに先駆けてデジタルを解禁。また「BON」はミニアルバム『No.O -ring-』のリード曲、「INZM」はフルアルバム『No.Ⅰ』のリード曲として、共にチャート集計期間初日の月曜にデジタルを解禁しています。そして「HIRAKEGOMA」はアルバム『No.Ⅰ』のデジタル向けデラックスエディションに追加収録の形で月曜にリリースされています。
2024.12.2 00:00 JST Digital Release
— Number_i_staff (@number_i_staff) 2024年12月1日
"HIRAKEGOMA" from "No.Ⅰ (Deluxe)"
HIRAKEGOMA (Official Visualizer)🎥https://t.co/kYvLvfmDLA
Stream now🎧https://t.co/i7MFxnPBpN#Number_1#Number_i_HIRAKEGOMA#Number_WiNTER 🚪 pic.twitter.com/uIb9uEToxG
「HIRAKEGOMA」は初週獲得ポイントに占める動画再生指標の割合が他の3曲より小さいのですが、これはミュージックビデオがないことが理由といえそうです。一方でストリーミング再生回数も多くないことは気になります。
ただそれ以上に気になったのが、Number_iのアルバム『No.Ⅰ』において"デラックスエディション"施策が採られたということです。
デラックスエディションは海外で目立つ施策です。たとえば今年、テイラー・スウィフトが『The Tortured Poets Department』で幾度となく用意していたのですが、これはライバルに首位の座を奪われないためという意味合いが大きいと結論付けています。
テイラーはこの作品のデラックスエディションを先日フィジカル化し、12月14日付米ビルボードアルバムチャートにて首位に返り咲きを果たしています。テイラーほどチャート施策に長けている歌手はいないと捉えているのですが、この首位返り咲きのアナウンスがコンサートツアー最終公演直前だったことを踏まえれば、やはりチャート意識が高い、そしてチャート施策が巧い歌手だと感じずにはいられません。
【米ビルボード・アルバム・チャート】テイラー・スウィフト『TTPD』首位返り咲き、故ビング・クロスビー64年ぶりTOP10入り https://t.co/8Kps4FBVM5
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年12月9日
またBTSのメンバーであるJIMINおよびJINが今年リリースしたソロアルバムでは、発売から5日目にリード曲のリミックスを追加収録したデジタル向けアルバムが複数登場しています。この施策はストリーミング(動画を含む)のアルバム換算分(SEA)を構成指標に含む米ビルボードでの初動増加に寄与します。
#JIMIN「#Who」と #JIN「#RunningWild」は、アルバムのリード曲であること、多数のリミックス版が用意されたこと、リミックスの用意がリリース5日目であること、リミックスの一部を付帯する形でアルバムのデラックスエディションをリリースしていることが共通しています。https://t.co/CVXk3f8wBR
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年11月22日
Number_i『No.Ⅰ』におけるデラックスエディション施策はアルバム自体のリリースから時間が経過していること、ビルボードジャパンがストリーミングをアルバムチャートに含めていなかったこともあり米ほどの意味合いは薄いかもしれませんが、『No.Ⅰ』は前週12月11日公開分の総合アルバムチャートで73→7位、ダウンロード指標は100位未満から2位に浮上。また「HIRAKEGOMA」における単曲購入者の多さも見て取れます。
チャートイン10週目のNumber_i『No.Ⅰ』は、未発表曲 「HIRAKEGOMA」を追加収録したデラックス盤が12月2日にサプライズリリースされたことを受けて、4,262DLを売り上げて2位に浮上。
【ビルボード】Travis Japan『VIIsual』がDLアルバム首位、TWICE/ロゼがトップ5デビュー https://t.co/7sCAx30RF4
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年12月11日
そのビルボードジャパンは、次回12月26日公開分の総合アルバムチャートよりストリーミング指標を導入することをアナウンスしています(この組入に伴いアルバムチャートの発表が木曜に変更されることも発表しています)。この件については発表から間もなくブログでまとめましたが、その際以下の内容を記しました。
なお、ビルボードジャパンアルバムチャートにストリーミング指標が組み入れられることで、米ビルボードアルバムチャートで散見されるデラックスエディション施策が目立っていく予感がします。ただこの点は(記事を見る限り)ビルボードジャパンアルバムチャートにTEAが用意されないため米ビルボードほど施策が目立つことはないと思うのですが、状況は注視する必要があると考えます。
TEAとは米ビルボードアルバムチャートの構成指標のひとつである、単曲ダウンロードのアルバム換算分を指します。Number_i『No.Ⅰ』のデラックスエディションが次週の集計期間初日となる12月16日にリリースされていたならば、そしてビルボードジャパンがストリーミング指標のみならずTEAも導入対象にしたならば、『No.Ⅰ』はアルバムチャートでより高い位置に再浮上したと仮定していいでしょう。
Number_i「HIRAKEGOMA」のチャートアクションは好いとはいえないかもしれませんが、同曲を含む『No.Ⅰ』デラックスエディションのリリースは今の米ビルボードアルバムチャートにおける施策を踏襲しているという印象です。この施策が日本で一定の成果を得たと捉えることで、そしてビルボードジャパンアルバムチャートが変わることで他のアイドルやダンスボーカルグループがこの施策を採り入れていくと感じます。CDのグッズ化を踏まえるに、デラックスエディションのフィジカル化も増えるでしょう。
コアファンならば購入を躊躇わないかもしれませんが、たとえばコアファンに成る可能性を持ったライト層にはこの施策がどう映るでしょう。コアファンの方においても、自分がファンではない歌手がこのような施策を採ればどう思うかを考える必要があるというのが、現在の自分の見方です。