イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ユニバーサルミュージックグループ所属のテイラー・スウィフトがいち早くTikTokに音源を戻した理由とは

TikTokユニバーサルミュージックグループ所属歌手の曲が戻ってきます。

しかしながら、ユニバーサルミュージックグループ所属のテイラー・スウィフトによる作品は既に利用されています。そのことは、米ビルボードによる最新のTikTok Billboard Top 50チャートからも解ります。

(記事は上記ポスト内画像をタップ/クリックすると確認できます。)

 

テイラー・スウィフトは5月4日付TikTok Billboard Top 50(集計期間:4月22~28日 リンクはこちら)にて50位以内に5曲を送り込んでいます。最高位は「Who's Afraid Of Little Old Me?」の4位で、ペットを映した動画での利用が多い模様です。

“Who’s Afraid of Little Old Me?” is the runaway favorite on TikTok, however. And that’s thanks to a trend highlighting its “Who’s afraid of little old me?/ You should be” chorus lyric, with videos starting with a seemingly innocuous subject that then turns threatening or violent upon the second half of the verse.

(TikTokでは「Who's Afraid Of Little Old Me?」が人気ですが、これはサビの歌詞"Who's afraid of little old me? / You should be"に焦点を当てたことによるもの。 一見何の変哲もない題材で始まりながらもヴァースの後半で脅迫的または暴力的になる動画に用いられています。)

(※翻訳内容はDeepLを基に、意訳しています。また記事にて曲を使用した動画を確認できます。)

この「Who's Afraid Of Little Old Me?」は最新5月4日付米ビルボードソングチャートにて9位に初登場。ストリーミング3790万およびダウンロード4,000を記録し、アルバム『The Tortured Poets Department』収録曲によるソングチャートトップ10独占の一翼を担いました。ポスト下のリンクにて最新チャート記事を翻訳しています。

 

最新5月4日付TikTok Billboard Top 50では他にも、ニューアルバム『The Tortured Poets Department』収録の「I Can Do It With A Broken Heart」(25→14位)、「Fortnight (feat. ポスト・マローン)」(50→32位)が上昇し、「So High School」(33位)および「But Daddy I Love Him」(42位)が初登場。ここから、ユニバーサルミュージックグループ所属のテイラー・スウィフトTikTokをいち早く解禁していたことが解ります。

一部メディアはテイラー・スウィフトの一足早い解禁を"謎の復活"と表記していましたが、弊ブログではテイラー側の施策であることを(この記事のリンクを用いつつ)記しました。

また、TikTokから音源を引き上げたユニバーサルミュージックグループに所属するテイラーが、今作『The Tortured Poets Department』のリリース直前にTikTokを再開したことも象徴的です。下記記事では『謎の復活』と記されていますが、テイラー側がTikTokを重要なプロモーションツールだと捉えているということは、今回紹介した施策の徹底を踏まえれば明らかでしょう。

 

実際、テイラー・スウィフトは前作のオリジナルアルバム『Midnights』(2022)と今作『The Tortured Poets Department』における施策が共通(アルバム初告知の場所、音源リリース以前のTikTok利用、リリース直後のデラックスエディション用意等)。加えて『Midnights』後のツアーの盛況、そこで披露された「Cruel Summer」(アルバム『Lover』(2019)収録)の米ソングチャート制覇等がコアファンとのエンゲージメント強化のみならず、歌手や曲に興味のないグレーゾーンも巻き込むことにつながりました。

『The Tortured Poets Department』は初週261万ユニットを獲得し、『Midnights』の初週1,578,000ユニットを大きく上回っています。米ビルボードアルバムチャートはストリーミング(公式動画の再生を含む)のアルバム換算分(SEA)および単曲ダウンロードのアルバム換算分(TEA)も含まれますが、SEAは419,000→683,000ユニットと大きく拡大。ここにTikTokの影響もみえてくるものと考えます。

(なおSEAやTEAは曲数の多い少ないに限らずアルバムの総再生回数を同じ分母で割ることになるため、曲数が多いほうが有利となります。『The Tortured Poets Department』のダウンロード版は前作のオリジナルアルバム『Midnights』よりも多いオリジナルバージョン16曲+デラックスエディション追加15曲の計31曲が収録されています。)

 

テイラー・スウィフトは新作にて4種のフィジカルエディションを用意。ボーナストラックやジャケット違いもありコアファンの購入意欲をかきたてるこの施策も、前作のオリジナルアルバム『Midnights』を彷彿とさせます。すなわち、『The Tortured Poets Department』における施策は前作の成功を踏襲しており、その意味でもテイラーがTikTokを重要なツールと捉え音源をいち早く戻したことが容易に想像できるのです。