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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】最新ソングチャート、完勝した「KICK BACK」を含む主要曲の動向を把握する

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

11月21~27日を集計期間とする最新11月30日公開分(12月5日付)ビルボードジャパンソングチャートは、米津玄師「KICK BACK」がフィジカルセールス指標初加算に伴い首位返り咲きを果たしました。

今回は「KICK BACK」を含む4曲の動向に注目します。

 

まず注目したのは、最新11月30日公開分(12月5日付)ビルボードジャパンソングチャートにおける上位曲の指標構成。米津玄師「KICK BACK」は構成8指標がすべて3位以内に入っています。

米津玄師「KICK BACK」における全指標10位以内ランクインは昨年1月6日公開分(1月11日付)でのLiSA「炎」以来ですが、「炎」は7指標3位以内の一方でフィジカルセールスが4位となっており、「KICK BACK」が如何に強いか実感できるでしょう。

 

米津玄師「KICK BACK」は今週フィジカル関連指標が初加算。フィジカルセールスは前作「M八七」が5月25日公開分(5月30日付)で記録した241,867枚を上回る289,147枚を売り上げました。またルックアップについては先日お伝えしたように、ソニーミュージック系列移籍後はじめてフィジカル発売週にレンタルを解禁し、レンタルによる取り込みも確保しています。

注目は動画再生指標。冒頭で紹介した記事にあるように『前週2,772,899再生から57.1%増の当週4,356,710再生』を記録しこの指標を制しています。「KICK BACK」を共作したKing Gnu / millennium paradeの常田大希さんとの対談動画公開後に、常田さんを迎えたライブ映像が公開されたことも加算の要因となりました。

ビルボードジャパンではオリジナルバージョンと異なる音源は言語の違いを除き合算対象外ですが、動画についてはISRC(国際標準レコーディングコードを指し、この付番がカウントの条件となります)が一緒であれば合算されます。「KICK BACK」における動画再生指標の増幅はこのような背景があります。

(ちなみにこの矛盾を踏まえ、ビルボードジャパンには様々なバージョンを合算すべきと以前から提案しています。)

加えて「KICK BACK」は、11月21日からラジオでのキャンペーンを開始。対象となる放送局は限られますが(上記ツイート内リンク先参照)、このような施策に伴いラジオ指標が12→3位と再浮上に至れたものと考えます。

 

フィジカル関連指標初加算週に合わせて様々なキャンペーンを打ったことで、今週のポイントを最大化させる運営側の狙いが見て取れます。実際、「KICK BACK」は今年度2位となる週間ポイントを獲得、米津玄師さんは「M八七」と並びワンツーフィニッシュを飾ったのです。チャートの意義や価値を理解しチャート戦略に長けていることが施策実行の背景にあり、今回その成果が出たといえるでしょう。

翌週以降、構成全指標がトップ10内をキープできるかに注目です。なおLiSA「炎」においては通算3週に渡り全指標トップ10入りを達成しています。

 

 

Official髭男dism「Subtitle」は総合2位に後退。ポイント前週比87.6%と比較的大きく落ち込んだその理由を、ビルボードジャパンはストリーミングの記事にて説明しています。ポイントとストリーミング再生回数の前週比がほぼ一致していることは興味深い事象です。

放送休止もさることながら、その原因となったサッカーワールドカップの開催が観戦者の音楽聴取時間をサッカーに移行させたことも、「Subtitle」の再生回数ダウンにつながっていると捉えています。この点は以前ブログにて紹介しました。

「Subtitle」が主題歌に起用されたテレビドラマ『silent』(フジテレビ)が本日放送されますが、再生回数は2000万回に戻ったとしても前週までの水準には戻らないだろうというのが私見サッカーワールドカップが終了し、ドラマが最終回を迎える前後にストリーミング指標を回復するか、テレビパフォーマンスも相俟って記録を超えられるかに注目しています。ゆえにそれまでの間、再生回数を落とさないことが鍵となるでしょう。

 

 

(上記はショートバージョン。)

2週前にフィジカル関連指標が初加算となったKing & Prince「ツキヨミ」は7→3位に再浮上。動画再生指標も好調をキープし、またTwitter指標では「ツキヨミ」を皮切りに、トップ10内の9曲をKing & Princeの曲が占めています。それもあってか、総合ソングチャートの記事でこのポイント増加をコアファンのサポートに因るものとビルボードジャパンが結論付けているのは納得できます。

一方で気になるのは、フィジカルセールス指標において係数処理が行われていないこと。このことは、ソングチャートを毎週予想する紅蓮・疾風さんが指摘されています。

(勝手ながらツイートを紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)

以前はフィジカルセールス指標において、一定枚数以上については等しく係数処理が行われていました(2017年度は推定30万だったものが、現在では推定5万枚となっています)。しかしビルボードジャパンは今夏チャートポリシー(集計方法)を変更。加えて、その変更におけるアナウンスは行われていませんでした。

