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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン上半期トップアーティストチャート、記事やCHART insightからみえてくるものとは

ビルボードジャパンが先週金曜に発表した上半期チャートについては、分析エントリーをブログで同日掲載。ビルボードジャパンによる記事等をまとめた別途エントリーのリンクも貼付していますので、是非ご活用ください。なお、今回の上半期チャートは昨年度と同様、総合ソングチャートおよびトップアーティストチャートが100位まで公開されています。

一昨日はソングチャート、そして昨日はアルバムチャートについて、あらためて分析した内容を公開しています。

今回はソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートについて、CHART insightも踏まえて分析します。

 

 

ビルボードジャパンによる上半期トップアーティストの記事はこちら。

ビルボードジャパンによる2025年度上半期トップアーティストチャート、上位20組については各種チャートをまとめた記事にて構成6指標の順位を記した表が掲載。以下にその表を貼付します。

表ではフィジカルセールスが黄色、ダウンロードが紫、ストリーミングが青、ラジオが黄緑、動画再生が赤、カラオケが緑で表示され、各指標100位までの順位が掲載。ソングチャートは6指標、そしてアルバムチャートはフィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミングの3指標が加算対象となります(アルバムチャートでは昨年最終週以降、ストリーミング指標が加算されています)。

 

 

今回、やはり際立つのがMrs. GREEN APPLEの動向です。

(上記リンク先、トップアーティストチャートの記事最後に登場する”指標別アーティスト・チャートはこちらから”より、先述した総合上位20組における構成6指標一覧表を確認することができます。)

Mrs. GREEN APPLEの強さはフィジカルセールス以外の5指標をすべて制したこと。特にストリーミングは2024年度開始4週目以降、動画再生は同年度51週目以降首位を続け接触指標の強さが際立つ一方、ダウンロードは今年度4位以上、カラオケは同2位以上と多方面で強さを発揮。フィジカルセールスについても上半期アルバムチャートを制した『ANTENNA』の勢いが持続しており、コアファンやライト層の充実がうかがえます。

 

また総合上位20組の構成6指標表をみるとストリーミングが最も総合順位と比例し、順位は異なれどトップ10の顔ぶれがほぼ一致。Snow Manは4月上旬にベストアルバム『THE BEST 2020 - 2025』をデジタルリリースしており、アルバム解禁から2ヶ月弱でストリーミング指標32位に上昇したことが解ります。動画再生がストリーミングに続き総合順位と比例する一方、フィジカルセールスが最も大きく乖離している状況です。

ソングチャートでは社会的ヒット曲の週間ポイントにおいてストリーミング指標が獲得ポイント全体の過半数を占め、アルバムチャートでも上位安定の要となることから、ストリーミングがトップアーティストチャートにも大きく関わることは明白です。一方でフィジカルセールスは基本的に瞬間的ですが、同じく所有指標であるダウンロードは特にアニメソング等ロングヒット曲において安定傾向にあることがみえてきます。

 

 

さて、ビルボードジャパンは下半期初週初週よりソングチャートおよびアルバムチャートにリカレントルールを導入。一定週数以上ランクインした作品についてストリーミングの指標化時に減算処理を行うというもので、初適用された6月4日公開分チャートではその影響が大きく反映されています。リカレントルールについては下記コラムをご参照ください。

下半期初週のソングチャートはこちら、アルバムチャートはこちらで解説していますが、後者のエントリーでは6月4日公開分トップアーティストチャートについても紹介。主にMrs. GREEN APPLEに対する影響は大きい一方で、トップアーティストチャートでは総合トップ10の顔ぶれがストリーミング指標のそれと変わっていません。

(中略)

ロングヒット作品が厳しい状況となったビルボードジャパンのチャートですが、それでもやはりストリーミング指標の充実がアーティストパワーの増加に欠かせないということがよく解るのです。

リカレントルール導入以降も、ストリーミングが影響力の高い指標であることに変わりはないと断言していいでしょう。きちんと聴かれ続けることが、今後もやはり重要となるはずです。

 

 

 

 

以下に、上半期トップアーティストチャートにおける上位20組のCHART insight(総合および構成指標の週間単位での推移)を貼付します。なお、こちらではCHART insight無料会員が確認可能なデータを掲載しています。

<2025年度上半期ビルボードジャパントップアーティストチャート

 上位20組のCHART insight>

 ※ 1位から順に掲載。

 ※ 上半期最終週(5月28日公開分)までの最大30週分を表示。

 ※ 順位、チャートイン回数は5月28日公開分を指します(20位未満の際は未記載)。

 ※ 総合順位は黒、フィジカルセールスは黄色、ダウンロードは紫、ストリーミングは青、ラジオは黄緑、動画再生は赤、カラオケは緑で表示。なお2022年度以前から登場している歌手にはルックアップおよびTwitter指標が加算されており、前者はオレンジ、後者は水色で表示されます。

 

CHART insightにて円グラフで表示される累計ポイント構成比からはSnow Manのストリーミング指標が大きくないことは一目瞭然ですが、デジタル解禁からわずかの間に同指標のシェアが拡大していることが読み取れます。

