イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) ビルボードジャパン主要チャートに波及した「夜の踊り子」のバズと、更なるヒットのために重要なこと

(※追記(5月8日15時54分):ブログエントリー掲載後、サカナクション「夜の踊り子」の海外でのストリーミング推移に関する記事が登場しました。つきましてはその記事を掲載すると共に、私見を記しています。)

 

 

 

昨夜公開したビルボードジャパントップアーティストチャートの"記事化"エントリーにて、サカナクションの動向を紹介しました。

11位以下をみると、サカナクションが19→12位に浮上。「夜の踊り子」がネットのバズ(さらには本人による"踊ってみた"動画の人気)に伴いソングチャートで43→14位に上昇。同曲を収録した『sakanaction』がアルバムチャートで66→40位に上昇(ストリーミング指標は36位に)、そして歌手別チャートにも波及しています。

ビルボードジャパンのトップアーティストチャートは、ソングチャートとアルバムチャートを合算したものとなります。これら主要3チャートにおけるサカナクションの当週動向を、詳しく確認します。

 

 

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。また、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)

2012年9月5日公開分にて初登場且つ最高2位を記録した「夜の踊り子」の、直近11週分におけるCHART insightからは動画再生(赤)、ダウンロード(紫)そしてストリーミング(青)の上昇が見て取れます。総合では100位未満→86→43→14位と推移、またストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートでは当週81→28位、再生回数前週比は約182.9%と急伸しています。

 

「夜の踊り子」のバズの契機はビルボードジャパンが前週発信したとおりですが、サカナクションの山口一郎さんが積極的に関わっていることも重要でしょう。4月24~30日を集計期間とするYouTubeチャートでは「夜の踊り子」が16→6位、再生回数前週比168.0%と急伸していますが、このチャートを紹介したオリコンの記事では山口さんによるミームへの反応(動画)、また"踊ってみた"動画の存在について記しています。

旧譜のバズ(「夜の踊り子」は2012年リリース)は数多あれどそこに本人が積極的に関わるかどうかが、音楽チャートに波及するか否かの分岐点なのかもしれません。

 

そしてこの動きはアルバムチャートにも。「夜の踊り子」を収録した『sakanaction』(2013)は直近4週において100位未満→100位未満→66→40位と推移し、構成3指標においてはストリーミングの上昇が際立ちます(100位未満→100位未満→62→36位)。

上記は11週分のCHART insightですが、この表示範囲を90週に拡げると別の側面がみえてきます。ビルボードジャパンがアルバムチャートにストリーミング指標を初めて採り入れた2024年12月25日公開分以降、『sakanaction』はこの指標が常時300位以内に入っていることが解ります。これはこのアルバムが(おそらくはストリーミング指標組入以前から)"聴かれ続けていた"ことの証明と言って差し支えないでしょう。

『sakanaction』は「怪獣」のヒットによりフックアップされ、昨年度下半期初週にはリカレントルールの適用開始に伴いストリーミング指標、さらには総合でも上昇。このルールはStreaming Albumsチャート(非公開)のデータをストリーミング指標化する際、通算26週以上総合100位以内にランクインした作品に対しその翌週以降減算処理を施すというもの。『sakanaction』も後に当該ルールの対象となりますが、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出演後、そして今回のバズに伴い再上昇していることが解ります。

 

そしてサカナクションは、ビルボードジャパントップアーティストチャートで19→12位へ上昇。ストリーミング指標も18→12位と上昇していることが解ります。さらに注目したいのはダウンロード指標の9→7位への上昇。この指標は『sakanaction』で直近4週に渡り加点され続けていることもあり、バズが接触行動のみならず所有行動にも波及し、グレーゾーンからライト層、そしてコアファン化という昇華の流れもみえてきます。

トップアーティストチャートは2021年度に開始しており、サカナクションは2026年2月18日公開分における11位がこれまでの最高となります。「夜の踊り子」のバズが続けば、サカナクションは同曲のトップ10内復帰のみならず歌手別チャート初のトップ10入りを果たす可能性も十分です。

 

 

サカナクション「夜の踊り子」におけるバズが、ビルボードジャパン主要3チャートにきちんと反映されていることを興味深く感じています。バズは作品のリリース時期を問わず発生することはあれど、音楽チャートにきちんと波及するには楽曲そのものの魅力は勿論のこと、歌手側の積極的な言及や参加、そして下地の存在(聴かれ続けてきたことによりいつでも再上昇可能な状況)も、大きいかもしれません。

 

 

今回のエントリーは、音楽ジャーナリストの柴那典さんによるポストが記載の契機となっています。

今後の動向に注目する一方、たとえば各国や地域におけるSpotifyの動向をみると『アジアでも回り始めてる』ことは現時点で可視化が難しいと捉えています。サカナクション「夜の踊り子」がデイリー200位以内に入ったのは日本のみ(kworb.netによるデータはこちら)、一方で藤井風「死ぬのがいいわ」は10を超える国や地域でランクインしています(kworb.netによる2022年11月17日付までのデータはこちら、それ以降はこちらを参照)。

 

藤井風「死ぬのがいいわ」の世界への波及はタイ等でのUGC("歌ってみた"や"踊ってみた"等のユーザー生成コンテンツ)がきっかけながらも、そのバズを強固なものにしたのは藤井風さん側による発信の強化でした。ライブ動画の公開、英語でのプロフィール表記や曲名への副題的な形での追記、歌詞対訳字幕を追加した動画の登場(現地レコード会社からの発信)等は、サカナクション「夜の踊り子」でも参考になるはずです。

(※当初のブログエントリーでは"戦略"という表現を用いていますが、現在は"施策"という表現に統一しています。)

 

 

サカナクション「夜の踊り子」の今後の推移、日本のみならず海外でもヒットしていくかについては今後の施策も大きく関わってくるのではというのが、自分の見方です。

 

 

 

※追記(5月8日15時54分)

 

ブログエントリー掲載後、サカナクション「夜の踊り子」の海外でのストリーミング推移に関する記事が登場しています。

気になるのはストリーミング再生回数について、6.2倍という数値が"6週前との比較に基づく"ということ。この点から「夜の踊り子」は海外にて、日本ほど急激には盛り上がっていないだろうことが見て取れます(それゆえ記事では『じわじわと』という形容を用いているのかもしれません)。仮にエントリー終盤で提案した施策が実行された際、ストリーミングがどう推移するかを注視したいと思います。