イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

レコード大賞、紅白、元日リリース…年始のビルボードジャパンソングチャートで注目すべき5曲

ビルボードジャパンは1月3日公開分のチャートについて、1月10日に発表することをアナウンスしています。

1月3日公開分は集計期間が2023年12月25~31日、1月10日公開分は集計期間が2024年1月1~7日となり、この2週においては『輝く!日本レコード大賞』(TBS 2023年12月30日放送、以下”レコード大賞”と表記)や『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 2023年12月31日放送、以下”紅白”と表記)が大きく影響します。

今回は、現段階で最新となる2023年12月31日付Spotifyデイリーチャートの動向を踏まえ、ビルボードジャパンによる1月3日公開分および1月10日公開分のソングチャートで注目すべき作品を紹介します。

 

ビルボードジャパンソングチャート 1月3日公開分および1月10日公開分の注目作品>

 

 

Mrs. GREEN APPLEケセラセラ

Mrs. GREEN APPLEは2023年度のビルボードジャパン年間ソングチャートで100位以内に10曲を送り込み、ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートでも2位にランクイン。ソングチャートは2022年度以前の作品がロングヒットする中にあって「ケセラセラ」は年間23位にランクインしていることも、同曲が2023年のレコード大賞を受賞するに適切な理由(社会的ヒット)になっていると言えます。

晦日Spotifyデイリーチャートは年末年始に伴い再生回数前日比が8割台にとどまる曲が多い中、Mrs. GREEN APPLEケセラセラ」は前日比103.6%と大きく伸び、これまでの最高位(4位)を上回る3位に浮上。さらに他の曲も順位を上げており、「ケセラセラ」同様アルバム『ANTENNA』(2023)に収録された「Soranji」は前日比90.9%をマークし20→16位へ。同曲は前日(晦日)、デイリー最高再生回数に至っています。

 

Mrs. GREEN APPLEのトップアーティストチャートにおける躍進については上記エントリーの10項目のひとつとして取り上げています。年末の地上波音楽特番に多数出演し(この出演に関しては後日ブログにて紹介します)、そしてレコード大賞、紅白にも出演したことからその認知度はお茶の間クラスにまで拡大したことでしょう。

 

なおMrs. GREEN APPLEの巧さはネットの効果的な使用にも表れています。年末には「ケセラセラ」のライブ映像をYouTubeにて公開したのみならず、受賞後には動画のタイトルを”受賞曲”にするという細かな変更もまた見事です。動画再生指標に関してはオリジナル版と同じISRC(国際標準レコーディングコード)を付けていればライブバージョンでもオリジナル版に合算されるため、1月3日公開分以降の動向に注目です。

 

② NewJeans「Ditto」

レコード大賞で優秀作品賞を受賞した「Ditto」は、紅白でもメドレーの一曲として披露。大晦日Spotifyデイリーチャートにて同曲は51→49位に上昇し(再生回数前日比101.9%)、トップ50内に入ったことで数日中の急浮上を確実なものとしました。この”50位の壁”効果についてはSpotifyにおける"50位の壁"、ビルボードジャパンソングスチャートへの反映具合を確認する(2021年8月27日付)をご参照ください。

 

NewJeansは紅白側が最後の出場歌手としてアナウンスし、その紅白では後述するYOASOBI「アイドル」でもNewJeansから複数のメンバーがパフォーマンスに参加しています。大晦日は米ABCの大晦日特番にもK-POP女性ダンスボーカルグループとして初めて出演しており、彼女たちが如何に世界で活躍していたかがよく分かるでしょう。

NewJeansはビルボードジャパン年間ソングチャートで「Ditto」が26位、「OMG」が31位、「Hype Boy」が68位に入り、トップアーティストチャートでは11位にランクインしています。この点だけでも日本での浸透は十分であり、ゆえに紅白出場は自然であるとして、このブログでは出場歌手予想の段階でNewJeansの名を挙げています((追記あり) 大晦日の『NHK紅白歌合戦』出場歌手を予想する (予想一回目)(2023年9月5日付)参照)。

