(※追記(6月30日4時51分):タイトルについて、『…影響源の不在にいて』→『…影響源の不在について』に訂正しました。)
日本におけるSpotifyデイリーチャート200位の推移、今週は特筆すべき状況が続いています。
Spotifyはデイリー200位までの再生回数を可視化していますが、6月24~27日(現時点での最新日)の200位における再生回数は平日においてこれまでにない高さとなり、そして6月26日付では平日最高を記録しています。
要因のひとつが、西野カナさんの活動再開。6月25日にアナウンスされると、翌日付の日本におけるSpotifyデイリーチャートでは5曲が初登場を果たしています。
日本における6月26日付Spotifyデイリーチャート、200位以内の初登場曲。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年6月27日
全て #西野カナ さんの作品。
137位 「#もっと...」
147位 「#トリセツ」
148位 「#GOFORIT!!」
168位 「#Dear...」
173位 「#会いたくて会いたくて」
そしてもうひとつが、6月21日に「Supernatural」および「Right Now」にて日本デビューを果たしたNewJeansの躍進です。
6月26日および27日に初の単独日本公演を行ったNewJeansの作品群は、6月27日付までの1週間における日本のSpotify週間チャートで際立った動きを示しています。
<6月21~27日付における日本のSpotify週間チャート
NewJeans各曲の順位>
・33位 (前週25位) 「How Sweet」
・34位 (初登場) 「Supernatural」
・58位 (初登場) 「Right Now」
・59位 (前週90位) 「Ditto」
・62位 (前週105位) 「OMG」
・63位 (前週103位) 「Super Shy」
・66位 (前週79位) 「Bubble Gum」
・78位 (前週119位) 「Hype Boy」
・85位 (前週131位) 「ETA」
・152位 (前週200位未満) 「New Jeans」
・162位 (前週200位未満) 「Attention」
・Spotify Charts - Spotify Charts are made by fansより (確認にはログインが必要です)
週間単位でも上昇が目立ちますが、デイリーチャートでの躍進には目を見張るものがあります。
6月10日以降における日本のSpotifyデイリーチャートで100位以内に入ったNewJeansによる9曲の順位、ならびに再生回数の推移をまとめた表を上記に。6月21日の日本デビュー以降、過去作の大半が特に大きく伸びていることが解ります。東京ドーム公演開催日には前週同曜日と比べて3割前後上昇しているのです。
[NewJeans Commentary👀]
— NewJeans JAPAN OFFICIAL (@NewJeans_jp) 2024年6月21日
たくさんの方々の前で日本デビュー曲を披露することができて嬉しかったです!🐰💗いろんなステージを見ることも本当に楽しかったです!🤩今日もお疲れ様でした🥰#NewJeans#NewJeans_Supernatural #NewJeans_OMG#Mステ#NewJeans_is_Everywhere pic.twitter.com/TsjBM1Mhfc
NewJeansは日本デビュー日からの1週間で、『ミュージックステーション』(テレビ朝日)、『with MUSIC』(日本テレビ)および『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)に相次いで出演し、またポップアップイベントも開催。これら1週間の集大成ともいえる東京ドーム公演も含め、音楽チャートでの急浮上につながったといえるでしょう。
(なお「Supernatural」についてはLINE MUSICおよびRakuten Musicにて再生キャンペーンを実施しています(詳細はこちら)。このキャンペーン後の動向については追いかける必要があります。)
今後の注目は、6月24日からの1週間を集計期間とする7月3日公開分ビルボードジャパンソングチャートでのNewJeansの動向。最新6月26日公開分にて8位に初登場した「Supernatural」は、次週初の1週間フル加算となることからその推移に注目です。そして以前も述べたように、リリース日を集計期間初日とする米ビルボードの7月6日付グローバルチャートにおいて日本語を含む作品が初登場するかも気になります。
そしてもうひとつ、NewJeans人気が日本の音楽業界、もっといえば広くエンタテインメント業界に影響を及ぼす可能性に注目しています。
NMNL新サイトの連載エッセイ企画 【ポップの羅針盤】第4回 NewJeansとSMAPと新しい東アジアの時代 by 柴 那典 公開されました。お時間ある時に是非ご覧ください。https://t.co/QVUtjzg65t pic.twitter.com/8IM6hbs3bP
— NO MUSIC, NO LIFE. (@TOWER_NMNL) 2024年6月26日
NewJeansの「Supernatural」を聴いても、明らかに「新しい時代が始まってる」感がある。ニュー・ジャック・スウィングのプロダクションの向こう側に聴き手が90年代のSMAPを見出すこと、そしてその”空席”が日本のポップカルチャーの急所だったことはミン・ヒジンも当然最初から狙いすましてたはず。
— 柴 那典 (@shiba710) 2024年6月21日
NewJeansの日本デビュー曲からSMAPを想起した方は少なくないだろうことは、音楽ジャーナリストの柴那典さんによるコラムやポスト等からも解ります。ならば彼らの作品を聴きたくなるのは自然なことですが、しかしSMAPをはじめとするSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手(かつて所属していた方も含む)の音楽作品はその大半が未だサブスク、そしてダウンロードでも解禁されていません。
冒頭で紹介した西野カナさんのチャートアクションからは、エンタテインメントの話題が聴取につながること、また過去曲であっても上昇の可能性があることが解ります。にもかかわらず、社名が変わり、また体制を変えるはずの、そして日本のエンタテインメント業界に大きく関わり続けるSTARTO ENTERTAINMENT側がデジタルには未だ前向きではない状況です。これは世界で躍進するK-POPと、あまりに異なる動きといえます。
(音楽業界関係者に限らずエンタテインメント業界に関わる方の中で、STARTO ENTERTAINMENT側に対し"所属歌手(以前在籍していた方を含む)のサブスク解禁を未だ行わない理由は何ですか?"と問う方は果たしていらっしゃるのでしょうか。)
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年6月28日
上記ポストはずっとくすぶり続けている疑問なのですが、この疑問が業界内で(表立って)問われてこなかったこと、そして改善が叶わず今回もまたデジタル未解禁に伴う機会損失が生まれていることを、あらためて痛感しています。
デジタルの未解禁を正当化する、もっといえばデジタルに関わる方を悪しく述べる歌手、またデジタル未解禁にこだわる芸能事務所の存在は、日本の音楽業界を世界に拡げないネックだと考えます。解禁する歌手は増えてきているものの、たとえばシティポップムーブメントにおける最重要人物のデジタル不在は世界の音楽ファンに失望を与え、日本のエンタテインメント全体への印象悪化も招くのではないでしょうか。
上記エントリーで山下達郎「クリスマス・イブ」について記した内容を引用しましたが、『シティポップムーブメントにおける最重要人物のデジタル不在』を『アイドル文化における最重要人物および所属組織のデジタル不在』と置き換えても成立します。
NewJeans「Supernatural」がグローバルチャートに登場し、海外の音楽ファンに日本関連作品を知りたいという欲求が芽生えたとして、その中枢を担ってきた方々の作品に触れられないと知ったならばどう思うでしょう。日本にいればその状況を"仕方ない"として終わらせるかもしれませんが、そのドメスティックな考え方も改善につながらない一因であると厳しくも断言します。
NewJeansがSMAPを想起させる日本デビュー曲を発表したことで、日本のエンタテインメントは世界に誇れるものだいう認識が高まるかもしれません。「Supernatural」がグローバルチャートに登場できたならば尚の事でしょう。ならば今からでも日本のエンタテインメント業界は前向きに変わる必要があるはずです。そして受け手である私たちも"仕方ない"という感覚を捨てる必要があると強く考えます。