 

2025年度上半期トップアーティストチャートでは、アイドルやダンスボーカルグループ(そこからのソロも含む)においてSnow Man(9位)を筆頭にNumber_i(12位)、ロゼ(19位 ブルーノ・マーズとの共同名義であり、「APT.」はチャート上K-POPではなく洋楽という括り)がトップ20入り。そのすぐ下にはFRUITS ZIPPER(21位)、CUTIE STREET(23位)というKAWAII LAB.所属の2組が入り、同事務所所属のCANDY TUNEも97位に入っています。

(CHART insightは上半期最終週(5月28日公開分)までの最大30週分を表示。また順位およびチャートイン回数は5月28日公開分を指します(20位未満の際は未記載)。以下同様。)

上半期チャート総括エントリーでも述べたように、女性アイドルやダンスボーカルグループの勢力図は変化の兆しが見て取れます。KAWAII LAB.所属歌手についてはフィジカルセールスばかりに強い曲もありますが、フィジカルリリース後でもブレイク可能な例は(KAWAII LAB.所属歌手ではないものの)=LOVE「とくべチュ、して」でもみられており、ストリーミングの実績があればフィジカルリリース後の楽曲上昇も増えるでしょう。

この上半期チャートでは、CUTIE STREETのすぐ下にDa-iCEがランクイン。アイドルやダンスボーカルグループにおいては所有と接触指標の乖離をどう小さくするか、ライト層の支持を得てストリーミングの上位安定につなげるかが重要ですが、その点にて「I wonder」がロングヒットしたDa-iCEの上位進出には納得です。ただ同曲は先述したリカレントルールの影響を受けており、次なるヒットの輩出が人気継続の鍵といえます。

 

今年度上半期のトップアーティストチャート、50位までにランクインしたK-POP歌手はaespaの18位を筆頭に、LE SSERAFIM(28位)、BABYMONSTER(35位)、ILLIT(36位)、ロゼ(50位 ブルーノ・マーズとの共演を除く)の5組。他方、昨年度上半期ではLE SSERAFIMが11位に入ったのを皮切りに総合50位までに10組がランクインしたことを踏まえれば、その勢いは弱まっていると感じます。

翻って日本のアイドルならびにダンスボーカルグループにおける50位以内ランクインは先述した歌手のほか、HANA(31位)、King & Prince(32位)、BE:FIRST(33位)、timelesz(38位)、JO1(40位)、XG(45位)、SixTONES(46位)、&TEAM(48位)と多岐に渡ります。HANAは通算2週首位を獲得した「ROSE」を含む3曲のみのリリースでこの位置に到達しており、大ヒット且つロングヒットの輩出が如何に重要かが解ります。

加えて、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手の上昇も大きいといえます。今年度上半期に総合50位までに入った歌手においてはSnow Manが昨年度上半期の31位から9位、King & Princeが89→32位、timeleszはSexy Zone時代共々前年度上半期は100位未満ながら今年度は38位に上昇。リリース数も影響しながら、いずれもデジタル解禁が功を奏したといえるでしょう。SixTONESは23→46位に後退するも、5月中旬以降のデジタル解禁が今後に影響します。まずは次回のソングチャートにおける「BOYZ」の動向に注目です。

 

フィジカルセールスに強いアイドルやダンスボーカルグループにおいては今後、ファンダムの熱量に伴いストリーミングが上昇しやすくなるものと想起されます。ただ重要なのはそれを如何に継続させるかであり、新たな曲のリリース時に過去曲のストリーミングが維持されるためにも、やはりライト層の拡充が必要となります。この拡充が叶えばフィジカルセールスと相まってチャートアクションはより強力に成っていくでしょう。

一方でデジタルで強い歌手は、しかしすべての曲をヒットに導けるわけではありません。その中で上半期トップアーティストチャートを制したMrs. GREEN APPLEは、新曲の相次ぐリリースもさることながら様々な施策で新旧双方の注目度を高い状態で維持することに成功しています。どのジャンルの歌手も相次ぐリリースや幅広い露出等ができるわけではないとして、Mrs. GREEN APPLEの成功からは学べる点が多々あるはずです。

 

最後に。私見と前置きしますが、アイドルやダンスボーカルグループのジャンルにおいては、トップアーティストチャートにおけるカラオケ指標の加点に注目しています。カラオケは新曲が上昇しにくく過去曲が長期エントリーしやすい傾向にありますが、だからこそこの指標で週間300位以内に入り加点されることは曲がより広く支持されている証明といえるでしょう。実際、HANAは2月26日公開分以降加点を続けています。

その点において注目しているのがBE:FIRSTの動向。フィジカルシングル表題曲はアグレッシブなヒップホップ主体の彼らですが、デジタル先行でリリースされた「夢中」(フィジカルシングル「GRIT」に収録)は好調に推移し、最新6月4日公開分にて総合ソングチャートおよびストリーミングの双方で同曲初のトップ10入りを果たしています。近日中にカラオケ指標でキャリア初となる300位以内到達もあり得るかもしれません。