(一方で、NewJeansをはじめK-POP歌手やK-POP的アプローチを伴う日本人歌手の出演を強く非難する方の声も目立っていますが、紅白はビルボードジャパンのソングチャートやトップアーティストチャートできちんとヒットを輩出した歌手を選ぶ傾向にあります((追記あり) 『第74回NHK紅白歌合戦』出場歌手の顔ぶれから考える…紅白でのふたつの選出基準とは(2023年11月13日付)参照)。そのことはまずきちんと知るべきです。)

 

NewJeansの年末番組への出演は、Mrs. GREEN APPLE共々お茶の間クラスへの浸透につながったといえるでしょう。このタイミングで「Ditto」がSpotifyデイリーチャートトップ50入りとなり、「OMG」も再生回数前日超えで50位目前まで迫っている状況は、歌手としての浸透度上昇につながっていると捉えていいでしょう。Mrs. GREEN APPLE共々トップアーティストチャートでもどこまで再浮上するか、注目です。

 

なお、紅白は今年もパフォーマンス映像の一部を(今回、歌手によってはフルにて)NHK MUSICの公式YouTubeチャンネルにて公開しています。この動画再生回数については徒然研究室さんがXで推移を紹介し、後日noteにまとめられるものと思われます。ただしこのYouTube動画はあくまでNHKプラスでの視聴を促すための公開と考えられ、後日削除される可能性が高いほか、先述したISRCも付いていないものと思われます。

他方、NewJeansは米ABCの大晦日特番『Dick Clark's New Year's Rockin' Eve with Ryan Seacrest 2024』に出演した際の映像を、NewJeansの公式YouTubeチャンネルにて公開しています。上記動画が期間限定かは分かりかねますが、ここに日本のメディアとアメリカや韓国との差が表れているといえるでしょう。この差を埋めることは、日本のエンタテインメント業界全体における2024年の大きな課題だと考えます。

(なおNewJeansのテレビ出演映像はNewJeansの公式YouTubeチャンネルにて、一方でミュージックビデオについてはHYBE LABELSの公式YouTubeチャンネルにて公開されている形が採られています。)

 

 

③ YOASOBI「アイドル」

YOASOBI「アイドル」はレコード大賞にて海外ライブの模様が紹介され、紅白が初となる生披露の場に。生披露まではだいぶ引っ張った形といえますが、その紅白においては様々なアイドル(的立ち位置のJ-POPやK-POPダンスボーカルグループ)、そしてアイドルグループ出身の橋本環奈さんおよびanoさん等をダンサーとして招聘。先述したNewJeansも登場し、YOASOBIが世界で活躍する歌手を束ねたことが話題となりました。

その点については音楽ジャーナリスト柴那典さんのYahoo! JAPAN寄稿のコラムに詳しく書かれています。個人的には、昨年の紅白で仮に旧ジャニーズ事務所所属歌手が出演していたならば、たとえばSnow Man佐久間大介さん等は率先してダンサーに名乗りを挙げたとは思うのですが、それでも紅白での旧ジャニーズ事務所所属歌手不在における「アイドル」パフォーマンスは、ひとつの変化といえるのかもしれません。

 

この紅白での「アイドル」のインパクトは、大晦日Spotifyデイリーチャートに反映されています。尤も披露されたのは23時台ではあるのですが、同曲が3ヶ月半ぶりに首位の座に就いたのはまさしく紅白の話題が影響しているといえるでしょう。

先述した紅白パフォーマンスのNHK MUSICによるYouTube映像についてはYOASOBI側も言及。当日出演したバンドメンバー、ダンサーとして参加した歌手等への敬意も示しているという配慮もまた、YOASOBI側のSNS活用の巧さを示すに十分です。2020年代を代表する歌手に成るべく必要なふたつの要素(楽曲の推進力およびSNSでのエンゲージメント確立)を、YOASOBIは紅白で今一度示したといえるでしょう。

