イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

下半期チャート開始前に、ビルボードジャパンに対する改善提案をまとめる

ビルボードジャパンは6月7日発表分の各種チャートより下半期がスタートし、6月9日金曜午前4時に上半期チャートが発表されます。

下半期のタイミングでチャートポリシー(集計方法)が変更される可能性があることから、このブログで記してきたビルボードジャパンへの提案内容を今一度まとめます。チャートを信頼するゆえの、さらなる改善案の提示です。

 

 

ビルボードジャパンへの改善提案>

 

① ストリーミング指標におけるLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲全てへの係数処理適用

ビルボードジャパンはソングチャートのストリーミング指標の基となるStreaming SongsチャートにおいてLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲が制した際、他のサブスクサービスとの乖離を踏まえた係数処理を適用します。ただしこれは、Streaming Songsチャートで首位を獲得した曲のみが適用対象となります。

本来ストリーミング指標はロングヒットする傾向の中、キャンペーン採用曲は所有指標的な急落が通常です。しかし一部作品のみの係数処理適用では指標の健全化は生まれにくいものと危惧します。上記エントリー等で幾度となく述べていますが、LINE MUSIC再生キャンペーンを採用するすべての曲に対し係数処理を実施することが必要と考えます。

 

 

② ソングチャートにおけるフィジカルセールス指標のウエイト減少

フィジカルリリース曲においては所有指標ゆえ急落が生まれやすい状況です。そしてフィジカルとデジタルでのヒットの乖離はますます進行している印象です。

ビルボードジャパンはチャートポリシー変更を繰り返し今の時代のヒット曲を示す鑑となっていますが、フィジカルセールスのみに強い曲が総合トップ10入りした翌週に100位圏外となることは今も少なくなく、フィジカルセールスのみを示すオリコンランキングと大差ないという印象を持たれかねません。この点については、現行のチャートアクションの傾向をビルボードジャパン側が説明することも必要と考えます。

加えて一部歌手で顕著なように、特典に伴いフィジカルセールスが再度上昇し総合チャートでも復活する例が散見されます。しかしその際に他指標の上昇を伴わないことから、フィジカルがきちんと聴かれているとは言い難いと言えるかもしれません。これらを踏まえ、フィジカルセールスのウエイトは下げる必要があると考えます。

 

 

③ アルバムチャートにおけるストリーミング指標の導入

この点については昨日付のエントリーで記載しています。

 

 

④ 長期ランクイン曲に対するリカレントルール適用可否の議論

たとえば昨年度の年間ソングチャートや、今週発表の上半期チャートを見た方が、以前からのヒット曲が多く残っていることをどう思うかが気になります。中には新陳代謝が乏しいと思われる方もいらっしゃることでしょう。ストリーミングが強い作品がロングヒットする傾向をビルボードジャパン側が説明する必要がある一方、チャートの新陳代謝についても定期的に議論すべきと考えます。

リカレントルールは米ビルボードソングチャート、ビルボードジャパンではHeatseekers Songsチャートで用いられているもので、前者においては一定週数以上ランクインした曲が一定順位を下回ればチャートから除外されます。総合チャートの新陳代謝を目的としていますが、一方でロングヒットがより多くストリーミングの新陳代謝が大きくはない日本でルールを適用し除外を設けることは難しいかもしれません。

ならば、一定週数以上ランクインした曲に対し、たとえばチャートインからの長さに応じて係数を施すことが最善かもしれません。尤も、リカレントルール自体が必要かを定期的に論じることが重要であり、また論じた内容をビルボードジャパンの姿勢として公表することも必要と考えます。

 

 

⑤ 訂正時のアナウンス徹底、および公開スケジュールの定時化

最新5月31日公開分のビルボードジャパンソングチャートにて、訂正する事態が発生していました。

この日のチャートは発表自体が遅れていましたが、一旦発表されて間もなくYOASOBI「アイドル」のみポイントが上昇した形です。ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標にOAチャートデータを提供するプランテックの記事の公開が一日遅れていること(下記ツイート参照)、そこではYOASOBIは「アイドル」のほかに英語詞版「Idol」も159位に入ったことから、推測がおそらく正しかったものと捉えています。

