2020年からポッドキャスト【Billboard Top Hits (通称:ポッドチャート)】を発信し、現在は毎週木曜13時に最新エピソードを公開しています(録音環境の変更に伴い13時過ぎになることもありますのでご了承ください)。最新回はこちら。
今回はポッドキャストでも紹介した最新のビルボードジャパントップアーティストチャートから、注目点を採り上げます。
なお最新チャートについては、昨夜公開のブログエントリーにて勝手ながら”記事化”しています。
ソングチャートとアルバムチャートを合算した7月2日公開分(集計期間:6月23~29日)のトップアーティストチャートでは、Mrs. GREEN APPLEが3週ぶりに首位返り咲き。一方で当週はアルバムチャートを制したINI、ソングチャートで首位を獲得した櫻坂46および2位に立ったLE SSERAFIMの3組がトップアーティストチャートでトップ10内に返り咲いていますが、CHART insightからは興味深い内容がみえてきます。
上記は7月2日公開分ビルボードジャパントップアーティスト、総合10位までにおける指標構成を示したCHART insight(同チャートを記事化したブログエントリーでも貼付)。こちらは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています。なお、ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。
トップアーティストチャートのCHART insightをみると、ストリーミング指標に差が生じていることが解ります。トップ10入りした歌手のうちINI(2位)、LE SSERAFIM(5位)および櫻坂46(8位)の3組がこの指標ではトップ10入りを逃しており(順に41位、18位、35位)、残る7組は同指標1~6位および8位にランクインしています。
なお、ストリーミング指標7位のマカロニえんぴつは総合12位、9位のRADWIMPSは総合14位、10位のYOASOBIは総合11位にランクイン。このことから、総合順位とストリーミングとは基本的に比例しやすい傾向にあるといえるでしょう。
歌手のファンではないが曲が気になるというライト層の支持が反映されやすいのがストリーミング指標の特徴であり、上位安定傾向にあるこの指標が高い歌手は総合上位進出の翌週にダウンしにくいという特徴も兼ね備えています。上記表は2025年度の週間トップアーティストチャートで総合5位までに入った歌手の指標構成および翌週動向を示したものですが、ストリーミングが高くない歌手は翌週の後退幅が大きくなっています。
さて、当週「Make or Break」がソングチャートで首位を獲得した櫻坂46、そして同じく『THE ORIGIN』がアルバムチャートを初登場で制したINIについては、それぞれのチャートにおけるストリーミング指標が高くなっています。
櫻坂46「Make or Break」はストリーミング指標10位、INI『THE ORIGIN』は同指標2位を記録していますが、一方でトップアーティストチャートにおけるこの指標の順位がソングやアルバムチャートほど高くないのは、ストリーミングの新作比率が高いことを示しているといえるでしょう。
櫻坂46「Make or Break」についてはLINE MUSIC再生キャンペーンの開催が大きいことを昨日付エントリーにて紹介していますが、トップアーティストチャートのCHART insightをみると青で示されるストリーミング指標が何度も途切れていることが解ります。安定傾向にあるこの指標が途切れている状況からは、櫻坂46が普段から十分聴かれているわけではないということがみえてきます。
一方でINI『THE ORIGIN』においてはLINE MUSIC再生キャンペーンが行われておらず、ストリーミング指標は櫻坂46以上に途切れがちといえますが、新作リリース(主にフィジカル発売)のタイミングでストリーミングが伸びる傾向にあること、他方この指標が常時ランクインしているわけではないことから、週間チャートでの上位進出を目指すファンダム(チャートをより意識するコアファン)の聴取行動が大きいことが予想できます。
この2組と比べて当週のトップアーティストチャートにおけるストリーミング指標が高いLE SSERAFIMは、この指標がチャート開始以降途絶えることなく加点され続け、さらには常時100位以内にランクインしていることもポイントです。この点から、過去曲が聴かれ続けていることがみえてきます。
他方、総合順位が階段状に上昇している(アーティストパワーがステップアップしている)わけではないことから、最近では新曲登場が必ずしもコアファンの増加につながっているわけではないともいえるでしょう。新たなコアファンの獲得は課題でも、ヒット曲が登場することで注目度が再度高まる可能性は十分あると捉えています。
来週のトップアーティストチャートにて今回採り上げた3組の総合順位、そして主にストリーミング指標がどう推移するか、注視することが必要です。この3組については『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場可能性が十分あると考えられるため、尚の事です。