(なお、YOASOBIは今回3度目の出場にして初めて、メイン会場のステージでパフォーマンスしています。今回はStray KidsやPerfume等、別会場ながらライブ感溢れる演出が素晴らしくNHKホール以外でも意味のある用い方だとは感じましたが、やはりNHKホールにて披露することの重要性を実感した次第です。)

 

 

10-FEET「第ゼロ感」

10-FEETの紅白でのパフォーマンスについては先程紹介した柴那典さんのコラムでも触れられていますが、初出場ながらビルボードジャパン年間ソングチャートで5位を記録した「第ゼロ感」をほぼフル尺で披露できたことは実は異例といえるでしょう。

ライブ感溢れるパフォーマンス、疾走感溢れる曲の長尺での披露から想起したのは、2022年の紅白におけるVaundy「怪獣の花唄」でした。「怪獣の花唄」は2020年のリリースながら紅白でいわば”見つかり”、2023年のビルボードジャパン年間ソングチャートでは3位に至る大ヒットとなっています。紅白で「怪獣の花唄」を想起させた10-FEET「第ゼロ感」が、再びヒットのフェーズに突入するのではないかと感じた次第です。

(Vaundy「怪獣の花唄」の紅白披露直後におけるビルボードジャパンソングチャートでの急伸については、【ビルボードジャパン最新動向】紅白を機にVaundyが広く世間に"見つかった"…様々なチャートの動向をみる(2023年1月12日付)にて紹介しています。また年間チャートについては(追記あり) ビルボードジャパン年間チャート発表、2023年度のチャートトピック10項目を挙げる(2023年12月8日付)をご参照ください。)

 

実際、「第ゼロ感」は大晦日Spotifyデイリーチャートで再生回数前日比93.8%と高水準をマークし、44→33位と大きく上昇しています。曲を長尺で、ライブ感そのままに披露することがヒットにつながるのならば尚の事、紅白に限らず地上波テレビ局の音楽番組全体が過度な演出や多用するVTRを排し、歌手側のパフォーマンスをじっくり魅せる方向にシフトすることを願うばかりです。

 

 

⑤ Number_i「GOAT」

ここからは元日リリースの曲について。Number_i「GOAT」については昨日のエントリーにて取り上げたばかりですが、大晦日Spotifyデイリーチャートでは30位に初登場を果たしています。

上位初登場曲については翌日の急落も懸念されますが、たとえば1月1日付のLINE MUSICデイリーチャートでもNumber_i「GOAT」は15位に登場しています。ゆえにこの曲は、高水準で推移する可能性も高いと考えられます。

 

Number_i側は「GOAT」にてデジタルプラットフォームにおけるダウンロード/ストリーミングキャンペーンを実施。LINE MUSICに代表される再生キャンペーンを採用しない歌手が増えており、Number_iも同様の措置を採っています。1月10日公開分のビルボードジャパンソングチャートで初登場予定の「GOAT」について、少なくともその2週後の動向(キャンペーン効果がなくなる週)を踏まえてヒット規模を判断する必要があります。

 

なお、Number_i「GOAT」の追い風となるであろうTOBEによるTikTok番組『TOBE HIGH SCHOOL』の初回番組(動画)は、地震発生に伴い中止となりました。TOBE代表の滝沢秀明さんによるポストを踏まえれば、この判断は自然且つ適切だったといえるでしょう。

 

自然災害発生はサブスク再生回数の低下につながります。加えて年末年始では元日が最も再生回数が下がります。Spotifyの動向についてはXのアカウント(@Kei_radio)にて日々発信していきますが、上記5作品や歌手のチャート動向に注目すると共に、地震が収まること、地震の被害がこれ以上大きくならないこと、被害に遭われた方々が一刻も早く普段の生活に戻ることを、心から願うばかりです。