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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む (2023年10月11日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。前週のエントリーはこちら。

最新のソングチャートに関する記事は、以下をご参照ください。

 

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポスト(ツイート)にて簡潔に説明しています。

 

<2023年10月4日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

AKB48「アイドルなんかじゃなかったら」 4位→100位未満(300位圏内)

つばきファクトリー「勇気 It's my Life!」 6位→100位未満(300位圏内)

・YOASOBI「勇者」 9位→2位

・超ときめき♡宣伝部「かわいいメモリアル」 10位→100位未満(300位圏内)

・TREASURE「BONA BONA」 14位→65位

・ジョングク feat. ジャック・ハーロウ「3D」 17位→7位

前週トップ10内に初登場した4曲のうちYOASOBI「勇者」は順位を伸ばしています。この曲については昨日付のエントリーでも取り上げましたが(下記参照)、アルバム『THE BOOK 3』(EP)の(直近の)リード曲という位置付けであったことも注目度上昇につながったといえるでしょう。

他方、前週のトップ10内初登場曲においてはYOASOBI「勇者」を除き、いずれも100位未満(300位圏内)に急落。たとえばAKB48「アイドルなんかじゃなかったら」、つばきファクトリー「勇気 It's my Life!」はフィジカルセールスの急落を他指標が補えない状況でした。

つばきファクトリーはサブスク未解禁も影響していると考えます。所属するハロー!プロジェクトが基本的にサブスク未解禁であり、昨年はその未解禁による機会損失が複数曲にてみられたと捉えているゆえ(下記参照)、デジタルへのスタンスを変えることを願います。

 

 

続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2023年10月11日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・5位 NMB48「渚サイコー!」

・14位 tuki.「晩餐歌」

・17位 超特急「Lesson II」

・19位 Ado「クラクラ」

・20位 BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE feat. GULF KANAWUT「All I Ever Wanted」

 

 

初登場で唯一トップ10入りを果たしたNMB48「渚サイコー!」ですが、デジタルが強くならなければ次週の急落は避けられないものと考えます。

また17位に超特急「Lesson II」が初登場していますが、前週トップ10入りしながら当週100位圏外となった超ときめき♡宣伝部「かわいいメモリアル」と似た動向を辿ると考えます。「Lesson II」は「かわいいメモリアル」と異なりフィジカルリリースはありませんが、LINE MUSIC再生キャンペーンを採用し、ハードルが高く設定されている点は共通しています(「かわいいメモリアル」については前週のエントリーをご参照ください)。

「Lesson II」デジタルリリース プレゼントキャンペーン! | 超特急(9月28日付)より

当週のビルボードジャパンソングチャートにおける集計期間は上記キャンペーンの開始4日目以降に当たるため、ストリーミングが大きく伸びたものと思われます。次週以降再生回数ハードルをクリアするユーザーが増えること(もしくはクリアを諦める方が登場すること)により、ストリーミングがダウンすることが予想されます。

 

ストリーミングがビルボードジャパンソングチャートにとって重要であり、社会的ヒットの基礎に成ることは幾度となく述べていますが、LINE MUSIC再生キャンペーンによるストリーミングの上昇は、曲は気になるものの歌手のファンというわけではないライト層の支持以上にコアファンの熱量に伴う結果であり、キャンペーン終了後(もしくは終了を待たず)に急落することが大半です。そのような曲はヒットとは呼び難いでしょう。

また、ストリーミング上昇曲は同じ接触指標である動画再生も上昇するのが一般的ですが、LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲においては動画再生が伸びない傾向にあり、この点からもライト層の多くなさ、またコアファンがキャンペーンに尽力していることが見て取れます。そして所有指標であるダウンロードの多くなさは、コアファン自体の多くなさを示しているといえるかもしれません。

当週の上位4曲におけるCHART insightは上記ポストに。YOASOBI「勇者」は登場2週目ゆえダウンロード指標のシェアが大きいのが特徴ですが、その他3曲はロングヒットの可能性が高い、もしくは既にロングヒットしており、これら作品のチャート構成比(指標毎のポイント構成比)が理想形といえます。新曲についてはこの理想形とチャート構成比を比較することを勧めます。

 

 

このエントリーを毎週記しているのは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて複数週の動向を捉えることで真の社会的ヒット曲を判断することの重要性を示すためです。一方でビルボードジャパンに対しては、より短期間(それこそ1週分のみ)で真の社会的ヒットが判断できるよう、フィジカルセールス指標のウエイト減少やLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲全体への係数処理適用等について議論することを願います。

仮にそれらチャートポリシー(集計方法)の変更が叶わないならば、月間単位でソングチャートを用意することも必要かもしれません。フィジカルセールスやLINE MUSIC再生キャンペーン採用に伴うストリーミングの突出は2~3週で収まることから、月間単位でのチャートはそれをみただけで真の社会的ヒットを理解しやすいものと考えます。