ビルボードジャパンが7月20日公開分(7月25日付)ソングスチャートで行ったチャートポリシー変更、その内容は【フィジカルセールスの指標化において、5万枚を超える(と言われる)曲の5万枚を超える分に係数処理を施す→フィジカルセールス首位曲のみに対し5万枚を超える分に係数処理を施し、フィジカルセールス2位以下は5万枚を超えても係数処理を施さない】というものです。

個人的にはこれで生まれた矛盾を踏まえ、5万枚を超える分には等しく係数処理を実施することを望みます。現在は解決済かもしれませんがややこしさを防ぐ意味で、今からでもチャートポリシーを変更した旨は伝えるべきと考えます。

このチャートポリシー変更もKing & Prince「ツキヨミ」に味方した形とも言えますが、一方で次週から2023年度に突入し、ルックアップおよびTwitter指標が廃止されます。特にルックアップは、ジャニーズ事務所所属歌手が大きなポイント獲得源としているため、次週の後退は免れないかもしれません。動向を注視しようと思います。

 

(上記はショートバージョン。)

(上記CHART insightは直近60週分を表示しています。)

King & Princeは4年半前にフィジカルリリースしたデビュー曲「シンデレラガール」が総合ソングチャート18位に。2019年7月17日公開分(7月22日付)の91位以来となる総合100位以内返り咲きを果たしたその原動力は41,294枚を記録したフィジカルセールスであり、ここからもコアファン主体のサポートがみえてきます。一方でデジタルが解禁されていればライト層もストリーミング等の加点等に寄与したことでしょう。

デジタル解禁の重要性は前週も記載しています。コアファンのサポート、頑張りも素晴らしいですが、今後も「ツキヨミ」に注力したとして新曲が出ればそちらに移行する可能性は否定できません。ならばやはりデジタルを解禁しライト層の需要に応えること、常時加点できる体制を整えることが必要と考えます。

 

 

最後に、前週フィジカルセールスでハーフミリオンを達成し総合2位に初登場した、なにわ男子「ハッピーサプライズ」について。

(上記はショートバージョン。)

フィジカル関連指標加算2週目において、「ハッピーサプライズ」は2→17位に後退しました。これまで2曲のシングル表題曲(もしくはダブルAサイド曲のうちフィジカル関連指標加算対象曲)におけるフィジカル関連指標加算2週目の総合順位は「初心LOVE」が1→1位(ポイント前週比54.7%)、「The Answer」が1→6位(同32.8%)であり、「ハッピーサプライズ」はポイント前週比が28.9%だった点においても2曲に敵っていません。

(上記は前週公開されたダンスバージョン。フル尺で公開されています。)

上記動画が前週水曜に公開されたことで「ハッピーサプライズ」の動画再生指標は11→5位に上昇していますが、「初心LOVE」および「The Answer」は共にフィジカル関連指標加算2週目において動画再生指標首位を獲得しています。この差は前2作品と比べてコアファンとライト層の乖離も感じさせるものであり、今後対応(是正)が必要となるというのが厳しくも私見です。

 

フィジカルセールスの強さを武器に総合でもトップ10入りする曲は少なくありませんが、前週「ハッピーサプライズ」と同時にトップ10入りを果たしたOCTPATH「Like」(前週総合4位)およびGANG PARADE「Priority」(同10位)は共に今週100位以内から姿を消しており、デジタル加点の重要度がよく解るのです。

(最新ソングチャートにおける2曲のCHART insightをみれば、ダウンロード(紫で表示)、ストリーミング(青)および動画再生(赤)が共に加点されていないことが解ります。)

 

ジャニーズ事務所におけるデジタルの問題は以前から述べていますが、TVer等での一部音楽番組見逃し配信時における所属歌手の除外については昨日のブログエントリーにて紹介しています。その際、気がかりなことを記しました。

ジャニーズ事務所所属歌手は他の歌手に比べて特にルックアップによる加点が大きかったため、2023年度のルックアップ指標廃止以降は所属歌手のシングル曲が不利になると考えられます。そのタイミングもあって、ジャニーズ事務所側は社会的ヒットの鑑となってきているビルボードジャパンを意識せずフィジカルセールスのみのオリコンランキングを大事にするのではと、邪推かもしれませんがそう危惧しています。

(オリコンは合算ランキングもありますが、フィジカルセールスのウエイトがかなり高いのが特徴。合算でも首位を獲りやすいゆえそのような想像ができるのです。)

ビルボードジャパンソングチャートは社会的ヒットの鑑にかなり近くなっています。2023年度からの2指標廃止にも個人的には納得していますが、それが一部組織のチャート放棄を招く可能性はゼロではないでしょう。ただしその態度は誤りと考え、このブログでは是正と提案を続けていきます。