イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

真の社会的ヒット曲をより可視化すべく、ソングチャートのチャートポリシー変更を提案する

今回は、Da-iCE「I wonder」とコムドット「拝啓、俺たちへ」を比較した上で真の社会的ヒット曲を定義した、昨日一本目掲載エントリーの続きとなります。

所有指標や所有的な動きをなぞる接触指標に伴い短期的に上位進出する曲、接触指標が安定しロングヒットする曲はいずれもヒットしたといえますが、後者がより社会的ヒット曲であるということは中長期を集計期間とするチャートから断言可能です。

所有指標(特にフィジカルセールス)に強い曲は加算2週目の急落が目立つゆえその2週目の、LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲は企画終了後における、それぞれの動向をみることが重要です。しかしその見方の浸透は難しいかもしれないため、『1週分のチャートから真の社会的ヒットがより映し出されるような形へとビルボードジャパンがチャートポリシー(集計方法)を変更することが必要』と昨日記しました。

 

このブログではビルボードジャパンに対し、これまで様々なチャートポリシー変更提案を行ってきました。今回はソングチャートにおいて真の社会的ヒット曲やその可能性を持ち合わせた作品がより可視化されるべく、これまでの提案内容からいくつかに絞った上で再度掲載します。

 

<真の社会的ヒット曲がより可視化されるためのチャートポリシー変更提案>

 

 

① フィジカルセールス指標のウエイト減少、および係数処理適用の強化

近年は所有指標の中でも、フィジカルセールスとストリーミングとの乖離がより目立つ印象です。1週間単位でも真の社会的ヒット曲が把握可能なチャートを理想とするならば、フィジカルセールス指標のウエイトを引き下げることについては早急な議論が必要でしょう。

ビルボードジャパンは2017年以降、週間フィジカルセールスにおいて一定以上の売上枚数に対し係数処理を適用しています。導入当初は30万と推測された適用枚数はその後数万枚に引き下げられましたが、それでも加算2週目における急落は目立ちます。ウエイトを下げるならば係数処理の適用/適用外に限らず売上枚数全体、係数処理適用外部分の売上のみ、係数処理適用部分の売上のみのいずれかへの適用が必要と考えます。

 

加えて、リリースから時間が経過した曲に施策を実行しフィジカルセールス指標が再浮上する事例が増えていますが、その上昇時においては他指標との乖離も目立っています。しかし、既に係数処理が適用される枚数まで売上が達した曲がその後の施策に伴い売上を大きく伸ばした場合、係数処理が週間単位では一定以上を超える分のみに適用されるため、総合チャートでの不自然な上昇と急落等が生まれています。

ただ、このようなフィジカルリリース後の販売施策を採る曲が、売上枚数の順位以上に指標化時の順位がより高くなっているのでは (中略) この仮説が正しいならば、一定の売上枚数を超えた曲についてはその週以降、一定枚数を超えなくとも毎週の売上に係数処理を施すことが必要ではないか

フィジカルセールスに強いアイドルやダンスボーカルグループ側がデジタルへの意識を高めていただくという意味でも、早急な実施が必要と考えます。

 

② ダウンロード指標のウエイト減少

アイドルやダンスボーカルグループはダウンロード数も大きく上昇する傾向にありますが、一方では接触指標(特にストリーミング)との乖離が目立ちます。とはいえダウンロードは全体的に減少傾向にあることを踏まえれば、ウエイト減少は難しいかもしれません。

仮にダウンロード指標のウエイトを下げるならば、ビルボードジャパンが米ビルボードによるグローバルチャートに沿わせる形でチャートポリシー(集計方法)を変更したタイミングにて実施することが最善でしょう。様々なバージョンが合算されるグローバルチャートに合わせることの重要性は、以前から提案していることです。

 

③ ストリーミング指標におけるLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲すべてへの係数処理適用

LINE MUSIC再生キャンペーンについては、Number_iのStationheadを踏まえたストリーミング動向を紹介する際、その内容等について紹介しています。

またLINE MUSIC再生キャンペーンについてはStreaming Songsチャート首位曲のみが指標化時に係数処理適用となりますが、現在そのような事態はほぼ起きていないことに加えて同チャート2位以下になることで係数処理が施されない曲が多い状況です。係数処理適用が不十分といえる状況で、Stationheadリスニングパーティー対象曲にのみ係数処理を適用することは不可能に近いと考えます。

LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲の大半はキャンペーン終了直後にストリーミングが急落します。これはライト層人気が反映されるこの指標にコアファンの熱量が大きく波及し所有指標的な動きをなぞるためで、昨日採り上げたコムドット「拝啓、俺たちへ」でもみられています。このブログで4月以降ストリーミング人気曲の主要サブスクサービスにおける順位比較を掲載しているのは、その動向の可視化のためでもあります。

今後はStationheadが盛り上がることで同サービスを機にヒットする曲の係数処理適用が議論されるかもしれませんが、個人的にはLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲全体に個別に係数処理が施されなければStationhead関連曲への同種の適用はほぼ不可能と捉えています。LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲のほとんどは局地的なヒットにとどまるゆえ、まずは採用曲全体の適用が可能か議論し、実行することを求めます。

 

 

以上3点を記しましたが、主にアイドルやダンスボーカルグループの作品が対象となるため、コアファンの方々からは偏った見方と捉えられかねないでしょう。しかし急上昇と急落がみられる曲がロングヒットしにくいことは今年度上半期チャートのデータから明らかであり、議論すること自体は必要と考え、提案を記した次第です。

(※ブログエントリーでは週間4位および5位も掲載しています。)