さらなる問題はビルボードジャパンのチャート訂正そのものではなく、訂正アナウンスがなかった(見つからなかった)ということです。実は以前も、チャートが大きく動くタイプの訂正でなければ(たとえばビルボードジャパンが画像付きで発表している各種チャートのトップ10順位に影響がなければ)、その訂正についてアナウンスしないという事態がありましたが、その姿勢は今回も変わっていないと考えます。

 

訂正はどのチャート管理者にも起こり得るとして、今年度発生したより大きな誤りに対しこちらのスレッドにて指摘したような姿勢が今回みられなかったのは残念です。訂正時には細かなことでもきちんとその旨をアナウンスすることは必要と考えます。

加えて、これまでも幾度となく申し上げてきましたが、やはりチャート発表まで時間を設けてその時間まで隈なく確認する習慣を付け、これまでの水曜13時前後ではなく同じ曜日でも夕方以降の定時に発表するようにすべきです。定時発表が信頼感を生むことは、そのランキングの内容自体には色々思うところがあれどもオリコンの姿勢(そして今も重用されていること)からも明らかでしょう。管理の状況は信用を左右するはずです。

 

 

⑥ グローバルチャート記事の毎週公開、およびJ-Popの動向紹介

⑦ ソングチャートのチャートポリシーを海外仕様に変更

この2点については以前のエントリー、①および②で述べています。なおこちらのエントリーでは、より広くエンタテインメント業界全体に対する改善提案を記しています。

今年度はYOASOBI「アイドル」が大ヒット。アニメ効果で海外にも波及していることから、米ビルボードによるグローバルチャートでもトップ10入りを続けています。

しかしビルボードジャパンでは、米ビルボードによるグローバルチャートでのYOASOBI「アイドル」のヒットがほぼ発信されていません。ビルボードジャパンの記事も検索対象となるYahoo! JAPANのニュース検索にて”YOASOBI アイドル Global 200”と検索しても、ビルボードジャパンの記事は登場しない状況です(検索結果はこちら)。

 

このブログにて米ビルボードのグローバルチャート速報記事を翻訳するのは、ビルボードジャパンがJ-POPにおける特筆すべき動向を紹介していないと考えるためです。そしてグローバルヒットの動向が認知されない限り、日本の音楽業界が世界市場に果敢に挑戦すること、日本の音楽ファンで特にJ-POPを好む方が世界の動向を知ること等は難しくなり、ドメスティックなままでいることを勿体ないと感じているためでもあります。

ビルボードジャパンにはグローバルチャートの速報記事翻訳や、米ビルボードが有料会員にのみ公開するGlobal Excl. U.S.(Global 200より米の分を除いたもので、J-POPがGlobal 200より上位に進出しやすいチャート)でのJ-POPの動向を毎週紹介することを願います。

 

そしてグローバルチャートは日本主体の人気曲もランクイン可能です。それも踏まえ、リミックス等様々なバージョンの合算や、集計期間の金曜開始等においてグローバルチャートや米ビルボード等にチャートポリシーを合わせることを願います。

日本でのヒットの先(延長線上)にグローバルチャートでのランクインがあり得ると分かれば、たとえば海外進出を目指す歌手がその戦略を国内と海外とで分けて考えるという負担は減ります。そして海外への意識は業界全体、ならびに音楽ファンの間にも拡がっていくはずです。なおリミックスの合算を願う理由については下記エントリーでも詳しく記しています。

 

 

最後に

ビルボードジャパンは時代に即してチャートポリシー変更を続けたことで、社会的ヒット曲の鑑に成ったことは間違い有りません。今回の提案には理想論と言われかねないものも含まれていると言われればそれまでですが、チャートを信頼していることがベースにあり、そして実現不可能なものはゼロではないと考えます。

一方で、ビルボードジャパンの管理や情報発信には脆さがみられます。それらを徹底することで、認知度で今も先行するオリコンに認知度や信頼度で勝るものと考えます。体制の強化、徹底を心から願います。